こんにちは、インフォマティクスの空間情報クラブ編集部です。
今回は身近にあるボロノイ図についてご紹介します。
目次
ボロノイ図とは
ボロノイ図とは、平面上に設定された「母点」と呼ばれる複数の座標をもとに、どの母点に最も近いかによって平面上の座標空間を分割(=ボロノイ分割)することで作成される図のことをいいます。
ボロノイ分割やボロノイ図は、最寄り駅や最短ルートの検索、学区割りや勢力範囲の可視化などによく使われます。
下図はボロノイ図の一例です。赤い点が母点です。
GISソフトウェアのボロノイ分割(ティーセン分割)機能を使えば、点群からボロノイ図を自動的に作成できますので、市場調査で勢力圏やエリア分析を行う際に便利です。
ボロノイ分割についてはこちらの記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。
自然界に見られるボロノイ
ボロノイ図のような模様は、葉脈や蜂の巣、トンボの翅、キリンの斑点、クモの巣など、自然の中に数多く見られます。
建築意匠にみるボロノイ
下の写真は、長島雅則ファウンダーのご自宅の和室に敷かれている畳です。ボロノイパターンを取り入れたこの畳は、建築の素養を感じさせる、ファウンダーならではのセレクションといえるでしょう。伝統色の銀鼠に金色が重なっているような、上品で奥行きのある色合いが印象的です。
このユニークなボロノイ畳がどのようにして生まれたのか、制作を担当された株式会社草新舎 代表取締役・髙橋寿様に、その経緯をお聞きしました。
元々この畳は、都内にある建築設計事務所 noiz / architecture, design and planning代表の豊田啓介氏(東京大学建築学部卒)が長年温めていた企画で、変形畳を作れる畳業者を探していらっしゃいました。
たまたま当社の新聞記事をご覧になった豊田氏が企画を持ち込まれ、当初、共同事業ということでのお話し合いもしました。
しかし、最終的に折り合いがつかず共同事業とはなりませんでしたが、ボロノイ図のアイデアはお互いに利用可能とし、いったん関係を解消して現在に至っています。
畳は、田んぼの米の副産物である藁を重ねて縫い止めた「畳床(心材)」と、同じ田んぼの裏作で栽培された「い草」を使い、麻糸を縦糸、い草を横糸として織り上げた畳表の二つの素材を縫い合わせた、生活の知恵の産物です。
ボロノイは、同じ自然界で発生する組成の原理であり、畳のデザインとしては必然的な出会いだと感じています。
畳は、建物の中に自然を取り入れることができる唯一の敷物として伝承されてきましたが、気密性とデザイン性の高い住宅には馴染みにくく、その利用場所が減少し続けてきました。
長い畳の歴史の中で、畳がその形を変えることがなかったのは、素材を積み重ねたり糸で縫い上げたりする、その構造と製造方法にも原因がありました。
それを克服するべく様々な形にデザインする加工法を確立することで、活用の幅を広げる試みを始めた時に、ボロノイのデザイン手法を提示してもらい、様々な形の組み合わせが畳のデザインになることを知りました。
そこで私から、畳の方向を変えることで、反射により畳表の色彩に変化をもたせることを提案。敢えて畳表の方向を変えてデザインする現在のボロノイ畳が完成しました。
(髙橋寿様 談)
畳という伝統的な素材が、現代のデザイン思考と出会い、かたちを変えて新たな可能性を拓いていく――。自然と人の知恵が織りなす畳の未来は、こうして静かに、しかし確かな歩みで広がりはじめています。
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