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デジタルツインとは|都市のデジタルツイン「東京都デジタルツイン実現プロジェクト」を紹介

サイバー(仮想)空間上に地形や建物の3Dモデルを再現し、そこにさまざまなデータを重ねて解析やシミュレーションを行う“都市のデジタルツイン”。

東京都はさまざまな課題を解決するため、デジタルテクノロジーを駆使した変化への対応が必要と考え、都市のデジタルツインを産官学一体で実現する「東京都デジタルツイン実現プロジェクト」を推進している。

今回は東京都が推進する都市のデジタルツインプロジェクトを紹介する。

デジタルツインとは

デジタルツインとは、インフラ(例:建物、道路)や人の流れなどさまざまな要素をバーチャル空間上に“双子(ツイン)”のように再現し、それらのデータをもとにモニタリングや解析、シミュレーションを行うことを指す。

統計データやスマートフォンから収集した位置情報ビッグデータ、IoTセンサーから取得したリアルタイムデータなど各種のデータを組み合わせて、3D空間上に可視化して分析を行える。

たとえば、台風や地震などの災害が発生した際、まずバーチャル空間で、これまでの河川水位や避難施設での収容状況のデータをもとに被害シミュレーションや避難施設や物資の過不足分析を行う。

次にバーチャル空間での分析、シミュレーションの結果を踏まえ、現実空間での避難ルートや移動手段の確保に反映させる。このサイクルの実現を目指すのが都市のデジタルツインだ。

東京都が目指す都市のデジタルツインプロジェクトの概要

東京都はこのデジタルツインを活用することで、少子高齢化や人口減少、人流・物流の変化、気候変動対策、首都直下型地震に対する備えなど、多様な課題の解決と都民のQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)向上を目指している。

それと同時に、東京都がデジタルツインの社会実装の先駆けとなり、国内外の都市に波及させたいとも考えている。

都市のデジタルツインは、下記のような分野での活用が期待されている。

  • 防災
  • まちづくり
  • モビリティ
  • エネルギー
  • 自然
  • ウェルネス
  • 教育
  • 働き方
  • 産業

 

東京都は2021年度の「未来の東京戦略」において、2030年までの目標として以下を掲げている。

あらゆる分野でのリアルタイムデータの活用が可能となり、意思決定や政策立案などで活用される「完全なデジタルツインの実現」

「東京都デジタルツイン実現プロジェクト」公式サイト
(画像出典:https://info.tokyo-digitaltwin.metro.tokyo.lg.jp/)

庁内外のデータを集約・管理するための「デジタルツイン基盤」を構築

具体的な取り組み内容

都は庁内の日常業務やサービスをデジタルツインで高度化するため、庁内外の地理空間データを集約し横断的にデータ活用できるよう「デジタルツイン基盤」の構築に取り組んでいる。

デジタルツイン基盤構築の目的

  • 庁内のデータ管理の一元化
  • データ流通の促進
  • 行政のデータガバナンスやデータリテラシーの向上

デジタルツイン基盤の構成要素

  • 庁内データストア:庁内外の多様なデータを集約
  • データカタログ、インターフェース:格納したデータを参照・活用
  • ビューア:データを可視化

ビューアについては都民など外部ユーザーが見るための庁外ビューアと、庁内の各局ユーザーが見るための庁内ビューアをそれぞれ用意する。

デジタルツイン基盤の拡張計画

2022年度は以下が予定されている。

  • 庁内各局が保有する地理空間データなどを収集・管理するためのデータストアの構築
  • データストアで管理するデータの検索やアクセスを容易にするデータカタログサービスの構築
  • 庁内の地理空間データを基盤地図や3D都市モデル上に可視化する庁内3Dビューアの構築

2023年度以降も以下のようにシステム拡張を順次図っていく方針としている。

  • リアルタイムデータなどのシステム間連携や庁外も含めたデータ連係への対応
  • 庁内外のシステムに適した形でのデータ提供およびシミュレーションなどへの活用
  • 利用者やデータ量、データの種類などの拡大

デジタルツイン基盤の構成
(画像出典:https://info.tokyo-digitaltwin.metro.tokyo.lg.jp/platform/)

