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地域課題解決の施策検討に|デジタル田園都市国家構想データ分析評価プラットフォーム「RAIDA(レイダ)」

新型コロナが地域経済に与える影響を把握し、地域再活性化の施策を検討するためのウェブサイトとして、2020年6月、地域経済分析システム「V-RESAS(ブイリーサス)」が公開された。(提供元:内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局、内閣府地方創生推進室)

V-RESASは2024年3月31日をもって公開終了となったが、その後継サイトとして2024年1月31日に公開されたのが、デジタル田園都市国家構想データ分析評価プラットフォーム「RAIDA(レイダ)」だ。

今回はこのRAIDAについて詳しく紹介する。

RAIDA

RAIDAの概要

RAIDAは、データにより地域課題を把握し分析・考察することを支援するウェブサイトである。

V-RESASがコロナ禍による影響を可視化することを目的としていたのに対して、RAIDAではコロナ禍に限らず、さまざまなデータをもとに地域課題の分析・考察が可能である。

2024年9月現在、RAIDAでは以下の3テーマについての分析が行える。各テーマに関するデータが地図上にグラフ表示されるほか、CSVデータもダウンロードできる。

  • 感染症回復:旅行
    新型コロナ感染症流行後の地域経済の施策を検討し、観光分野の需要回復に向けた施策の効果を把握するため、旅行者消費額や旅行者数に関するデータを提供する。
  • 物価高騰・円安
    地域ごとに異なる物価高騰や円安の影響を把握し、各地域の実状に応じて施策立案できるようにするため、各地域・各品目の消費者物価指数のデータを提供する。
  • デジタル実装
    地方公共団体のデジタル実装施策の実施検討を支援するため、各地の取組状況について類似団体や隣接地域と比較できる。具体的な事例の内容を確認したり、分野ごとの事業数の比率を類似団体や地域、期間を指定して確認したりすることもできる。

主な機能と収録データ

感染症回復:旅行

旅行消費額や旅行者数の推移をグラフで表示できる。旅行目的や宿泊の有無など条件を分けて推移を分析することが可能で、訪日外国人の消費額や訪問者数、宿泊施設の客室種類別の稼働率のデータなどと組み合わせることで具体的な施策検討と効果検証を行える。

分析できるメニューは以下の通りで、いずれも国内旅行者のデータは「旅行・観光消費動向調査(速報・確報)」(観光庁)、外国人旅行者のデータは「訪日外国人消費動向調査(2次速報・確報)」(観光庁)をもとにしている。

  • 旅行消費額

国内旅行者消費額を旅行目的(観光・レクレーション/帰省・知人訪問等/出張・業務)ごとに宿泊有無で区別してグラフ化する。

左上のプルダウンメニューを切り替えると全国または都道府県ごとのデータを確認でき、都道府県を選択すると外国人消費額についても消費目的(全目的/観光・レジャー)ごとに区別してグラフ化できる。

  • 旅行者数

国内旅行者数を旅行目的ごとに宿泊有無で区別してグラフ化する。

左上のプルダウンメニューを切り替えると全国または都道府県ごとのデータを確認でき、都道府県を選択すると外国人訪問者数についても消費目的ごとに区別して棒グラフで表示できる。

客室稼働率を客室の種類(全体/旅館/リゾートホテル/ビジネスホテル/シティホテル/簡易宿所/会社・団体の宿泊所)ごとに折れ線グラフで表示することもできる。

【全国】(左上のプルダウンメニューで「全国」を選択)

  • 都道府県別の動向

国内旅行消費額および国内旅行者数について、すべての都道府県のデータを棒グラフで比較できる。旅行目的や宿泊有無ごとに分けて表示することも可能。

  • 都道府県別の国内旅行単価

国内旅行単価についてすべての都道府県別のデータを棒グラフで比較できる。旅行目的や宿泊有無ごとに分けて表示することも可能。

【都道府県】(左上のプルダウンメニューで都道府県名を選択)

  • 他の都道府県との比較

外国人消費単価、国内旅行者数、国内旅行単価、外国人消費単価の4項目の推移について、都道府県ごとに訪問目的(全目的/観光・レジャー)で区別して折れ線グラフで表示する。

  • 旅行動向の変化の推移

国内旅行消費額、国内旅行者数、国内旅行単価の3項目の推移について、旅行目的ごとに宿泊有無で区別して折れ線グラフで表示する。

物価高騰・円安

消費者物価指数の分類別の指数の動向をグラフで可視化することが可能。物価高騰の影響が強く支援が必要な品目を地域ごとに特定できるほか、課題特定に向けて分野別の指数を掘り下げた詳細な分析も行える。

分析メニューは「全体像を把握する分析」「課題特定に向けた詳細な分析」の2つで、いずれのデータも総務省の「2020年基準消費者物価指数」をもとにしている。

  • 全体像を把握する分析

消費者物価指数の分類別の指数の動向について、2つの地域を指定して比較できる。

選択できる地域は全国および東京都区部、都市階級(大都市/中都市/小都市A/小都市B)、地方、都道府県庁所在市、政令指定都市。

指数の品目は、2020年基準消費者物価指数品目から大分類(食料/住居/光熱・水道/家具・家事用品など)および中分類1・2を選択できる。

  • 課題特定に向けた詳細な分析

大分類および中分類1・2、表示地域および比較地域を指定することで、消費支出の推移を折れ線グラフで表示する。表示期間は2019年1月~2024年8月。

デジタル実装

地方公共団体のデジタル実装状況を地図に可視化するとともに、各地のデジタル実装事例を調べられる。また、特定の地域の事業全体に占める採択事業数の割合を分野ごとにグラフ化することもできる。

  • デジタル実装状況

対象分野(すべての分野/行政サービス/住民サービス/教育など)およびサービス分類(窓口入力支援システム/オンライン申請/リモートでの窓口対応/コンビニ交付など)、年度などを指定することで地図上にデジタル実装の状況を可視化できる。

下部には指定した地域のデジタル実装状況の詳細やデジタル実装の事例が表示される。

  • デジタル実装タイプ 分野別事業数の比率

特定の地域の事業全体に占める採択事業数の割合を分野ごとに棒グラフで可表示できる。

対象地域は全国、都道府県を指定できるほか、人口規模や産業規模、地理的特性が類似した団体を指定することもできる。

活用シーン

RAIDAは、地方公共団体による地域課題解決の施策検討の他にもさまざまな活用法が考えられる。

例えば「感染症回復:旅行」を活用すれば、地域ごとの観光客の動向を分析でき、観光振興だけでなく旅館・ホテルが宿泊費を決めたり、自治体や観光協会が観光スポットの入場料や現地ツアーの価格を決めたりする際に参考になる。

また、「消費者物価指数」は賃金や家賃、公共料金改定時の参考情報として活用されており、地域ごとの動向を簡単に可視化できるRAIDAを使うことで、地域の状況に応じて賃金や家賃を決める際の参考にできるだろう。

RAIDAには各機能を使った分析事例を紹介する「解説コラム」もあり、2024年9月9日現在、以下のようなコラムが公開されている。

  • 連載シリーズ:止まらぬ物価高
  • 「旅行・観光消費動向調査」からわかること
  • 「デジタル実装」からわかること

これらの解説コラムを参考に、RAIDAを自分のビジネスにどのように活用できるか考えてみてはいかがだろうか?

解説コラム

■URL
https://raida.go.jp/

 

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<参考>国土交通省ウェブサイト、RAIDAウェブサイト

  • この記事を書いた人
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片岡義明(かたおかよしあき)様

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」、「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。

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