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共振周波数の公式を求める計算の旅はつづく
10歳で出会った共振周波数の公式。16歳で三角関数と微分積分により解決をみました。しかし、これは終わりではなく始まりでした。20歳で虚数が交流回路の計算に役立つことを理解しはじめます。
前回はその計算の風景を紹介しました。はたしてリアクタンス、インピーダンスといったエレクトロニクスの用語のオンパレード。今回は物理学からのアプローチからはじめてみます。
ニュートンの運動方程式
ばねに質量mのおもりがついているとします。
つり合いの位置を原点としてばねの振動方向にx軸をとります。おもりを下に引いて放すとおもりは単振動します。このような状況を力学的に記述するのがニュートンの運動方程式です。
質量mの物体に働く力Fは、質量mと加速度に比例する、というのがニュートンの運動方程式です。ここで加速度は物体の位置xの2階微分により定義される量です。
位置の2階微分が加速度
加速度を理解するには自動車が好都合です。
アクセルを踏むとエンジン内にガソリンが吹き込まれ燃焼(爆発)が起き、それがタイヤに伝わり車は動き出します。車の速度は0から次第に大きくなります。これが加速です。力が加わることで加速が生じることがわかります。
速度がどんどん大きく(小さく)なるとは、速度の“勢い”すなわち微分がプラス(マイナス)であることを表します。これが「加速度は速度の微分」という意味です。
そして、速度は位置の“勢い”すなわち微分です。速いとは、あっという間に位置が大きくなるということです。
したがって、位置の微分が速度、速度の微分が加速度なので、位置を2階(2回)微分したのが加速度ということになります。位置の2階(2回)微分が加速度です。
ばねに働く力|フックの法則
ばねに働く力を考えてみます。
つり合いの位置からの伸び(長さ)に比例して大きな力が働きます。これは発見者ロバート・フック(1635-1703)にちなんでフックの法則と呼ばれます。
これでおもりに働く運動方程式を立てる準備ができました。おもりに働く加速度をαとすれば、mα=-kxと表されます。左辺がフックの法則による力を表し、kはばね定数と呼ばれます。
マイナスがつくのは、ばねを引っ張る向きと逆向きにフックの法則による力が働くためです。
LC共振回路
コイル(インダクタンスL)とコンデンサー(容量C)だけで構成される電気回路がLC回路です。最初にコンデンサーCに電荷Q₀を与えると、コンデンサーには電圧Q/Cが発生し、回路に電流が流れます。
コイルに電流が流れると、電流の向きとは反対向きに起電力が生じます。これをコイルの自己誘導起電力といい、電流をIとすればその大きさはLdI/dtと表されます。
するとキルヒホッフの法則により、Q/C- LdI/dt=0 が成り立ちます。コンデンサーにおいて電荷Qと電流Iの関係がI=-dQ/dt であることから最初の関係式は電荷Qについての微分方程式で表されます(図青矢印の右の式)。
2階線形常微分方程式
こうしてばねの単振動とLC回路において成り立つ微分方程式がわかります。この2つの微分方程式は変数や係数が違っても同じ形をしています。2階線形常微分方程式と呼ばれるものです(図中央)。
この2階線形常微分方程式の解は三角関数を用いて表されることがわかっています。単振動が三角関数で表されることは至って自然です。
共振周波数
はたして即座に単振動およびLC回路の微分方程式の解が得られます。いったん、角振動数ωがわかり、ω=2πfの関係から周波数fを表す関係式(共振周波数の公式)が導かれます。
こうしてLC回路には周波数fの交流電流が流れることが説明されます。LC回路はLC共振回路とも呼ばれ、fは共振周波数と呼ばれます。
ばねの単振動は力学的エネルギー(運動エネルギーと位置エネルギー)、LC共振回路では電気エネルギーの振動として説明されます。