2³(2の3乗)は2×2×2のことで8であることが分かりやすいのに対して、2⁰が1であることはイマイチピンときません。その理由を解説していきます。計算についての説明の前に、何乗の計算にまつわる用語の説明をしておきます。
目次
冪・冪乗・累乗・指数・底
四則演算であるたし算(加法)、ひき算(減法)、かけ算(乗法)、割り算(除法)の計算結果がそれぞれ和、差、積、商です。abの計算結果を冪(べき)、abの演算を冪乗またはべき乗と呼びます。
冪(べき)とは、おおい隠すことです。冪=冖(べき)+幕ですが、「冖」は布で物を覆うこと、「幕」でおおい隠すことを示しています。略字として「巾」と書くこともあります。
累とは、かさねることです。累乗は「かさねた乗算」の意味です。わが国の教科書では累乗が使われています。冪は常用漢字・当用漢字には含まれていません。そこで代わりに使われることになったのが平仮名の「べき」と「累」です。
もともとの冪と後から使われることになる累ですが、使い方に違いがあります。指数が自然数の場合の冪乗を累乗と区別する使い方もありますが、冪乗・べき乗・累乗はほとんど同じ意味で使われます。
演算結果は冪であり、累ではありません。また、冪級数・巾級数という数学用語はありますが、累級数とはいいません。
なぜaの0乗は1なのか?
説明その1|aが自然数の場合
下の図のようにaが1、2、3についてa³、a²、a¹そしてa⁰と順に見ていくと、1⁰、2⁰、3⁰が1であることがわかります。a=1の場合は3乗、2乗、1乗が1になるので0乗も1と考えることができます。
aが2の場合には指数が3から2、2から1と1小さくなると冪は「÷2」で小さくなります。したがって、指数が1から0に小さくなるときも同じように「÷2」となると考えると2の0乗は1と考えることができます。
aが1より小さい場合でもこれと同じように説明できて、(1/2)⁰=1、(1/3)⁰=1となります。したがって、aが自然数と1/自然数の場合にa⁰=1が説明できます。
説明その2|aがe(=2.718…)の場合
aがネイピア数eの場合はオイラーの公式によって0乗が1であることを説明できます。オイラーの公式は、指数関数と三角関数が虚数の関係を表したものです。指数関数の底、ネイピア数eとは微分積分にとって欠かすことができない数です。
ネイピア数eは円周率π(=3.14…)と並んで重要な数学定数です。その値もπに近く、2.718281828459045…で、無理数であることもπと同じです。
この公式のxに0を代入してみます。左辺はe⁰、右辺はcos 0=1、sin 0=0となりe⁰=1が導かれます。
説明その3|指数法則による説明
実はaは自然数、1/自然数だけでなく、すべての正の実数aに対してa⁰=1であることが、指数法則から説明できます。指数法則とは次のような計算です。
2³×2⁴=(2×2×2)×(2×2×2×2)=23+4=2⁷
図のように指数法則において、y=0とするとa⁰=1が導かれます。
後編に続きます。