現実世界の情報をIoTなどを活用して仮想空間に再現し、リアルなシミュレーションを行う“デジタルツイン”と呼ばれる取り組みが始まっている。
国土交通省では、このデジタルツインの基盤となる都市の3Dモデルの整備を進めるプロジェクト「PLATEAU(プラトー)」を進めており、2020年12月に同プロジェクトのティザーサイトを公開した。
3D都市モデルをオープンデータとして公開
3D都市モデルは、建物や街路などのオブジェクトに名称や用途、建設年などの情報を付与して都市空間を再現するための基盤となるデータで、これをベースにさまざまな都市活動の情報を重ねることで、都市計画の立案やシミュレーション、分析などを行える。
今回公開したティザーサイトは、このPLATEAUプロジェクトの進捗状況を発信することを目的としており、3D都市モデルをオープデータとして公開するほか、それらを活用した事例の紹介や実証実験の報告なども行っていく予定だ。
PLATEAUプロジェクトで公開する3D都市モデルのデータフォーマットは“CityGML 2.0”という形式を採用している。
これは、地理空間情報分野における国際標準化団体であるOGC(Open Geospatial Consortium)が国際標準として策定した標準フォーマットだ。
同フォーマットでは、建物や街路などのオブジェクトを地物として定義して、形状や名称、種類、建築年などの情報を属性として定義している。
CityGMLでは、3D都市モデルの詳細度に応じてLOD(Level of Details)が設定されており、建物の2D形状に高さ情報をかけあわせたシンプルな箱モデルをLOD1、LOD1に屋根形状を追加したものをLOD2、さらに窓やドアなどの外構(開口部)を追加したものをLOD3、建物内部までBIM/CIM等でモデル化したものをLOD4、と4つのレベルに分けられている。
LODの概念
東京23区全域の3D都市モデルを見られるWebアプリを提供
このCityGMLで構成された3D都市モデルをプレビューするためのツールとして用意されているのが、ウェブブラウザー上で動作するアプリケーション「PLATEAU VIEW(プラトー ビュー)」だ。
現在、PLATEAU VIEWでは東京23区全域を網羅した3D都市モデルが先行公開されており、これを使って誰もが簡単に3D都市モデルを閲覧することができる。
PLATEAU VIEWでは、マップ上に3D都市モデルを表示させることが可能で、ベースマップは空中写真や地理院地図などから選べる。
PLATEAU VIEW
PLATEAU VIEW 利用方法
左メニューの[Add Data]をクリック(タップ)すると、表示するデータセットの選択画面が表示される。
東京都23区のデータは、建物モデル、建物モデル(テクスチャなし)、荒川浸水想定区域図、避難施設、ランドマーク、駅名などを区ごとに選択できる。
表示させたいデータを選択するとデータのプレビューが表示され、右上の[マップに追加]をクリックするとマップに3Dモデルが表示される。
プレビュー画面
[建物モデル]を選ぶと表示される箱型の3Dモデルは、そのほとんどがLOD1のデータであり、たとえば実際には丸みを帯びた東京ドームの天井も、この3Dモデルでは屋根が平たい形状となっている。
東京ドーム付近
ただし、東京駅周辺や新宿の高層ビル街など一部エリアについてはテクスチャ入りで屋根形状も表現したリアルな3Dデータを収録している。
東京駅周辺など一部エリアにはテクスチャー入り3Dデータを収録
表示された建物データをクリック(タップ)すると、建物モデルの属性情報が表示される。
建物の高さや面積、地上階数、地下階数、構造、住所、用途分類、商業地域/住居地域、防火/準防火地域、緯度・経度などのさまざまな情報を確認できる。
左メニューの[高さで絞り込み]というスライダーを右に動かしていくと、設定された高さを下回る建物は非表示となり、高い建物だけを抽出して表示できる。
また、[建物の色分け]の項目では、建物の高さや、浸水ランクに応じた色分けも行える。
東京23区の3Dモデルの場合は、荒川、江戸川、利根川、多摩川の4つの河川について計画規模(レベル1)と想定最大規模(レベル2)の2つの浸水域をもとに色分けすることが可能だ。
建物の高さによる色分け
想定最大規模の浸水ランクによる色分け
このほか、3D地図を使ってストーリーを作成して共有できる「ストーリーデータ」という機能も搭載している。
上部メニューの[Story]を選択し、[シーンをキャプチャ]を選択すると、表示されている地図をキャプチャしてタイトルや文章などを付けて保存できる。
複数のシーンを保存してシーンからシーンへと移動させることも可能で、プレゼンテーションなどに利用できる。
3月にかけて全国50都市の3Dモデルを追加公開予定
PLATEAUのサイトに掲載されている今後のロードマップを見ると、現在Ver0.1として提供されているPLATEAU VIEWは今後、3月にかけて全国約50都市の3Dモデルを追加公開していく予定で、さまざまな機能の拡充を図っていく方針だ。
あわせて人流データなどの都市活動データも公開するほか、ユースケース開発や実証実験も追加で公開する予定となっている。
続いて4月にかけては、3D都市モデルのデータセットをオープンデータ化する予定で、利活用ガイダンスやデータ仕様書、事例集などの各種ドキュメントも公開する。
なお、3D都市モデルについては、東京都も2020年12月に「都市の3Dデジタルマップの実装に向けた産学官ワーキンググループ」を立ち上げて、データ仕様の検討やデータ取得の方法などについて検討を開始している。
PLATEAUでは、現在LODレベル1のデータの整備・公開が始まったばかりだが、今後はこの動きを全国各都市へ広げるだけでなく、屋根形状を表したLODレベル2データの整備が進められていくことにも期待したい。
また、エリアを拡大するだけでなく、一旦公開した3D都市モデルを、その後どれくらいの頻度で更新していくかという点も重要で、継続的にデータをメンテナンスしていく仕組みをどのように作るかがこれからの課題となるだろう。
都市計画や防災、都市サービス創出を実現するために、PLATEAUをはじめとした3D都市モデルの整備が今後どのように進められていくのか注目される。
■URL
・PLATEAU
https://www.mlit.go.jp/plateau/
・PLATEAU VIEW
https://plateauview.jp/
※画像出典:PLATEAU(https://www.mlit.go.jp/plateau/)