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自然災害に備えるIT防災の最前線|取り組み事例を紹介

今年の夏は大雨や台風による水害が全国各地で発生し、河川増水や氾濫、土砂災害、浸水など多大な被害が起きた。

これから10月の台風シーズンを迎えるにあたって、気象情報の入手先を確認したり、ハザードマップなどで避難場所を確認したりするなど、日頃から十分な備えをしておくことが求められる。

一方、今年は1923年9月1日に起きた関東大震災から100年。自治体ウェブサイトやメディアでは当時を振り返る特集が報じられ、改めて地震への備えを呼びかけている。

そこで今回は、水害対策・地震対策の実証実験や新サービス・新機能など防災関連の最新情報をお伝えする。

大雨災害発生時の罹災証明発行の時間短縮、自治体業務の効率化に

株式会社Specteeと一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)は6月、衛星データとSNSから得られる災害時の浸水情報を空間IDで管理し、3次元表示するシステムの実証結果を公開した。

近年、河川氾濫などの被害が繰り返し発生する中、自治体側の対策として、より高度な情報管理とこれまで蓄積した情報を利用した備えが重要視されている。

同システムは衛星データやSNSから得られた浸水情報を地形や建物と組み合わせて3D化するシステムで、被災時の街の浸水状況を再現できる。

浸水情報は空間ID単位で管理・ベクトルタイル化しており、国土交通省が推進する3D都市モデルプロジェクト「PLATEAU(プラトー)」の建物情報と組み合わせて3D表示することで、どの建物が何センチ程度浸水しているのかを把握できる。

空間IDとは、3次元空間における位置を一意に特定するための仕組みである。「ボクセル」と呼ばれる格子単位で分け、それぞれにIDを付与して3次元空間情報の基盤として活用することを目指している。

実証にあたっては、佐賀県庁の協力のもと、六角川流域市町を対象地域として2019年8月豪雨に伴う衛星データとSNS情報を重畳したシステム画面を示した。

この豪雨の際に国土交通省が公開した有明海沿岸道路の武雄北方インターチェンジの浸水被害の写真と比較すると、被害状況を高い精度で再現できることがわかる。

(出典:https://spectee.co.jp/pr20230608/)

線状降水帯発生による豪雨への警戒を高め、早めの防災行動への注意喚起に

ヤフー株式会社は今夏「Yahoo!天気」「Yahoo!天気・災害」の「雨雲レーダー」に線状降水帯の有無や推移を表示する機能を追加した。

線状降水帯は、次々と発生した積乱雲が線状に列をなして並び、数時間同じ場所を通過または停滞することで広い範囲に集中豪雨をもたらす現象である。

近年、線状降水帯による河川の氾濫や土砂災害が全国各地で発生し、甚大な被害をもたらしている。発生頻度も増加傾向にあり、線状降水帯発生による豪雨への備えが求められている。

今回の追加機能は、気象庁の発表データに基づき、線状降水帯が発生すると降水域を「雨雲レーダー」に楕円で表示。1時間前から最大30分先まで10分間隔で発生の有無と推移を確認できる。早めの防災行動を促すため、線状降水帯の発生中は画面上に注意喚起のメッセージが表示される。

気象庁は大学や研究機関と連携して線状降水帯の予測精度向上の研究や技術開発を進めており、2023年3月には従来の約2倍の計算能力をもつ「線状降水帯予測スーパーコンピュータ」を導入。数値予報モデルを改良するとともに、アメダス湿度計や船舶による水蒸気観測などのデータの利用も拡充した。

今後は線状降水帯予測スーパーコンピュータを利用することで2023年度末には水平解像度2kmの数値予報モデルの予報時間延長(10時間⇒18時間)、2025年度末には高解像度化を目指して数値予報モデルの開発を進めていく方針である。

線状降水帯に関する研究開発の成果が天気予報アプリにも反映されることが期待される。

(出典:https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2023/08/28a/)

