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関数電卓入門 その1|√とべき乗 xy の謎

必ず1になる計算|前編

1よりも大きな数を入力して、√キーを繰り返し押すと最後は1になります。1よりも大きな数ならばどんな数でもです。

この現象を詳しくみていきます。1よりも大きな数として2とした場合、√を押すと出力は1.41421356237というように1.【小数部分】になります。1234567890の場合、35136.4182864→187.44710797→13.6911324575→3.70015303163→1.92357818443
というように√を5回押すとやはり1.【小数部分】になります。

ルートの計算結果は前後で小さくなりますが、1.【小数部分】となった後は【小数部分】だけが小さくなり整数部分の1はそのままです。なぜなら、整数部分が1どうしの数の積は整数部分が1になるからです。

1.【小数部分】×1.【小数部分】=1.【小数部分】

つまり、1.【小数部分】に対してルートの計算を何度行っても、小さくはなっていきますが1.【小数部分】は変わりません。はたして、電卓では直前で1.00000000001となり最後に1で終わります。これは12桁表示電卓の場合の計算です。12桁以上の計算結果は四捨五入・切り捨て・切り上げといった処理がされて12桁の出力となります。

1.00000000002→1.00000000001のところの精度を大きくして計算すると、1.00000000002016→1.00000000001008→となっています。√の計算を続けると【小数部分】は小さくなっていきます。【小数部分】はどんどん小さくなるけれど0にはなりません。

これを電卓で計算すると最後に四捨五入・切り捨て・切り上げといった処理がされて【小数部分】は0となり最終出力は1となるというわけです。この現象は数学の「極限」を用いて説明すれば「1よりも大きな数に対して√の計算を無限回行うと極限は1になる」となります。

必ず1になる計算|後編

この1になる√の計算には続きがあります。たくさん計算してみると気づくことがあります。1よりも小さい【小数部分】に注目してみます。ヒントは【小数部分】の大きさです。

ルール
√の計算をする度に【小数部分】は約2分の1になる。

もちろん1よりも大きい最初の数がどんな数でもそうなります。【小数部分】が128→64→32→16→8→4→2→1とぴったり2分の1になっている場合があります。

私がこのルールに気づいたのは10歳のときでした。謎解きまで6年かかり16歳のときに解決しました。いずれ解説したいと思います。

べき乗xyの計算

前回「0乗はなぜ1? 後編|その理由を解説」では、「2の冪」の物語を4つ紹介しました。その中にでてきた2の冪の計算は次のようなものでした。

  • 曽呂利新左衛門(そろりしんざえもん)と米粒 2¹⁰⁰
  • 将棋盤と小麦 2⁶³
  • ドラえもんの道具「バイバイン」とくりまんじゅう 2²⁷
  • コピー用紙と月の問題 2⁴³

これらのべき乗の計算は関数電卓の出番です。関数電卓には様々なものがあります。ここではiOSの電卓アプリを取り上げて。さっそく上記4つの2のべき乗を計算してみます。

2⁶³と2¹⁰⁰の計算結果にはe18、e30がついています。これはそれぞれ×10¹⁸、×10³⁰のことを表します。これは科学的表記、指数表示などと呼ばれます。

2¹⁰⁰=1267650600228229401496703205376

は科学的表記では1.26765060×10³⁰と表す。

e30、×1030の30から2¹⁰⁰は31ケタとわかります。1000=1×10³、21000=2.1×10⁴といった簡単な例から10の何乗の指数部分に1を足した数がその数のケタ数になるということです。

ちなみに2¹⁰⁰⁰がどうなるか関数電卓でたしかめてみるとiOSの電卓アプリでは「エラー」と表示されます。

【問題】\({\sqrt{2}}\)=20.5 はどういうことか。

今回取り上げた√とべき乗xyをあわせた問題を最後に出してみます。

\({\sqrt{2}}\)=1.414213562373095
20.5=1.414213562373095

したがって、\({\sqrt{2}}\)=20.5 が成り立ちます。20.5 が\({\sqrt{2}}\)に等しくなるのはどう理解すればいいのでしょうか。次回はその解説からはじめていきます。

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桜井進(さくらいすすむ)様

1968年山形県生まれ。 サイエンスナビゲーター®。株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役CEO。 (略歴) 東京工業大学理学部数学科卒、同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。 東京理科大学大学院非常勤講師。 理数教育研究所Rimse「算数・数学の自由研究」中央審査委員。 高校数学教科書「数学活用」(啓林館)著者。 公益財団法人 中央教育研究所 理事。 国土地理院研究評価委員会委員。 2000年にサイエンスナビゲーターを名乗り、数学の驚きと感動を伝える講演活動をスタート。東京工業大学世界文明センターフェローを経て現在に至る。 子どもから大人までを対象とした講演会は年間70回以上。 全国で反響を呼び、テレビ・新聞・雑誌など様々なメディアに出演。 著書に『感動する!数学』『わくわく数の世界の大冒険』『面白くて眠れなくなる数学』など50冊以上。 サイエンスナビゲーターは株式会社sakurAi Science Factoryの登録商標です。

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