前回に引き続きフリービューア「SIS Map Express」(以下、Map Express)についてご紹介します。
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目次
はじめに
今回は、GISに欠かせない空間分析機能に焦点をあててみました。
図1:フリーデータから東京メトロのハザードマップを作成する
フリーデータの読み込みからスタート
例として「東京メトロ」における浸水を想定したハザードマップを作成してみましょう。
まず「国土数値情報ダウンロードサービス」から「鉄道」「駅別乗降者数」「低位地帯」「行政区域」のデータをダウンロードして、Map Expressの画面上にドラッグ&ドロップで読み込みます(→操作方法1へ)。
図2:データの読み込み
クエリ機能で浸水の危険性が高い箇所を抽出
データを読み込んだら、さっそく分析を開始します。
まず「クエリ」コマンドを使って、低位地帯にある東京メトロの路線と駅を抽出してみましょう(→操作方法2へ)。
「クエリ」コマンドは、図形の「属性情報」と「位置関係」を利用した検索を行う、GISの分析には欠かせない機能です。
浸水が想定される路線と駅を、以下の条件で抽出します。
- 運営会社が「東京地下鉄」
- 「低位地帯」に交差する「路線」と「駅」
抽出後、「主題図」機能などを使って見やすい地図に調整したのが下図3です。
図3:浸水想定路線(ピンク)と駅(緑)を抽出
空間関数で乗降客数を集計
次は空間関数を利用した解析です。
低位地帯に交差する1日の乗降客数を集計し、ラベル表示を行いました(→操作方法3へ)。(図4)
図4:浸水想定区域の1日の乗降客数を集計
テーブルウィンドウで乗降客数をチェック
今度は図形の属性情報を表(テーブルウィンドウ)で確認してみましょう。
たとえば、「浸水の危険性が高い駅のうち、一日の乗降客数が最も多い駅」を簡単に見つけることができます(→操作方法4へ)。(図5)
図5:乗降客数の多い駅を確認
テーブル接続で防災情報の有無を確認
データベースの情報を図形にリンクする「テーブル接続」も行えます(→操作方法5へ)。
東京メトロのWebサイトには、駅別の「洪水時の避難確保・浸水防止計画」が公開されています。
この情報をExcelファイルに転記し、Map Expressにテーブル接続すれば、駅ごとの防災情報の有無を地図上で確認できます。(図6)
図6:防災計画を持つ駅(赤)を表現
上位製品でより詳細な分析へ
上位製品を使うと、さらに詳細かつ複雑な分析が可能です。
- 浸水域を経由しない迂回ルート検索(図7)(→操作方法7へ)
- 分析結果をCSVファイルとして出力
- データベース上のデータを属性として一括入力 など
図7:浸水箇所を回避した迂回ルートを検索(青)
おわりに
このように、Map Expressには、シンプルでありながら有用な分析機能が備えられています。皆さんもぜひダウンロードして分析を行ってみてください。
Map Expressにはまだまだ便利な機能がたくさんありますので、次回以降もご紹介します。ご期待ください!(空間情報事業部 M.N.)
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操作方法は、以下の項目をご参照ください。
1:データを読み込む
- 国土数値情報ダウンロードサービスへアクセスして、以下のファイルをダウンロード。ダウンロードしたファイルを展開。
カテゴリ | 項目名 | 地域 | 年度 | ファイル名 |
1.国土(水・土地) | 低位地帯 | 東京 | 平成23年 | G08-15_13_GML.zip |
2.政策区域 | 行政区域 | 東京 | 平成28年 | N03-160101_13_GML.zip |
4.交通 | 鉄道 | 全国 | 平成27年 | N02-15_GML.zip |
駅別乗降客数 | 全国 | 平成27年 | S12-15_GML.zip |
- Map Expressを起動し、展開したフォルダ内の「*.shp」ファイルを以下の順番でドラッグ・アンド・ドロップしてデータを読み込む。
読み込むファイルと順番は以下のとおり。
順番 | フォルダ名 | ファイル名 |
1 | G08-15_13_GML | G08-15_13.shp |
2 | N03-160101_13_GML | N03-16_13_160101.shp |
3 | N02-15_GML | N02-15_RailroadSection.shp |
4 | S12-15_GML | S12-15_NumberOfPassengers.shp |
図1: データ 読み込みイメージ
- こちらからライブラリファイル「Lesson11.nol」をダウンロード
