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国土交通省、産官学のコミュニケーションやアイデア募集を目的とした「地理空間情報課ラボ」を開設

地理空間情報課ラボの概要

国土交通省は2024年11月、新たなウェブサイト「地理空間情報課ラボ」を公開した。

同サイトは、地理空間情報に関連した最新動向や先進技術、従来の手法によらないアイデアを積極的に政策に採り入れるため、産学官の多様な人材との双方向コミュニケーションやアイデア募集を行うための“場”として開設された。

同サイトでは以下のようなコンテンツを提供しており、今後も随時追加していく予定である。

  • 実験的取り組みの紹介
  • データ連携に関する課題解決アイデア募集
  • 国土数値情報に関する意見募集

地理空間情報課ラボ
(出典:https://www.mlit-gis-lab.jp/)

地理空間情報課の実験的取り組みの紹介

国土交通省地理空間情報課ではさまざまな実験的・先進的な取り組みを行っているが、これまでは検討過程が見えにくく、報告書などで結果のみが公開されることが多かった。

しかし、取り組みの過程やそこで生じた課題を公開することで、その知見がさまざまな分野で役立つとともに、課題解決のアイデアが得られる可能性もある。

「地理空間情報課の実験的取組紹介」のコーナーでは、同課の実験的取り組みについて担当職員が情報を発信。結果だけでなく検討過程を共有することで業務に役立ててもらうと同時に、検討過程で生じた課題に対する知見を集めるなど地理空間情報課と利用者とのコミュニケーション促進の場としても活用できる。

2025年2月現在、このコーナーで情報発信を行っている取り組みは以下の通りとなる。取組の概要や更新情報だけでなく、地理空間情報課の担当官にコメントを送信できる投稿フォームも用意されている。

【筆界及び不動産登記情報データ関係】
・不動産登記ベースレジストリの利活用検討
・筆界データ活用実証

【国土数値情報及び人流データ関係】
AI等の先進技術を用いた国土数値情報整備手法の高度化検討
・国土数値情報トイデータセット
・国土数値情報のベクトルタイル化検証
・三次元人流データの活用検討
・国土交通省 地理空間情報データチャレンジ
・国土数値情報及び人流データの利活用事例収集

【地理空間情報の連携関係】
・地理空間情報データ連携環境の構築に向けた予備的調査

地理空間情報課の実験的取組紹介
(出典:https://www.mlit-gis-lab.jp/lab/)

データ連携に関する課題解決アイデアを募集|GeoSynergy Linkage Hub

地理空間情報を高度に利用するため、さまざまな地理空間情報を正確・容易に連携させる必要性が高まりつつある。一方、地理空間情報は位置情報の付与方法やデータ形式が多様で情報連携も困難なため、地理空間情報課では地理空間情報のデータ連携環境の構築に取り組んでいる。

その一環として、研究者やエンジニア、データサイエンティスト、地理空間情報の愛好家・研究家などさまざまな分野の人材が持つ斬新なアイデアを政策に生かすため、データ連携に関する課題解決アイデアを募集する企画「GeoSynergy Linkage Hub」(ジオシナジー リンケージ ハブ)を実施している。

この企画では、地理空間情報課によるデータ連携環境を構築する過程で生じた課題を“お題”として出題し、これらを解決するためのアイデアを募集する。

優れたアイデアは地理空間情報課ラボが認定し、構築中のデータ連携環境に採用される場合もあるという。応募資格は地理空間情報のデータ連携に資するアイデアを持つ個人・団体で、年齢・性別・国籍を問わず誰でも応募できる。

2024年度については、既に2024年11月22日~12月27日と2025年1月6日~2月11日の2回にわたり以下のようなテーマで募集を行った。集まったアイデアはスペシャルサポーターによる評価を実施し、2025年2月~3月に結果が発表される予定である。

【Q1.不動産情報ライブラリ
「地価公示及び地価調査の箇所の同一地点判定時の精度を高めるために、追加するべき項目とは?」

【Q2.データ連携手法】
「データを空間結合もしくは属性情報を用いて正確かつ扱いやすい形で結びつける手法とは?」

【Q3.不動産登記ベースレジストリ】
「不動産登記データと分譲マンション実態調査データをブリッジするデータは?」

【Q4.データ連携手法】
「主キーや空間結合によらないデータ連携手法/データ連携を容易にする手法は?」

【Q5.建物へのIDの付番】
「位置情報を基にしたIDを作成する場合に、ID自体のデータ量を抑えつつ、かつ建物毎にユニークなIDを付番するには?」

GeoSynergy Linkage Hub
(出典:https://www.mlit-gis-lab.jp/idea/)

国土数値情報に関する意見を募集

2025年2月7日~28日には、土地利用や行政区域、公共施設、社会インフラなどの基礎的な情報をGIS(地理情報システム)データ化した「国土数値情報」のファイル形式に関する意見募集を実施している。

現在の国土数値情報は、Shape形式やGML形式、GeoJSON形式の3つのファイル形式でデータを整備・提供しているが、時代に合った新しいファイル形式での提供へ移行することを検討しており、「国土数値情報の意見募集」コーナーで利用者からこのテーマについて意見を募集した。

意見募集の投票フォームでは、国土数値情報として提供して欲しいファイル形式についてCityGMLやFlatGeobuf、GeoArrowをはじめ多様な選択肢を提示した。ソフトウェア開発プラットフォーム「GitHub」で具体的な意見の投稿、寄せられた意見の閲覧が可能である。

地理空間情報課ラボの活用法・利用メリット

以上のように、地理空間情報課ラボでは、アイデア収集およびコミュニティ醸成の場としてさまざまなコンテンツを提供している。

ユーザーにとってのメリットとしては、国土交通省 地理空間情報課とコミュニケーションの機会が得られる点が挙げられる。

多様なテーマの中から自分が関心を持っている話題について意見を投稿することで、その意見が政策に反映される可能性があるほか、国土交通省から何らかの返答があるかもしれない。

もう一つのメリットは、このサイトを通じて、地理空間情報の分野で現在どのような課題があるのかが浮き彫りになる点だ。

このサイトでは多岐にわたる取り組みや課題が紹介されており、それらを一つ一つ読んでいくことで地理空間情報の最新の動向を把握できる。また、「国土数値情報の意見募集」ではGitHubを通じて他の人の意見を閲覧できるため、新たな知見を得ることも可能である。

地理空間情報に関わる人は、情報収集プラットフォームとして定期的にチェックしてみてはいかがだろうか。

 

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 <参考>地理空間情報課ラボウェブサイト

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片岡義明(かたおかよしあき)様

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」、「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。

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