地図・地理 地理教育 導入事例・活用例

GISを活用し、より主体的な学びを|千葉明徳高等学校

千葉明徳高等学校 社会科教諭 濱野 靖隆 様

導入経緯

GISで学びを可視化し生徒の興味を刺激することで、より主体的な学びを

千葉明徳高等学校では、2019年度より全校生徒に1人1台iPadを支給するなどICTを活用した教育を積極的に進めています。

2022年より必修化がスタートする「地理総合」の授業で、社会科教諭の指導のもと地理情報システム(GIS)を活用した授業を実施し、ICT教育の効果検証を行っています。

・所在地:〒260-8685 千葉県千葉市中央区南生実町1412番地
・設立:1925年
・生徒数:男子605名 女子473名(令和元年4月現在)
・公式HP:https://chibameitoku.ac.jp/chuko/koukou/

千葉明徳高等学校は千葉市中央区ある私立中学校・高等学校(中高一貫校)で、1925年に女子校として設立、1974年より男女共学となっています。

教育理念として「行動する哲人の育成」を掲げており、「ICT活用」「英語力」「プレゼンテーション力」の3つの力の育成を重視しています。

背景

千葉明徳高校では2017年度入学生からiPadを導入し、ICTを教育に活用することでどのような効果が得られるか、多くの実践を積み重ねています。

その中で、地理の授業でiPadの新しい活用方法を模索していました。

新しい学習指導要領では、2022年度以降に必修化が始まる「地理総合」でGISが大きな役割を持つため、千葉明徳高校でもGISを使った指導を行える人材の育成とノウハウの蓄積が課題でした。

そこで、大学で地理を専攻していた濱野教諭が中心となり、現状の「地理A」の授業にどんなGISを導入してどのように活用するかを検討していくことになりました。

導入ソフトの調査・検討

まず地理Aの授業で使用するGISソフトの検討を開始しました。

フリーのGISソフトは生徒たちが扱うのには少々ハードルが高く、さまざまなWebGISも生徒たちの共同作業や情報共有には不向きに感じられました。

生徒たちが授業で学んだことを学習記録として蓄積し、ポートフォリオ として活用したいという思いがありましたが、これという決定的な製品が見つけられずにいました。

※部活や学校外の活動成果など、高校生活のさまざまな活動の記録をデジタル化して残すことができるシステムのこと。

導入の決め手

2019年7月、インフォマティクス社主催の「空間情報シンポジウム2019」で東京大学 小口高教授の講演「地理情報システム(GIS)と地理学の教育と人材育成」を聴講したことがきっかけで、インフォマティクス社のWebGISサービス「GC Maps」に出会いました。

インフォマティクスから機能説明を受け、導入前の課題の解決につながると感じたこと、GIS初心者の生徒でも抵抗なく学習に使えそうなことから導入が決まりました。

特に以下の優位点が決め手となりました。

  • iPadでも快適に動くこと
  • 操作がシンプルなこと

生徒間のデータ共有も比較的容易であり、グループワークなど複数人で協力しながら課題を解く授業スタイルが「地理総合」とマッチし、「GISを使った指導ができる人材育成とノウハウ蓄積」という課題解決にも役立ちます。

新しいものは取り入れてみようという千葉明徳高校の気風も、GIS導入の起案がスピーディーに進む後押しとなりました。

授業での活用

高校2年の地理Aの実践授業で「GC Mapsで位置情報を表示する」というテーマで2コマ(2時間)の授業が行われました。

この授業の大きな狙いは、インターネットで検索した住所を地図上に図化する作業を通して生徒にGISを体験させることでした。

まず、図化するテーマを各チームで設定するよう指示したところ、
「大手ファミリーレストラン」
「県内の高校」
「レジャー施設」
「病院」
というテーマが出てきました。

チームごとに、テーマに沿って千葉市内の施設の住所を検索します。収集した住所データを教員側で緯度経度の座標データに変換し、GC Mapsの地図にポイントとして表示させる作業を行ったのち、生徒が地図の考察を行いました。

こちらから、各チームで作成したデータを閲覧できます。

※表示/非表示は右側のマークで切り替えられます。
※地図上のポイントをクリックすると内容を確認できます。

生徒は自分たちで収集したデータが地図化されていることに高い関心を持った様子で、「千葉県内の人口や人口密度、年齢別の割合などのデータと組み合わせると面白そう」など、より深く学びたいという意欲が感じられたといいます。

学びの可視化は生徒の興味関心を刺激し、より主体的な学びが得られるという印象を受けました。(濱野教諭)

濱野教諭ご自身は教員歴も浅く、普段からGISを使いこなしているわけではないとのことですが、まずは「自分たちが集めた情報を地図上で表現してみよう」という簡単なことから始めたいと考えていらっしゃいます。

校内でGISが普及すれば、地理科目に限らず「歴史総合」や「公共」の授業、保健の授業で「コロナ感染者と年齢層」、理科の授業で「植生の分布図作成」といったように、いろいろな授業で活用できる可能性が十分にあると感じたそうです。

今後の展望|高等学校地理必修化とGIS

長い間、高校「地理」は選択科目でしたが、2022年度からの高等学校の学習指導要領の改訂により、共通必履修科目として「地理総合」が設置されることになります。

「地理総合」では以下の3点が大項目として掲げられており、GISは諸問題を地理的観点から考察するための重要なツールと位置づけられています。

  • 地図や地理情報システム(GIS)などを用いることで、汎用的で実践的な地理的技能を習得する
  • グローバルな視座から国際理解や国際協力の在り方を、地域的な視座から防災などの諸課題への対応を考察する
  • 持続可能な社会づくりを目指し、環境条件と人間の営みとの関わりに着目して現代の地理的な諸課題を考察する

<地図データ出典>
国土地理院:地理院タイル

【GC Mapsについて】
インフォマティクスではインターネット経由でGISの機能を利用できるWebGISサービス「GC Maps」を提供しています。

詳しくはこちらよりお問い合わせください。

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空間情報クラブ編集部

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