2022年度のベータ版事業

東京都は都市のデジタルツインの社会実装に向けた技術検証および課題整理のため、ベータ版事業も行っている。

衛星データを活用した予兆検知高度化検証

地球観測衛星が取得したデータを活用して、山岳道路の斜面変状や許可手続きなしに実施される不適正な盛土のように地盤変化が想定されるエリアの監視や、台風による離島港湾施設の被害状況の把握に活用できるかを検証する。

地下埋設物3D化の社会実装に向けた課題整理

地下埋設物管理の業務プロセスにおける課題を把握するため、庁内の関係部署にアンケート・ヒアリング調査を実施。

さらに、高精度な地下埋設物3Dモデルと、東京都建設局で取得された都道点群データを組み合わせ、庁内関係部署にデモを行い、協業を通じた高度化の可能性を検証する。

産学官でのデータ連係に向けた課題検証

学術研究や公共工事で得られたボーリングデータの解析結果をもとに、東京都区部地下浅部の地層の3次元分布形態を示した3次元地質地盤図データを作成する。

デジタルツイン上のデータとゲームエンジンの連携やゲームエンジン上でのデータ活用について記載したマニュアルも公開する。

2022年度のベータ版事業
(画像出典:https://info.tokyo-digitaltwin.metro.tokyo.lg.jp/)

3D都市モデルや各種データを可視化できる3Dビューアを提供

「東京都デジタルツイン実現プロジェクト」の公式サイトでは、都内の建物や街の様子をウェブブラウザ上で可視化できる「東京都デジタルツイン3Dビューア(ベータ版)」を公開している。

同ビューアでは、データカタログからデータを探して3D地図上に追加することで、さまざまな角度から建物や都市全体を俯瞰でき、手元にあるCSVやKML形式のローカルデータをアップロードして可視化することもできる。

地名や住所からの検索も可能で、3Dビューアに表示されるデータへの説明追加や、動きのあるガイドマップやレポート作成が可能な「ストーリー」も利用できる。

3D地図は右上の円の外側を左クリックしながら回して地図の向きを変えたり、内側の円を左クリックしながら動かして角度を変えたりすることができる。

3D都市モデルは「テクスチャなし」「低解像度」「オリジナルの解像度」から選択可能で、「オリジナルの解像度」で動きが遅い場合などは「低解像度」に切り替えるのがおすすめだ。

なお、同プロジェクトでは、デジタルツインの社会実装に向けたロードマップ更新の方向性や技術的課題について有識者・内外関係者で議論する検討会を実施しており、資料も一般公開されているので、詳細を知りたい場合は参考にしてほしい。

スマートフォンを使って取得(キャプチャー)した東京都の地物を募集する「東京都3Dアーカイビングイベント」も2023年1月15日まで実施しているので、興味のある方は参加してみてはいかがだろうか。

このようなさまざまな取り組みを通じて、東京都が推進する都市のデジタルツインが他の道府県にも波及していくことに期待したい。

※2024年10月31日、区部の3次元点群データがオープンデータとして公開、「東京都デジタルツイン3Dビューア」に掲載されました。国内で公開されている航空レーザ測量による点群データとしては最も高い精度とのことです。詳しくは東京都の報道発表文をご覧ください。(2024/11/1追記)

東京都デジタルツイン3Dビューア
(画像出典:https://3dview.tokyo-digitaltwin.metro.tokyo.lg.jp/)

■URL
東京都デジタルツイン実現プロジェクト
https://info.tokyo-digitaltwin.metro.tokyo.lg.jp/

※本記事で紹介したサービスに関する詳細は、東京都あてにお問い合わせください。

 

インフォマティクスからのお知らせ

Web3Dビューアシステム

インフォマティクスでは、3DデータをWebに公開・共有・管理できるシステム「3D-Bucket(スリーディバケット)」を提供しています。

広域大容量の3Dデータでもブラウザで高速表示できるため、「容量の大きい点群データを共有できない」「端末毎にソフトウェアの導入が必要なので手間もコストもかかる」などの課題を解決します。

資料請求もしていただけますので、お気軽にお問い合わせください。

【参考】https://info.tokyo-digitaltwin.metro.tokyo.lg.jp/

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片岡義明(かたおかよしあき)様

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」、「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。

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