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AIを活用して浸水想定図を3Dマップ化|SNSの投稿写真1枚からでも浸水範囲を再現可能

5月 31, 2021

台風や集中豪雨などにより、各地で河川の氾濫や都市の浸水などの水災害が頻発している。

このような中、自治体などでは水害発生時に、その被害範囲をできるだけ早く知りたいというニーズが高まっている。

AIを活用した防災・危機管理ソリューションを自治体向けに提供する株式会社Spectee(スペクティ)は5月17日、水害発生時の浸水範囲をリアルタイムに3Dマップ上に再現することに成功したと発表した。

今回はこの最新技術について、同社のCEOを務める代表取締役CEOの村上建治郎氏に話をうかがった。

リアルタイムに浸水深を推定することで迅速な災害対応を支援

今回スペクティが開発した技術は、災害発生時からほぼリアルタイムに浸水範囲と浸水深を3Dマップ上に再現するというもので、被害状況を視覚的にわかりやすく再現することにより、災害対応計画の迅速な策定を支援する。

同技術を開発した理由について村上氏は以下のように語る。

「浸水深を推定するソリューションは他社でも提供していますが、被害が発生してから時間が経過したあとに被害状況を分析するというものが多く、現在起きている災害に対応するのは難しいです。

それに対して当社では、発生直後から被災現場でどのように対応するかを決めるために、リアルタイムに被害状況を可視化する必要があると考えました」(村上氏)

スペクティが提供する、AIを活用した防災・危機管理ソリューション「Spectee Pro」は、SNS投稿や河川・道路のライブカメラなどの情報をリアルタイムに解析・配信することで災害状況を知らせるソリューションで、全都道府県の7割近くに導入されているという。

今回の3Dマップ化の技術は、これまでSpectee Proなどで培ったSNS投稿を解析する技術を活用している。

浸水想定図を3Dマップで表現することの意義について、村上氏は「現場で細かい住宅の戸数などを確認するのであれば平面の地図のほうが見やすいとは思いますが、地形全体を見て総合的に今後の予測を立てるには3Dマップのほうが適しています。

また、一般の方に危険度を知らせる場合にも、3Dマップのほうが感覚的にわかりやすいので、2Dと3Dでうまく使い分けることが大切です」と語る。

熊本県球磨川周辺の浸水推定図

 

代表取締役CEOの村上建治郎氏

SNS投稿画像に地形データや降水量データを組み合わせて推定

3Dマップ化に必要な素材は以下の4つ。

  • SNSに投稿された画像
  • 降水量データ
  • 降雨地の地形データ
  • 過去の水害データ

まずはSNSに投稿された画像を使用して、たとえば建物が水に浸かっている写真があれば、投稿された位置情報をもとにどの場所がどれくらいの浸水深なのかを推定する。

次に、推定した1地点の浸水深をもとに、周囲の地形データと降水量などを掛け合わせることで、投稿された位置から約10km四方の浸水状況を推定する。

「推定のもとになるSNSの投稿写真は、色々な地点で撮影された写真が複数枚あれば、より精度は高くなりますが、この技術で重要なのはリアルタイムであることです。

写真が複数枚溜まるまで待っていたら時間がどんどん過ぎてしまうので、1枚でも投稿されたらとにかく速やかに3Dマップを作成し、その後は新たに投稿される写真が追加されたら、それを加味した浸水深に随時更新することで、時間の経過とともに精度が高くなっていくシステムになっています」(村上氏)

村上氏によると、3Dマップ化にかかる時間は数分か、長くても約10分以内とのこと。

SNS画像だけでなく、河川やダムなどに設置された定点カメラの映像をもとに3Dマップを作成することも可能で、その場合は浸水していない平常時の画像と比較できるため、より精度が高まるという。

熊本県球磨川周辺の浸水推定図を作成

今回スペクティが発表した3Dマップは、2020年7月に熊本県球磨川周辺で起きた豪雨による水害の浸水推定図で、前述したようにSNSに投稿された1枚の画像をもとに、降水量データや地形データと組み合わせて作成した。

この3Dマップを国土地理院が災害発生後に発表した浸水推定図と比較検証したところ、素材として使ったSNSの画像が投稿された地点の周辺については、かなり正確性が高いことが確認できたという。

同社はこれからの夏場の出水期に向けて、今回の技術の実証実験を行っていく予定で、実用化は2022年の出水期を目指している。

提供の仕方としては、AI防災・危機管理ソリューション「Spectee Pro」の一機能として提供するほか、同技術のみを提供し、ほかの防災情報システムと連携させることも可能だという。

今後は上空から被害状況を俯瞰できる衛星データなども加味して浸水想定図の補正に使用するなど、さまざまな面で精度やリアルタイム性の向上を図っていく方針だ。

また、今回開発した技術を応用して、水災害だけでなく、雪国において大雪時の交通障害が課題となっているため、積雪の状況もリアルタイムに可視化する技術の開発も検討している。

Spectee Pro

防災分野でのデジタルツインの取り組みに注力

2021年3月に国土交通省が日本全国の3D都市モデルの整備プロジェクト「PLATEAU(プラトー)」を公開したことにより、リアル空間の情報を仮想空間で再現する「デジタルツイン」が注目を集めている。

スペクティが今回開発した3Dマップ化の技術も、防災分野でのデジタルツインの事例として大いに注目される。

デジタルツインへの取り組みについて、村上氏は以下のように語る。

「防災分野においては、当社が取り組んでいるSNS投稿のほかにも、IoTなど使用できるデータがどんどん増えている状況です。

このような状況の中、我々は危機管理に関するデータをデジタルツインの中でいかに再現するかという課題に取り組んでおり、今後はPLATEAUで公開されている3D都市モデルデータと組み合わせて都市における浸水深の推定に利用するなど、デジタルツインの取り組みを強化していきたいと思います」(村上氏)

■URL
株式会社Spectee
https://spectee.co.jp/

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片岡義明(かたおかよしあき)様

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」、「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。

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