- ダウンロードしたファイル「Lesson11.nol」をドラッグ・アンド・ドロップしてデータを読み込む
※ 「表示」タブで「ライブラリ」にチェックを入れて、ライブラリコントロールバーを表示し、正しく読み込まれているかどうかを確認図2: ライブラリコントロールバーの表示と確認
2:クエリ検索機能を使って、東京23区周辺の低位地帯の地下鉄路線と駅を新しい地図に抽出する
2-1検索
- マップコントロールバーで「マップ1」のツリーを展開して「G08-15_13.shp」を選択し、右クリックで「アイテム選択」を実行
図3: アイテム選択
アイテムが選択される
- 「ホーム」タブ「マップ/クエリ」を実行→「クエリ」ダイアログを表示し、「N02-15_RailroadSection.shp」をリストから選択して「次へ」
図4: オーバーレイの選択
- 以下の条件(東京の低位地帯の地下鉄路線)を設定
「クエリ」:N02_004$="東京地下鉄"
「選択アイテムに対して」:チェック
・ ジオメトリ
・ が交差する図5: 条件設定画面
設定して「次へ」
- 「適用方法」から「複製」を選び「完了」
図6: 検索結果の適用方法
条件に合致した図形が「(無題) 5」に作成される
(マップコントロールバーで確認) - 「G08-15_13.shp」を選択し、右クリックで「アイテム選択」を実行
- 「ホーム」タブ「マップ/クエリ」を実行し、リストから「S12-15_NumberOfPassengers.shp」を選択して「次へ」
図7: オーバーレイ選択
- 以下の条件(東京の低位地帯の地下鉄駅)を設定
「クエリ」: S12_002$="東京地下鉄"
「選択アイテムに対して」:チェック
・ ジオメトリ
・ が交差する図8: 条件設定画面
設定して「次へ」
- 「適用方法」から「複製」を選んで「完了」
条件に合致した図形が「(無題) 6」に作成される - 「(無題) 6」を選択し、右クリックで「領域表示」を実行
図9: 領域表示
23区周辺が拡大して表示される
図10: 拡大イメージ
2-2検索結果の確認
- 下図に示すオーバーレイのアイコンをクリックして非表示に変更し、クエリの検索結果を確認する
図11: オーバーレイの非表示設定
- スタイルなどの見た目を変更するため、「ホーム」タブ「マップ/オーバーレイ」を実行し、以下を設定する
内容を把握しやすいようにオーバーレイの名称を変更する
- 「一般」のオーバーレイリストからオーバーレイを選択し、「名称」でそれぞれ名称を変更
変更前 | 変更後 |
G08-15_13.shp | 低位地帯 |
N03-16_13_160101.shp | 行政界 |
N02-15_RailroadSection.shp | 路線 |
S12-15_NumberOfPassengers.shp | 駅 |
(無題) 5 | 路線_低位 |
(無題) 6 | 路線_低位 |
図12: オーバーレイの名称変更方法
元のデータに合わせてスケールを設定する
- 「駅」を選択して「プロパティ」ボタンをクリックして以下を設定
スケール優先:True
スケール:25000図13: スケールの変更
「OK」でダイアログを閉じる
- 「データセット」から以下のオーバーレイを選択して「データセットスケール」値を変更
路線_低位:25000
駅_低位: 25000図14: データセットスケールの設定
オーバーレイのスタイルを設定する
- 「スタイル」を選択し、表と下図を参考に、オーバーレイの各スタイルを設定
オーバーレイ名 | 設定 |
低位地帯 | ペン:Grayブラシ:低位地帯 |
行政界 | 「透過設定」の「ブラシ」にチェック:スライダーを移動して200に変更 |
路線 | ペン:Gray |
駅 | ペン:駅 |
路線_低位 | ペン:路線_低位 |
駅_低位 | ペン:駅_低位 |
図15: 「低位地帯」オーバーレイのスタイル設定
図16: 「行政界」オーバーレイのスタイル設定
- 「適用」ボタンをクリックし、表示を確認する
図17: スタイルの適用確認イメージ
オーバーレイの表示設定を変更する
- オーバーレイ名を選択し、「▲」「▼」ボタンを利用して以下の順番に変更(下図①)さらにステータスの「▼」ボタンを利用して以下のステータスに変更(下図②)
オーバーレイ名 | ステータス |
行政界 | 表示のみ |
路線 | 表示のみ |
駅 | 表示のみ |
低位地帯 | ヒット可能 |
路線_低位 | 編集可能 |
駅_低位 | 編集可能 |
図18: 描画順とステータスの変更
オーバーレイの主題図を設定する
- 「主題図」タブをクリックし、「行政界」オーバーレイを選択
- 「主題図▼/追加」をクリックし「その他」の「保存主題図」から「次へ」
