岸田首相が政策として掲げる「新しい資本主義」において、成長戦略の柱の一つとして挙げられている「デジタル田園都市国家構想」。
今回はデジタル田園都市国家構想を実現するための総合戦略と施策について解説する。
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目次
概要
デジタル田園都市国家構想は、デジタル技術を活用することで地域の個性を活かしながら地方を活性化し、持続可能な経済社会を目指す構想である。
基本的な考え方は「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」。
デジタルインフラを整備して官民双方で地方でのDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組み、デジタル化の恩恵を国民や事業者が享受できる社会を目指す。
日本は人口減少や産業空洞化など様々な課題を抱えているが、デジタル技術の活用により地方から国全体へのボトムアップ成長を目指している。
2022年12月には中長期的な施策の方向やKPI(重要業績評価指標)を示した「デジタル田園都市国家構想総合戦略」が閣議決定され、今後はこの総合戦略に基づいて地方創生・活性化に取り組んでいく流れとなる。
内閣官房による「デジタル田園都市国家構想」ウェブサイト
(出典:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/index.html)
総合戦略|デジタルの力を活用して地域課題を解決
総合戦略では、デジタルの力を活用した地方の課題解決として重点目標を4つ掲げている。
以下、目標と具体的な施策を紹介する。
地方に仕事をつくる
- ベンチャー投資や社会的投資を拡充・強化し、大学・高専との連携を図る。
- 中小企業によるDX支援やキャッシュレス決済、シェアリングエコノミーを推進する。
- スマート農林水産業(例:農業機械のリモート操作)の推進や観光DX、地方大学を核としたイノベーション創出にも取り組む。
人の流れをつくる
- テレワーク支援やサテライトオフィスの整備、地方移住・就職の支援、二拠点居住を推進する。
- 地方大学の振興やサテライトキャンパス設置、女性の起業支援を行う。
結婚・出産・子育ての希望をかなえる
- デジタル技術を活用した子育て支援を行う。(例:オンラインによる母子の健康相談、母子健康手帳アプリの拡大など)
- 経済的面を含んだ結婚支援を行う。
- 育児・介護休暇の取得促進を行う。
魅力的な地域をつくる
- GIGAスクール・遠隔教育・遠隔医療の推進
- 公共交通・物流・インフラDXによる地域活性化
- 3D都市モデル整備・活用によるまちづくりDXや、中山間地域の活性化
- デジタル活用による防災・減災対策の推進
- デジタル活用による高齢者の見守り・社会教育施設の利用促進
上記4つの重点目標の中でも、暮らしやすく魅力ある地域づくりを目指す「魅力的な地域づくり」は地理空間情報に関するソリューションの活用が期待される。
構想実現に向けたデジタル基盤整備
政府は上記構想の実現に向けて、ハード・ソフトの両面から、以下のデジタル基盤整備に取り組んでいる。
デジタルインフラの整備
以下を整備するとともに、通信インフラの高速化・省電力化技術の研究開発に取り組む。
- 全国的な光ファイバー網
- 地方データセンター拠点
- 日本周回ケーブル
- 5G網
マイナンバーカードの普及促進・利活用拡大
マイナンバーカードの普及・利用促進、行政手続きのオンライン化を進める。
- 健康保険証としての利用
- 公金受け取り口座の登録
- 運転免許証や在留カードとの一体化
- 図書館カードや市町村の施設利用証としての利用
データ連携基盤の構築
国・地方間や地方・準公共・企業間でのサービス活用を促進するため、データ連携基盤の構築と、産業活動に関わるソフトインフラの構築を進める。
ICT活用による持続可能性・利便性の高い公共交通ネットワークの整備
公共交通の保守DXの推進や輸送モード間の連携、新たな輸送モードの導入による公共交通ネットワークの再構築を進める。
また、最先端デジタル技術を活用したリニア中央新幹線の早期整備も推進する。
エネルギーインフラのデジタル化
需要サイドの見通しを含んだ送電網の増強に加え、次世代スマートメーター導入や地域配電網の運用高度化を進める。
人材育成・デジタル格差の是正
デジタル田園都市国家構想を実現するには、デジタル基盤の整備だけでなく、専門知識を持ち、デジタルを活用して地域課題解決に取り組む人材の育成・確保が必要である。
そのための施策としては以下のようなものが挙げられる。
- デジタルに関するスキル標準を設定し、様々な教育コンテンツを提供
- 職業訓練におけるデジタル分野の重点化
- 大学・専門学校でのデジタル人材の育成
都市部にデジタル人材が偏在しないよう、地域企業への人材マッチング支援や、地方公共団体への人材派遣、起業・移住支援にも取り組む方針だ。
誰もがデジタル化の恩恵を享受できるよう、以下の取り組みも進める。
- 高齢者が身近な場所で身近な人からデジタル機器・サービスの使い方を学べる「デジタル活用支援」事業を促進
- 子どもたちが地域でICT活用のスキルを学ぶ「地域ICTクラブ」の普及促進
- デジタルデバイド(情報格差)の是正
デジタル田園都市国家構想交付金
国はデジタル田園都市国家構想の実現を進めるため、地方自治体を対象に交付金制度(デジタル田園都市国家構想交付金)を設けて取り組みを支援している。
交付金は大きく2つのタイプに分かれる。
- デジタル実装タイプ
デジタル活用により地域の課題解決や魅力向上を目指す取り組みに対する交付金
- 地方創生推進タイプ
地方に新たな人の流れをつくり出すための取り組みに対する交付金
上記タイプの中でさらに細かく項目が分かれているので、詳しくは「地方創生」ウェブサイトを参照されたい。
https://www.chisou.go.jp/sousei/about/kouhukin/index.html
Digi田甲子園
内閣官房は、デジタル活用で地域課題を解決した企業・団体の事例を募集し表彰する制度「Digi田甲子園」を2022年度からスタート。夏は地方自治体、冬は民間企業・団体を対象に開催している。
公式サイトに様々な取り組みやアイデアを「デジ田メニューブック」として掲載しており、分野別・都道府県別に検索できるので、興味のある分野の事例を見て課題解決の参考にしてみてはいかがだろうか。
デジ田メニューブック
(出典:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/menubook/index.html)
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<参考>内閣官房ウェブサイト、内閣官房・地方創生総合サイト