急な集中豪雨時の安全な運転のために

株式会社ナビタイムジャパンはカーナビアプリ「カーナビタイム」にて、新機能「冠水注意地点回避ルート」の提供を開始。突然の集中豪雨時での、より安全な運転をサポートする。

同機能は、ルート上にある全国約3,600カ所の冠水注意地点にて、1時間に30㎜以上の降雨量が予想される場合、ルート検索時に「冠水注意地点回避ルート」を提案する。ルート上に複数の冠水注意地点がある場合は、一律ですべてを回避するルートが表示される。

走行中は5分ごとに降雨量を確認し、走行開始時に雨が降っていなくても走行中にルート上で大雨が予想される場合は、ナビゲーション中に冠水注意地点回避ルートを提案する。

同社はこれまでもハザードマップ上で冠水注意地点をアイコンで確認できる機能や、ナビゲーション中、ルート上に冠水注意地点がある場合、音声とアイコンで注意喚起する機能を提供していた。

今回の対応により、事前の確認や通行前の注意喚起だけでなく、あらかじめ冠水注意地点を回避することが可能となった。

(出典:https://corporate.navitime.co.jp/topics/pr/202309/06_5646.html)

地震への備えに向けた意識啓発に

株式会社ウェザーニューズは8月29日、天気予報アプリ「ウェザーニュース」にて新機能「大地震の発生率」を提供した。

同機能では、防災科学技術研究所 地震ハザードステーション「J-SHIS」が公開している「確率論的地震動予測地図」をもとに、ユーザーの現在地と任意の地点において、今後30年以内に震度6強以上の地震が発生する確率を診断できる。

診断結果ページでは確率に応じて以下の5段階でマップを色分けする。

  • 0.1%未満
  • 0.1~3%
  • 3~6%
  • 6~26%
  • 26%以上

マップは250m四方の高解像度データで表示するため、大地震の恐れがある地域をピンポイントでチェックできる。

(出典:https://jp.weathernews.com/news/44608/)

関東大震災から100年|省庁・自治体の防災への取り組み

今年は1923年(大正12年)に発生した関東大震災から100年の節目に当たる年ということで、様々な省庁や自治体が防災への取り組みを発表している。

「関東大震災100年」特設ページ|内閣府

「防災情報のページ」に開設されたコーナーで、関東大震災に関する様々な資料や記事を掲載する「資料で学ぶ関東大震災」や関連行事の案内、2023年版防災白書の特集、コラボレーション事業の案内を掲載している。

https://www.bousai.go.jp/kantou100/index.html

関東大震災特設サイト|国土交通省 関東地方測量部

シンポジウムや企画展、ツアーの紹介や、全国地方新聞社連合会による自主企画「報道紙面から関東大震災の実態を伺い知る」などを紹介している。

https://www.unei-jimukyoku.jp/kantoushinsai100/

国土交通省 関東地方測量部「関東大震災特設サイト」
(出典:https://www.unei-jimukyoku.jp/kantoushinsai100/)

関東大震災特設ページ|国土地理院

古地図コレクション(関東大震災関連)ページへのリンクや、「地図と測量の科学館」にて開催した企画展の紹介などを掲載している。

https://www.gsi.go.jp/kohokocho/kohokocho45115.html

関東大震災から100年 特設サイト|気象庁

関東大震災の概要説明や観測データ・解析結果、波形記録や被害写真、関東大震災以降の地震津波業務の変遷、関東地方で起きる地震の特徴、地震・津波に備えるための知識、イベント情報などを掲載している。

https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/1923_09_01_kantoujishin/index.html

東京都防災ホームページ

関東大震災に関連したイベントやセミナーの情報、東京都の危機管理体制や地震対策、地震被害想定、震災復興、出火防止対策について紹介している。

https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/taisaku/1022852/index.html

※本記事で紹介したソリューションに関する詳細は、提供会社様あてにお問い合わせください。

 

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片岡義明(かたおかよしあき)様

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」、「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。

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