図19: 主題図の追加方法
「行政界」を選択して「完了」
図20: 適用する主題図の選択
- 以下のオーバーレイについても保存主題図を適用
オーバーレイ名 | 保存主題図名 |
低位地帯 | 低位地帯 |
駅_低位 | 駅_低位_シンボル 駅_低位_駅名 |
- 「OK」ボタンでダイアログを閉じる
地図上を拡大縮小、ドラッグしながら結果を確認する(マウスのホイール回転で拡大/縮小、ホイールを押しながらドラッグで移動)図21: 主題図の適用イメージ
3:空間関数で駅の乗降客数を集計し、ラベル主題図を使って表示する
- 「ホーム」タブ「マップ/主題図追加」を実行
- リストから「低位地帯」を選択して「次へ」
図22: 適用するオーバーレイの選択
- 「注記」の「ラベル」を選択して「次へ」
- 「fx」ボタンの▼をクリックし、「フォーミュラ編集」を実行
図23: フォーミュラの選択方法
- 以下のフォーミュラを入力して「OK」ボタンをクリック
"乗降客数合計:"+Chr(13)+Chr(10)+"*%{fill:#0000FF}"+Str(CalcItems("駅_低位","S12_021#",OP_Sum,ST_Intersect ,ST_Geometry))+"%*"+"人"図24: フォーミュラの記述
「OK」ボタンでダイアログを閉じ、「次へ」
- 「ラベル主題図 スタイル」ダイアログを以下のように設定(キャプチャ)
タイトル:低位地帯別_乗降客数集計
高さ:30
マークアップ:チェックする図25: ラベル主題図のスタイル設定
- 「フィルタ」ボタンで以下のフォーミュラを入力
CalcItems("駅_低位","S12_021#",OP_Sum,ST_Intersect ,ST_Geometry)>0図26: フィルタ設定方法
「OK」ボタンでダイアログを閉じる
- 「完了」ボタンでダイアログを閉じ、ラベルを確認
図27: ラベル主題図追加イメージ
- 表示の順番を変更するため、「ホーム」タブ「マップ/オーバーレイ」を実行
- 「スタイル」タブから「低位地帯」を選択し、以下のように変更する
「低位地帯」を選択後、▼ボタンをクリックして一番下へ移動
「透過設定」の「ブラシ」にチェックを入れ、スライダーを「70」へ移動する図28: 「低位地帯」オーバーレイの描画順とスタイル設定
「OK」ボタンでダイアログを閉じる
4:テーブルウィンドウで乗降客数が多い駅を確認する
4-1テーブルの表示情報を設定する
- 「ホーム」タブ「マップ/オーバーレイ」を実行し、「スキーマ」タブを選択
- 「駅_低位」を選択して「オプション▼/呼び出し」をクリック
図29: 「駅_低位」オーバーレイのスキーマ呼び出し方法
プルダウンから「低地_駅」を選択して「OK」ボタンでダイアログを閉じる
カラムリストが変更されたことを確認図30: スキーマ呼び出し設定と結果イメージ
「OK」ボタンでダイアログを閉じる
4-2テーブルウィンドウを表示する
- 「表示」タブ「ドキュメント表示/テーブル」でテーブルウィンドウを表示
- 「テーブル」タブ「表示/オーバーレイ▼/駅_低位」を選択
図31: 表示オーバーレイの選択
- 「2014年の駅別乗降客数」のカラム(列)のサイズを図を参考に調整する
図32: カラム(列)のサイズ変更
- 調整後、「2014年の駅別乗降客数」列のタイトルを選択し「テーブル」タブ「並べ替えとフィルタ/降順」をクリックし、値が大きい順番で結果を確認
図33: 乗降者数の多い駅を確認
- 「×」ボタンをクリックしてテーブルウィンドウを閉じる
図34: テーブルウィンドウを閉じる
5:テーブル接続で災害対策のデータを保存した外部ファイルを地図に関連付ける
5-1テーブル接続をする
- 東京メトロのURLを参考に作成したこちらの対策公開済み駅のデータ「Station.xlsx」をダウンロード後に開いてデータの内容を確認する
図35: 「Station.xlsx」ファイルの内容確認
- 確認後、Excelファイルを閉じる
- 「ホーム」タブ「マップ/オーバーレイ」を実行し、「スキーマ」タブで「駅_低位」を選択し、「接続▼/接続」ボタンをクリック
図36: 「駅_低位」へのテーブル接続
- 「ファイル直接読み込み」を選択し「次へ」ボタン
- 「Station.xlsx」を選択し「次へ」ボタン
- 「対策駅一覧$」を選択して「追加>>」ボタンをクリックして「次へ」
図37: レコードセットの選択
- 「フォーミュラ」の「fx」の▼ボタンをクリックし「フォーミュラ編集」
図38: 「フォーミュラ編集」の実行
「駅名」をクリック後、「値」をダブルクリック、フォーミュラに「S12_001$」が表示される
図39: フォーミュラの設定
