3D測量 コラム

点群とは|データ取得方法・変換処理・活用例

こんにちは、インフォマティクスの空間情報クラブ編集部です。

国土交通省の「i-Construction」施策推進などにより、3次元レーザースキャナーによる計測が普及してきました。この計測で取得されるのが点群データです。

点群データは高精度であることから、構造物の保守点検、老朽化診断など社会インフラ分野を中心に活用が広がっています。

今回は点群データの取得方法や変換の流れ、利用例についてご紹介します。

点群とは

点群(てんぐん)とは点の集まりのことをいいます。ポイントクラウドと呼ばれることもあります。

点群は一般に3次元の直交座標 (x, y, z) で表現されます。

点群データが持つ情報

点群データは以下の情報から構成されます。

  • 3次元座標値(X,Y,Z)
  • 色の情報(R,G,B)

ファイル形式は.txt、.las、.xyzをはじめさまざまな形式があります。

点群データの取得方法

点群データの取得方法は主に以下のようなものがあります。

  • 地上設置型の3Dレーザースキャナー(測量機器)を使った3D計測
  • 無人航空機やドローンを使った航空レーザー測量
  • レーザースキャナーを搭載した車両を使った移動型3D計測(MMS:Mobile Mapping System

上記のほか、ハンディ型計測器や、水中設置・移動型による計測からデータ収集する場合もあります。

以下はMMS(モービルマッピングシステム:移動型3D計測)により取得された点群の例です。シーン全体が無数の点から構成されています。

MMSで取得した点群の例 [1]

3次元計測のメリット

3次元レーザースキャナーによる測量には以下のようなメリットがあります。

  • 非接触による測定・形状データを記録できる
  • 高所や人の立入りが困難な危険な場所のデータを取得できる
  • デジタルデータとして保存し、用途に応じた加工ができる

概ね360°全方位計測できますが、これはあくまでもレーザーが届く範囲のみのため、より正確なデータを取得するには位置を変えて複数回計測する必要があります。

点群データの変換の流れ

取得した点群データ(生データ)は3次元座標値と色の情報しか持っていないため、以下のような流れで変換、加工処理します。

  1. 専用ソフトに点群データを取り込む
  2. 前処理(位置合わせ、ノイズ除去など)
  3. 解析(寸法計測、干渉チェックなど)
  4. モデリング(配管や設備などの3Dモデル作成、メッシュデータ作成など)
  5. 最終出力(利用デバイスや用途に応じたフォーマットのファイル作成)

最終出力されたファイルをCADソフトやヘッドマウントディスプレイなどで読み込んで利用します。

活用例

点群データは以下をはじめ、さまざまな用途に活用されています。

  • 高速道路、橋梁、トンネルなどインフラ構造物の点検
  • プラント設備などの配置・設計検討や保全
  • 災害による被害確認
  • 地図作成(GIS
  • 重要文化財のデジタルアーカイブ

文化財の研究や展示に3D点群データとVRを活用する取り組みも行われています。

GISにおける点群データの扱い

GISでは点群データは地形や構造物を表す際に利用されることが多く、範囲や点数は膨大です。

GISで点群データをうまく活用するには、データの軽量化や加工、表現がポイントとなります。

GISソフト「SIS」バージョン9は点群データに対応していますので、点のサイズや形状、密度を変えた表現が可能です。

オープンデータとして公開されている3次元点群データ

静岡県

静岡県は富士山南東部・伊豆東部の3次元点群データをオープンデータとして公開しています。(静岡県を3次元点群データで再現した「VIRTUAL SHIZUOKA」のデータセットは2020年度 グッドデザイン賞を受賞。)

以下は3次元点群データを映像化した動画です。(Youtube「静岡どぼくらぶ」ちゃんねる「VIRTUAL SHIZUOKA - 3次元点群データでめぐる伊豆半島-」より)

静岡県は2017年より県全域のデジタルツイン化「VIRTUAL SHIZUOKA」に向けて点群データ取得の取り組みを開始しています。

2021年7月の熱海土石流発生後、スピーディに有志チームを結成し、数日で「バーチャル被災地」として3次元地形データをオープンデータとして公開しました。

この時に中心となってメンバーを募り有志チームを率いたのが、静岡県建設政策課の杉本直也様です。(杉本様はインフォマティクスが構築した「静岡県地理情報システム」のユーザーでもあります。)

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【ニュースリリース】
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宮崎県都城市

2019年夏から解体工事が行われていた「都城市民会館」(建築家・菊竹清訓氏設計)の3次元点群データがオープンデータとして公開されています。

東京都交通局

東京都交通局は、東京都の「デジタルツイン実現プロジェクト」の一環として、都営大江戸線都庁前駅の3D点群データをオープンデータとして公開しました。

デジタルツインの基礎となる点群データを公開することで活用を促進し、市民や民間事業者による活用事例の創出を図るとされています。

おわりに

今回は3次元計測によって収集される点群データについて紹介しました。

点群データは構造物の保守点検をはじめ、プラント設備の配管図面作成、遠隔地からの計測における精度向上や業務効率化だけにとどまらず、自動運転やエンターテーメント分野での活用も期待されています。

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インフォマティクスではLiDAR、360°パノラマカメラ、GIS(地理情報システム)を組み合わせ、インフラ設備の点検・維持管理を支援するシステム「Glove(グローブ)」を提供しております。

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[1] 画像提供:岡山理科大学 工学部 情報工学科 島田英之様
<参考>

・空間情報シンポジウム2015 岡山理科大学 島田英之様の講演資料「MMSによる道路の3Dモデル構築とその応用」

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空間情報クラブ編集部

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