こんにちは、インフォマティクスの空間情報クラブ編集部です。
今回は日本測地系2011(JGD2011)についてご紹介します。
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目次
日本測地系2011とは
日本測地系2011(JGD2011)とは、日本の現行の測地基準系(測地系、データム)のことをいいます。
日本の測地基準系は、2001年の測量法改正において日本測地系(旧測地系)から日本測地系2000(新測地系、世界測地系 以降JGD2000)に移行し、2011年10月の測量法施行令改正において日本測地系2011(以降JGD2011)に移行しました。
JGD2011へ移行したきっかけは、東日本大震災による大規模な地殻変動の発生です。改定内容(測地成果2011)には最新の測量成果が反映されています。
日本測地系2011(JGD2011)の特徴
JGD2011の大きな特徴は、東日本と西日本で定義が異なる点です。
日本の測地基準系
東日本大震災による地殻変動の影響が大きい地域では、測量成果が改定され、測地系が再構築されました。
一方、影響が少ない地域(北海道と西日本)ではJGD2000からの変更はありませんでしたが、取り扱いが煩雑になるのを避けるため、両者を統一してJGD2011と呼ぶことになりました。
フレームの適用範囲
東日本と西日本間のフレーム差異の影響
フレームは地球上の位置を測るための物差しとして使われるもので、地球の重心位置や軸の向きなどによって決まります。
JGD2000、ならびにJGD2011の西日本・北海道ではITRF94が使われ、JGD2011の東日本・北陸4県ではITRF2008が使われます。
異なる物差しで測ると、結果の座標値も異なり、日本近辺でその差は5cm程度です。この差を直接確認することは、同じ時期に同じ場所をITRF94とITRF2008で計測しない限り難しいでしょう。
しかし、東日本のJGD2000とJGD2011のデータを比較した際の地物の位置の違いには、東日本大震災や定常的な地殻変動の影響に加え、このフレームによる差も含まれています。
座標値の補正
公共測量の基準点を改定する方法として国土地理院からいくつかの方法が提示されていますが、既存のデータの座標値補正を比較的低コストで行うには、国土地理院が公開している「PatchJGD」プログラムを使用します。(参考: 公共測量成果改定マニュアル(平成24年11月))
JGD2000のデータをJGD2011に補正するには、「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震補正パラメータ」を使います。
座標補正パラメータの大きさ
「東北地方太平洋沖地震補正パラメータ」の座標補正パラメータの大きさ
(出典:国土地理院ウェブサイト)
このパラメータはJGD2000をJGD2011に補正する目的で作成されたもので、補正結果には、東日本大震災による地殻変動の他に、フレームの差、14年間の定常的な地殻変動の結果が含まれています。
PatchJGDの操作画面やヘルプでは、補正結果のデータはJGD2000とされていますが、このパラメータで補正した座標値・データは必然的にJGD2011となります。
なお、この座標補正パラメータは一様な地殻変動が前提になっているため、1km間隔の格子点で構成されています。局所的に変動が大きい地域に適用する場合は注意が必要です。独自プログラムでの補正も認められています。
WKTの定義
GISで扱う測地基準系(データム)として見ると、JGD2011はJGD2000(世界測地系)とまったく同じ定義です。
これはGISで扱う測地基準系の定義には、準拠楕円体のみが含まれフレームが含まれないためです。
同様に地理座標系(緯度/経度)も、JGD2011はJGD2000(世界測地系)とまったく同じです。
地理座標系のWKT
JGD2011
GEOGCS["GCS_JGD_2011",DATUM["D_JGD_2011",SPHEROID["GRS_1980",6378137.0,298.257222101]],PRIMEM ["Greenwich",0.0],UNIT["Degree",0.0174532925199433]]
JGD2000
GEOGCS["GCS_JGD_2000",DATUM["D_JGD_2000",SPHEROID["GRS_1980",6378137.0,298.257222101]],PRIMEM ["Greenwich",0.0],UNIT["Degree",0.0174532925199433]]
(国土地理院発行の「数値地図(国土基本情報)」シェープファイル版「地図情報」と「メッシュ標高情報」のprjファイ ルより)
GISでJGD2000とJGD2011のデータを同時に扱う
上記の通り測地基準系の定義が同じなので、日本測地系からJGD2000(世界測地系)に移行したときのような、座標系による違いに由来した変換は必要ありません。
日本測地系からJGD2000(世界測地系)への移行では、基準としての地球のとらえ方が異なっていた(日本近辺だけから 世界全体を考えるようになった)のに比べて、JGD2000とJGD2011では地球の定義が同じであるためです。
しかし、東日本では前述の通りフレームの差異や地殻変動の影響が座標位置に現れるため、当然ながら地物は同じ位置にはなりません。
また、JGD2000と同じ座標系の西日本のデータを東日本のデータと並べて表現することはできますが、神奈川県と静岡県などの境界では道路や川などは連続しないデータになります。
JGD2000とJGD2011のデータを同時に扱う場合、どちらの座標系で作業を行ってもGISの処理上は問題ありません。
ただし、作成や編集を行うデータがJGD2000かJGD2011、またJGD2011の場合は、東日本か西日本かを意識して作業する必要があります。
EPSGコード
この記事を書いている時点(2013年9月 EPSG v8.2.7)では、EPSGデータセットにはJGD2011関連のコードは登録されていません。
前述の通り、JGD2000とJGD2011は同じWKTになるので、確実に区別できるようにするためにも、早めのEPSGコードの登録が望まれます。
なお、国土地理院からは「登録へ向けて準備を進めている」との回答をもらっています。
※追記(2014年9月)
EPSG v8.4 でJGD2011のデータムや座標参照系が登録されました。主な座標参照系のコードは、緯度/経度:6668, 平面直角座標系:6669-6687です。
販売・公開されているデータ
数値地図(国土基本情報)
「地図情報」と「地名情報」の座標参照系がJGD2011 です。「メッシュ標高情報」は5mメッシュの一部(東日本大震災の影響が大きい地域)がJGD2011、他はJGD2000です。
※追記(2015年2月)
2014年7月31日以降、「メッシュ標高情報」の座標参照系はJGD2011に統一されました。
基盤地図情報
「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震補正パラメータによる補正作業済」のデータがJGD2011です。
公開されているデータ仕様書にはJGD2000の記載(fguuid::jgd2000.bl)しかありませんが、上記データでは、各地物の座標参照系がfguuid::jgd2011.blとなっていてJGD2011であることを示しています。(国土地理院に確認済み)
※追記(2015年2月)
2014年7月31日以降のダウンロードファイル(ダウンロードファイル仕様書4.0に基づくファイル)はJGD2011 です。
・数値地図(国土基本情報20万)
・電子地形図25000
・電子地形図20万
おわりに
今後日本国内の地図データはJGD2011への移行が進んでいくと思われます。本記事が皆さまの理解と取り扱いの一助となれば幸いです。
なおSIS 9 SR1で「PatchJGD座標補正」ツールをバンドルしましたので、ぜひご利用ください。
<地図データ出典>国土地理院発行の基盤地図情報(縮尺レベル25000)
<参考>国土地理院ウェブサイト
・平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に伴う三角点及び水準点の測量成果の改定値を公表
・公共測量成果改定マニュアル
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