「OK」ボタンでダイアログを閉じる
- 「接続先のカラム」の▼をクリックし、「Station」を選択して「完了」
図40: 接続先のカラム設定
5-2描画順と主題図を設定する
オーバーレイのステータスと描画順を変更する
- 「路線_低位」の「ステータス▼」欄の「編集可能」をクリックし、リストから「表示のみ」を選択
図41: 「路線_低位」オーバーレイのステータス変更
- 「低位地帯」も同様にステータスを「表示のみ」に変更
図42: 「低位地帯」オーバーレイのステータス変更
- 「低位地帯」をクリックし、「▲」ボタンをクリックしてキャプチャを参考にオーバーレイを移動
図43: 「低位地帯」オーバーレイの描画順変更
主題図を設定・変更する
- 「主題図」タブから「駅_低位」を選択して「主題図▼追加」をクリックし、「その他」の「保存主題図」から「次へ」
図44: 「駅_低位」オーバーレイの主題図設定
- 「駅_低位_対策」を選択して「完了」
図45: 主題図の選択
- 「低位地帯」を選択し、「低位地帯別_乗降客数集計」のアイコンをクリックして非表示に設定
図46: 「低位地帯」オーバーレイの主題図設定
- 「OK」ボタンでダイアログを閉じ、表示を確認する
図47: 設定後の画面イメージ
5-3テーブル接続の情報を確認する
- 低位地帯(水色塗りつぶしの領域)にある駅のシンボル付近にカーソルを移動し、「V頂点」や「Lライン」などのスナップコードが表示されたらクリックし、右クリックで「プロパティ」を実行
図48: アイテム選択後、「プロパティ」の実行
- 「スキーマ」タブからデータベースの内容が追加されていることを確認
図49: テーブル接続結果の確認
「OK」ボタンでダイアログを閉じる
6:作業を保存する
- 「ファイル/名前を付けて保存」で任意の場所にファイルを保存する
図50: 「名前を付けて保存」の実行
7:Map Modellerで、低位地帯を通らない迂回ルートを調べる
- Map Modellerを起動し、「ファイル/開く」で以下のデータを読み込む
・Lesson11.nol
・保存したSWDファイル - こちらからダウンロードした「Route.bds」をドラッグ・アンド・ドロップで読み込む
7-1検索の準備を行う
図51: 「Route.bds」の追加と追加後の画面イメージ
駅のラベルを表示する
- 「ホーム」タブ「マップ/主題図追加」を実行
- 「駅」を選択して次へ
「その他」「保存主題図」を選択して次へ - 「駅名(全国)」を選択して「完了」
図52: 主題図の設定イメージ
ラベル主題図が表示される
ルート検索結果用のオーバーレイを追加する
- 「ホーム」タブ「マップ/オーバーレイ追加」を実行
- 「その他」の「Cadcorp 内部データセット」を選択して「次へ」
図53: 「Cadcorp 内部データセット」の選択
- 「名称」に「ルート検索結果」と入力して「完了」ボタン
新規内部データセットが追加される - 「ホーム」タブ「マップ/オーバーレイ」を実行し、以下の項目を変更する
「一般」タブ:「ルート検索結果」をリストから選択し、「ステータス▼/編集可能」に変更後、「カレント」にチェック
「データセット」タブ:「ルート検索結果」をリストから選択し、「データセットスケール」を「25000」に変更図54: 「ルート検索結果」のステータス等の設定
図55: 「ルート検索結果」のデータセットスケール変更設定
「OK」ボタンでダイアログを閉じる
7-2ルート検索を行う
- 「空間解析」タブ「ルート検索/ルート検索」を実行
- 以下の設定を行う
・最短距離
・ラインアイテム作成にチェック図56: 「ルート検索」の設定
「OK」ボタンでダイアログを閉じる
- キャプチャを参考に、神保町駅周辺→京橋駅周辺を順にクリック
図57: 始点と終点の設定
低位地帯を通らない迂回ルートの検索結果がラインで作図される
図58: ルート検索結果
- 「書式」タブ「スタイル」「ペン」で「太線.青20」を選択
図59: ルート検索結果のスタイル変更
- 下図「Route.bds」アイコンをクリックし、非表示にする
図60: 「Route.bds」の非表示設定
<地図データ出典>国土政策局 国土数値情報ダウンロードサービス/国土地理院 数値地図25000(空間データ基盤)、基盤地図情報(数値標高モデル)、5mメッシュ(標高)/10mメッシュ(標高)、数値地図(国土基本情報)、電子地形図(タイル)/国土地理院・地方整備局等 航空レーザ測量結果 2m/5mメッシュDEM/(株)電気車研究会・鉄道図書刊行会 鉄道要覧(国土交通省鉄道局監修)、鉄道事業者提供資料
<引用>東京メトロ
※この記事は、GIS NEXT第57号に掲載された記事に加筆したものです。