前回に続き、GISソフト「SIS」バージョン9の新機能をご紹介します。今回は、「グリッド」、「点群」の機能をご紹介します。
目次
グリッドとは
グリッド(メッシュ)は、領域を等間隔の格子に分割し、等間隔格子点ごとに何らかの地理情報(標高、人口など)を持たせたセルで構成された図形です。
各セルが保持する、この地理情報の値をセル値といいます。(図1)
グリッドは、標高や施設の分布などの表現に利用することができ、SISでポイントアイテムから作成したり、「基盤地図情報ダウンロードサービス」などのサイトからダウンロードしたデータを読み込んで利用することが可能です。(図2)
グリッドの精度向上!
SIS 9ではグリッドの精度が向上し、従来の「短整数型(16ビット)」以外に、単精度浮動小数点型(32ビット)、倍精度浮動小数点型(64ビット)など6種類のデータ型が追加されました。
これによりセル値として格納できる値の範囲が広がり、従来よりも精度の高い分析が可能になりました。
図3:グリッドの精度向上
グリッド演算でより高度な演算が可能に!
グリッド演算を使って、複数のグリッドデータから新しいグリッドを作成できます。
SIS 9のグリッド演算は、MapAlgebra関数によるマップ代数演算で高度な演算が可能になり、様々なシーンに対応した処理ができるようになりました。
範囲の異なる複数のグリッドを手早く1つにしたり(図4)、土砂災害前後の標高の差分をセル値にしたグリッドを作成して、それらのセル値をグリッド演算して解析に利用することができます。
プロセスのグリッド関連操作が充実!
大量のグリッドを1つにまとめる場合には、プロセス(注1)に追加された「グリッド/演算(足し算)」が便利です。(図5)
また、複数のグリッドを重ねて、重なったグリッドのセル値の最小値をセル値にしたグリッドを作成するといった処理も簡単にできるようになりました。(図6)
その他にも、SIS 9では、グリッド関連のプロセス操作が多数追加されています。
グリッド解析
作成またはダウンロードしたグリッドを利用して、各種グリッド解析を行うことができます。
ここでは、比較的簡単にできる解析例を2つご紹介します。
図7は、グリッドの各セルが保持する標高値をもとに、エリアごとの平均標高を計算した結果です。
エリアに含まれるグリッドのセル値の最大値、平均値などの統計量を算出する空間関数CalcRasterを利用しています。
図8は、標高解析の例です。
標高グリッドから標高が低い(0~5m)範囲を抽出し(図8赤の領域)、さらにそこに含まれる建物を抜き出して1mの標高毎に5段階で色分けしています。
その他にも、ホットスポット分析(カーネル密度推定、Getis-Ord(Gi*))、傾斜グリッド、可視領域など、様々な解析機能がありますので、ぜひお試しください。
なお、SIS 9のグリッド生成やホットスポットの結果は、グリッドアイテムのほか、グリッド上に配列されたポリゴンとして生成できるようになりました。
形状は、長方形以外に六角形、ひし形などがあります(図9)。
ホットスポット分析の集計に利用するポリゴンの形状を六角形などにすることが可能です。
点群データの読込と粒子主題図
SIS 9では約10種類の点群データをサポートし、軽快に読み込みできるようになりました。
読み込んだ点群は、粒子サイズ、形状、ペン、密度などの調整が可能です (図10) 。
点群の各粒子のもつ情報をもとに、主題図で各粒子のサイズや色を調整できます(図11)。
おわりに
いかがでしたでしょうか?ますます便利になったSIS 9。
引き続き、次回でもSIS 9の新機能についてご紹介しますので、どうぞお楽しみに!
SIS Desktop 製品情報
https://www.informatix.co.jp/sis/sis_lineup/
(注1)プロセス
「プロセス」は、複数の操作をまとめて一度に行うことができる機能です。詳細は「SIS活用講座第15回」をご参照ください。
<地図データ出典>
国土地理院 地理院地図、基盤地図情報 基本項目、数値標高モデル、政府統計の総合窓口(e-Stat)、
静岡県ポイントクラウドデータベース、CCライセンス 表示 4.0 国際
※この記事は、GIS NEXT第70号に掲載された記事を編集したものです。