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テクノロジーを活用した空き家対策|空き家問題の解決を支援する国や自治体の取組事例

少子高齢化が進む日本ではさまざまな問題が発生しているが、近年その中の一つとして注目されているのが空き家の増加だ。

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空き家問題の現状

5年に一度実施される総務省の「住宅・土地統計調査」(2018年)によると、2018年までの20年間で空き家の総数は576万戸から849万戸と約1.5倍に増加。そのうち長期不在の住宅(二次利用や賃貸・売却用の住宅を除く)は182万戸から349万戸と約1.9倍に増加している。

このような長期不在住宅の全国平均は5.6%で、10%を超える都道府県は10年間で0から6自治体へと増加している。その多くは一戸建てで、新耐震基準以前に建設された家屋が多いという。

国土交通省は、長期不在の住宅は2025年には420万戸、2030年には470万戸にもなると推計しており、再利用化や管理不全の空き家を減らすことで2030年時点で約400万戸までに抑えることを目指している。

空き家数の推移(国土交通省による資料)
出典:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001518774.pdf

空き家問題の原因

国土交通省の「令和元年空き家所有者実態調査」によると、空き家の取得経緯は相続が55%で、所有者の約3割が遠隔地に居住している。

空き家にしておく理由としては「物置として必要」が60.3%と最も多く、続いて「解体費用をかけたくない」が46.9%、「更地にしても使い道がない」が36.7%となっている。

「住宅の質の古さ(古い・狭いなど)」(33.2%)、「好きなときに利用や処分ができなくなる」(33.8%)など売却・賃貸しない理由も見られた。

空き家を売却・賃貸する上での課題は、「買い手・借り手の少なさ」(42.3%)が最も多く、続いて「住宅の傷み」(30.5%)、「設備や建具の古さ」(26.9%)という結果となった。

これらの調査結果から、相続で家屋を得たものの、解体コストや設備の老朽化により売却・賃貸が難しい人が多い現状が見えてくる。

空き家の管理面での心配事としては、「住宅の腐朽・破損の進行」(58.0%)が最も多く、続いて「樹木・雑草の繁茂(41.9%)、「不審者の侵入や放火」(32.1%)という結果となっている。

自治体による取り組み事例

長期間放置された空き家には倒壊や不審火、不審者の侵入などの危険性があり、景観にも悪影響を及ぼすことから、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、「空家法」という。)が施行された。

空家法により、景観を損なっている空き家や倒壊の恐れがある空き家に自治体が立ち入り調査や勧告、撤去命令を行うことが可能になった。

国土交通省の発表によると、空家法に基づく助言・指導や勧告、命令、行政代執行、略式代執行などの措置が講じられた件数は、2022年度末までに合計4万1476件となっている。

自治体の取り組みについては、全国1741市区町村のうち1450市区町村で空き家対策に関する計画が策定されており、992市区町村で法定協議会が設置されている。

空家法施行(2015年)から2022年度末までに、空家法に基づく措置や市区町村による空き家対策により、16万8198件の管理不全の空き家の除却や修繕が進んでいる。

自治体による空き家対策事例としては、以下のような取り組みが挙げられる。

  • 対策に取り組む地域団体に専門家の紹介や活動補助を実施
  • 貸したい人と借りたい人のマッチングを図る「空き家バンク」制度を設置
  • 空き家除却跡地の固定資産税を減免
  • 自治会による空き家の見守り活動の支援
  • 調査結果や相談内容をGIS(地理情報システム)で管理して対策検討に活用

国土交通省「空き家・空き地バンク総合情報ページ」
出典:https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000131.html

空家法の改正により固定資産税の減額優遇措置が解除

2023年6月、空家法の改正が参議院本会議で可決・成立した。改正による「管理不全空き家」新設により、「特定空き家」でない空き家に対しても、法令上、行政の介入が可能になる。改正により、自治体は固定資産税の減額優遇措置の対象だった空き家を対象外とする措置を講じることができるようになる。

  • 特定空き家
    倒壊の危険性が高い、衛生上の問題が大きい、景観を損なっているなど近隣に影響を及ぼし早急な措置が必要な空家のこと。
  • 管理不全空き家
    放置すれば「特定空き家」になるおそれがある空き家のこと。壁や窓の一部が割れたり雑草が生い茂ったりしている住宅を指す。

出典:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000138.html

デジタル田園都市国家構想

空き家対策は、政府が推進する「デジタル田園都市国家構想」でも課題として盛り込まれており、総合戦略の中では中山間地域への支援策として、国土交通省による「空き家対策モデル事業」が挙げられている。

国土交通省の空き家対策モデル事業は、NPOや民間事業者の創意工夫によるモデル性の高い空き家の活用に関わる調査・検討や回収・除却工事に対して支援するものである。

2023年度は、ソフト提案部門(調査検討や普及啓発などソフト的な取り組みを評価・支援)とハード提案部門(空き家の改修・除却工事など技術や工法について評価・支援)の2部門の募集を行った。

今後、少子高齢化が加速する中、空き家問題は自治体だけの力で対策を講じるのは難しく、民間企業やNPO法人などさまざまな組織・団体と地域住民が協力しながら取り組んでいくことが求められている。

参考:国土交通省 住宅局「空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001518774.pdf

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片岡義明(かたおかよしあき)様

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」、「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。

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