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私たちが普段見ている世界地図は、本当に正確に世界を表しているのでしょうか。
西アフリカのトーゴは、アフリカ大陸などを実際よりも小さく描く「メルカトル図法」の使用をやめ、「イコールアース図法」の採用を求める決議案を国連に提出すると表明しました。
その背景には、地図が単なる視覚情報にとどまらず、人々の世界の捉え方にまで影響するのではないかという問題意識があります。
私たちが見慣れている世界地図では、アフリカ大陸とグリーンランドは同程度の大きさに見えます。しかし実際にはアフリカは約14倍の面積を持ちます。この“面積の歪み”は、見た目の違いだけでなく、私たちの認識にも影響を与えています。
メルカトル図法とイコールアース図法の違い
メルカトル図法とは何か
メルカトル図法は16世紀、航海用として開発されました。地球を円筒に投影し、経線と緯線が直角に交わる「正角円筒図法」の一種です。この図法の最大の特徴は、角度(方位)が正確に保持されることにあります。
この特性により、目的地への方位を地図上の直線として表現できるため、コンパスを頼りに進む航海において有用なツールとなりました。
現在でも、Googleマップなど多くのWeb地図はこの投影法をベースにしています。しかし、この利便性の裏には、面積に関する大きな制約が隠されています。

メルカトル図法による世界地図
(1569年/ゲラルドゥス・メルカトル作、Alvesgaspar via Wikimedia Commons、パブリックドメイン)
なぜ地図は歪むのか
地球は球体であるため、それを平面に展開する際、必ずどこかに歪みが生じます。
特にメルカトル図法では、高緯度地方ほど面積が極端に拡大される性質があります。その結果、グリーンランドやヨーロッパ、北米が本来のサイズ以上に大きく表示されてしまうのです。
図法には主に次のような性質があります。
- 面積を正しく表現する(正積図法)
- 角度を正しく表現する(正角図法)
- 距離を正しく表現する(正距図法)
これらすべてを同時に満たすことはできないため、地図は「何を目的に、何を優先するか」によってその形が変わるのです。
イコールアース図法とは何か
こうした面積の歪みを解消する手段として設計されたのが「イコールアース図法」です。
この図法は、「正積擬円筒図法」の一種で、各地域の面積比を正確に表すことを目的に開発されました。教育や人口分布図などの主題図において、メルカトル図法の代替として活用されることが増えています。
イコールアース図法では、国や大陸を実際の面積比に近い形で描けるため、アフリカや南米の本来のスケール感を適切に把握することが可能になります。

イコールアース図法
(出典:Strebe / Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)
地図の視覚イメージが認識に与える影響
地図のビジュアルは、私たちの意識にどのような作用を及ぼすのでしょうか。
教育現場、メディアによる情報発信、あるいは政策立案の場――。これらを通じて日常的に目に触れる地図の形状によって、無意識のうちに先入観が形作られます。
ある地域が実際よりも小さく描かれ続ければ、心理的にもその重要性を低く見積もってしまうおそれがあります。トーゴの提案は、このような認識の偏りに対する一石を投じたといえるでしょう。
既にアフリカ連合(AU)に加盟する55カ国に賛同の動きが広がっており、地図のあり方をめぐる議論は国際的な潮流となりつつあります。
GIS業務における「地図の罠」
この問題は政治や教育の分野に限らず、GIS(地理情報システム)を活用する企業にとっても実務的な課題です。
例えば、以下のような業務において、採用している図法の特性を十分に意識できている企業は多くありません。
- グローバル市場の規模評価
- 商圏分析
- 人口分布の可視化
- リスク分析(災害・資源)
特にWeb地図の標準である「Webメルカトル」は、操作上の利便性と引き換えに、面積の歪みを内包しています。このような強み・弱みを理解せずにデータ分析を行うと、意思決定を左右する結果に偏りが生じるおそれがあります。
北半球の国々とアフリカ諸国を同一基準で比較する際、メルカトル図法のままではアフリカの潜在能力(ポテンシャル)を過小評価してしまうリスクがあるのです。
図法の違いは、GIS上でも切り替えて確認することが可能です。
SISでの表示例(イコールアース図法)
インフォマティクスのGIS製品「SIS(エスアイエス)」では、表示投影法としてイコールアース図法を選択することができます。

「擬円筒図法」の「Equal Earth」を指定

世界地図をSISで読み込み、人口で色分けをしてイコールアース図法で表示した例
GIS活用で押さえるべき3つの視点
企業が地図上の歪みに起因する判断ミスを避けるためには、次の3点が重要です。
- 図法を理解する:地図は万能ではないことを前提にする
- 目的に応じて使い分ける:ナビゲーションか、可視化か
- 可視化の影響を評価する:見え方が判断に与える影響を意識する
まとめ
トーゴによる国連への提案は、地図上での表現の差異が私たちの認識や判断に大きな影響を及ぼすことを改めて気づかせてくれました。
地図は単なる可視化ツールではなく、世界の捉え方そのものに関わるものです。今回の動きは、私たちが当たり前のように受け入れてきた世界のカタチを再考する、重要なきっかけとなるかもしれません。
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