こんにちは、インフォマティクスの空間情報クラブ編集部です。
近年、国内外の自動車メーカーが自動運転実現に向けた研究開発や実証実験を進めるなか、LiDAR(ライダー)と呼ばれるセンサー技術が注目されています。身近なところでは、iPadやiPhoneへの搭載で話題になりました。
今回は、LiDAR(ライダー)の仕組みや特徴、活用例をご紹介します。
目次
LiDARとは
LiDAR(ライダー)とは、離れた場所にある物体の形状や距離をレーザー光を使って測定するセンサー技術のことをいいます。この技術を実現するためのセンサー装置を指す場合もあります。
元々LiDARは地質、海洋、気象、農林業、宇宙探査など幅広い分野で利用されていましたが、遠距離からでも高精度な測定が可能なことから近年自動運転分野で利用されるようになりました。
LIDAR(英語:Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging、「光検出と測距」ないし「レーザー画像検出と測距」)は、光を用いたリモートセンシング技術の一つで、パルス状に発光するレーザー照射に対する散乱光を測定し、遠距離にある対象までの距離やその対象の性質を分析するものである。
(出典:Wikipedia|LIDARより)
LiDARの仕組み
LiDARはセンサー装置から対象の物体に向かってレーザー光を放ち、その光が跳ね返ってくるまでの時間により物体までの距離や形状を計測します。
LiDARが扱うレーザー光(紫外線、赤外線、近赤外線などの不可視光線)は電波と比べて光束密度が高く波長が短いため、誤差が発生しづらく、遠距離からでも高精度で小さい物体の計測ができることが特徴です。
LiDARが自動運転で注目される理由
人間のドライバーは道幅やカーブ、勾配のほか、前方走行車や対向車、バイクや歩行者、信号や標識など多くの情報を目で捉え、判断しながら運転操作を行っています。
その際、周囲にある物の形や大きさだけでなく、距離感や位置関係の情報も捉えています。この人の目の代わりになるのが各種センサーやカメラです。
車体に搭載されたセンサー装置が車の目となり周囲環境を見て、点群を作成することで障害物を検知します。
※点群(ポイントクラウド):LiDARからの計測データをもとにした3次元データのこと
LiDARは対象となる物体までの距離や位置、形状を3次元で正確に検出できるため、自動運転に必要な技術とされていますが、実際にはLiDARのほか以下のような技術を組み合わせて使われています。
- LiDAR
- ミリ波レーダー
- カメラ
- 遠赤外線カメラ
- 超音波ソナー
上記のうち「LiDAR、ミリ波レーダー、カメラ」の組み合わせが主流です。
ちなみに、テスラ車は周囲の把握をカメラとミリ波レーダーのみで行っており、LiDARは採用していませんが、今後はミリ波レーダーもなくし、カメラシステムだけに移行する予定だといわれています。
LiDARセンサーのメーカー
現在、国内外の多くの会社がLiDARセンサーの開発・販売に参入しています。
詳しくはこちらのサイトに最新のLiDARメーカー一覧が掲載されていますのでご参照ください。⇒LiDARセンサーメーカー12社一覧 【2024年】(Metoree)
LiDARで実現できること|活用例
最近ではLiDAR装置の小型化・軽量化・低価格化が進み、より活用範囲が広がってきています。
モビリティ
- 乗用車、商業車両、農業用機械、建設機械などの自律走行
- ロボットの自律移動(お掃除ロボット、配膳ロボットなど)
マッピング
- MMS(Mobile Mapping System):車両などの移動体に搭載して周辺をマッピング
- ドローンに搭載して上空から地形や建物を測量
LiDARは、3Dマッピングモデルの生成にも使われます。
たとえば、LiDARを使ってインフラ構造物(道路やトンネルなど)や周辺環境の高精細3次元マッピングを生成し、位置情報と連携させて一括管理することで、点検・補修業務の精緻化・効率化を見込めます。
電線・電柱の設備点検
送電線・電柱などの設備点検(送電線と周辺樹木との距離測定、弛み検知)
人による立ち入りが困難な場所でも調査でき、一回に広範囲な作業が可能となるため、作業効率の向上が見込めます。
防犯
侵入者の検知
新型コロナ対策(3密対策)
- 店舗の入退室管理
- 混雑状況のモニタリング
- 社会的距離(ソーシャルディスタンス)の確保
ARの進化系
- 家具の配置シミュレーション
- ゲーム、エンターテイメント
おわりに
今回ご紹介したLiDAR技術はアップル社の「iPad Pro」(2020年モデル)、iPhone 12 ProシリーズにLiDARが搭載されたことで認知度が高まりました。
アップル社製の新機種では深度センサーがレベルアップしており、今後ARの新たな可能性がさらに追求されていくことでしょう。
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<参考>
・『自動運転のためのセンサシステム入門』(日刊工業新聞社/伊東敏夫著)
・Wikipedia|LIDAR https://ja.wikipedia.org/wiki/LIDAR