GISソフト「SIS」活用講座

GISソフト「SIS」9 のご紹介|Part14 浸水想定区域データを使った解析編

国土交通省の国土数値情報ダウンロードサービスでは、災害・防災に関するデータが整備されており、オープンデータとして利用できるものも増えています。

今回はその中から東京都の高潮浸水想定区域データを使用し、行政界のデータと重ね合わせて解析する機能を中心にご紹介します。

国土数値情報ダウンロードサービス

「国土数値情報」は、国土交通省が管理・整備している国土に関する電子地図用のデータで、様々なGISで利用することができます。

データによって使用許諾条件が異なるので、業務でご利用の際はご注意ください。https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/index.html

インフォマティクスでは、国内で約36,000のお客様に利用されているGIS(地理情報システム)製品SIS(エスアイエス)をご用意しております。
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シェープファイルの読み込み方法

高潮浸水想定区域データは、シェープファイル形式(*.shp)あるいはGeoJSON形式(*.geojson)で公開されており、SIS 9はどちらの形式のデータも読み込むことができます。(SIS 9は現在GML形式には対応しておりません。)

SIS 9 SR2では、SIS Desktopのシェープファイルのデフォルトの読み込み仕様が変更され、すべてのデータをメモリ上に展開してから描画できるようになりました。

これにより、主題図を設定したり広範囲を表示したりした場合の描画速度が向上しました。

詳細は、SISサポートページ内のFAQ【1076】を参照してください。

SISサポートページ

ログインしていただくと、FAQの参照や、最新サービスリリースのインストーラのダウンロードができます。(※注意:SISユーザー様専用サイトです。)https://sis.informatix.co.jp/sis_support/

Case 関数でデータを分かりやすく分類

高 潮 浸 水 想 定 区 域 デ ー タ は、「A49_003$」(GeoJSON形式の場合は「A49_003@」)属性に次のような浸水深のランク区分の情報が入っています。

0.3m 未満
0.3m 以上0.5m 未満
0.5m 以上1m 未満
1m 以上3m 未満

3m 以上5m 未満
5m 以上10m 未満
10m 以上20m 未満
20m 以上

 

この値は文字列のため、評価に利用しづらい場合があります。

この値を数値の指標に変換するには、これまでは「Iif」関数や「Switch」関数を使用する必要がありましたが、SIS 9で追加された「Case」関数を使用すると、SQLと同じ構文でより分かりやすく変換することができます。

例えば、ランク区分を「1」~「8」の数値に変換したい場合、以下のようなフォーミュラを使用します。(※1)

Case
When A49_003$ = "0.3m未満" Then 1
When A49_003$ = "0.3m以上0.5m未満" Then 2
When A49_003$ = "0.5m以上1m未満" Then 3
When A49_003$ = "1m以上3m未満" Then 4
When A49_003$ = "3m以上5m未満" Then 5
When A49_003$ = "5m以上10m未満" Then 6
When A49_003$ = "10m以上20m未満" Then 7
When A49_003$ = "20m以上" Then 8
Else 0
End

プロセス機能で浸水深ランクごとの図形に

高潮浸水想定区域データは、ポリゴンデータとして整備されていて、たくさんの図形が存在します。

このようなデータに対し「ディゾルブ」という機能を使用すると、浸水深のランク区分の値ごとに1つの図形にまとめることができます。

その際に上記のフォーミュラを使用すれば、ランク区分の値を、まとめた図形の属性として付加することができます。プロセス機能を使用すると、これらを一括操作で行えます。

「プロセス」コマンドを実行し、高潮浸水想定区域データのオーバーレイに対して次の操作を追加します。
(図1)

  • 解析/ブール演算(ディゾルブ)
    「フォーミュラ」:「Case ~(※1)」を指定
  • プロパティ /ユーザ属性設定
    「ユーザ属性名」:「浸水ランク&」
    「値」:「Dissolve@」
  • プロパティ /ユーザ属性削除
    「ユーザ属性」:「Dissolve@」

図1:追加するプロセス操作

東京都の高潮浸水想定区域データに対してこのプロセスを実行すると、「浸水ランク&」に「1」~「7」の数値が入った7つ(”20m以上”のデータがないため)のマルチポリゴンにまとめることができます。(図2)
(※注意:すべてのデータに対してプロセスを実行すると多少時間がかかりますが、完了するまでお待ちください。)

図2:浸水深ランクごとに1つのポリゴンにまとめてランク属性を付加

プロセス機能で図形の重なりを簡単に抽出

SIS 9で追加されたプロセス操作に、2つのオーバーレイの図形が重なっている部分や重なっていない部分を一括で抽出する機能が追加されました。

これまでは、あらかじめ「プロセス機能で浸水深ランクごとの図形に」でご紹介した操作と同等の編集作業をする必要がありましたが、その作業は不要になりました。また処理も高速に行えます。

例えば、国土数値情報ダウンロードサービスから東京都の行政区域データをダウンロードして読み込み、高潮浸水想定区域と重なっていない部分のみを抽出することができます。

行政区域データのオーバーレイに対してプロセスの「解析/オーバーレイ演算(引き算)」を実行して、対象オーバーレイに高潮浸水想定区域データのオーバーレイを指定します。(図3)

図3:オーバーレイ引き算のプロセス実行結果

プロセスの「解析/オーバーレイ」操作は、他にも「クリップ」「交差」「同一性」「対象差」「足し算」などがあり、重複している図形に関する抽出作業を簡単に行うことができます。

おわりに

SIS 9の新しい関数や解析機能で、様々な処理がより簡単に、より高速に行えるようになっています。これまでのSIS活用講座もご覧いただき、SISのたくさんの便利な機能を業務に活用してください。

SIS Desktopシリーズ 製品情報
https://www.informatix.co.jp/sis/

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<地図データ出典>Open StreetMap data © OpenStreetMap Contributors、国土交通省:「国土数値情報(高潮浸水想定区域データ)」および国土数値情報(行政区域データ)」を加工して作成

※この記事は、GIS NEXT第78号に掲載された記事を編集したものです。

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空間情報クラブ編集部

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