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道路の思想 - 国道とは|道路の話(2)

あらためて、国道とは

地図を広げてみると、多少のムラはあるものの、国道というものは日本全国ほぼ均質かつ縦横に存在していることが分かる。

どのような道路が国道となるのか、意義や要件については、道路法(注1)という法律に定められている。

国道は「高速自動車国道」「都道府県道」「市町村道」とともに道路法上の4種類の道路のうちの一つであるが、同法第5条(一般国道の意義及びその路線の指定)で次のように定められている(抜粋)。

道路法 第5条(一般国道の意義及びその路線の指定)

現在、日本の国道は1号から507号(59~100号、109~111号、214~216号は欠番)まで459路線が指定されているが、そのすべては上記一号~五号のいずれかに該当するが故に国道に指定されているのである。

思えば、私も昭文社に入るまでは「道路法」という法律の存在すら知らなかったし、国道の指定要件について知る由もなかった。

そんな私が、入社当時配属になった編集部の道路地図担当課長から繰り返し叩き込まれたのは 「道路地図を編集するには、まず道路の思想というものを知らなければならない」ということであった。

すべての道路には起点と終点があること、路線が指定・認定される要件、道路設計思想の概要、その根本に「道路法」という法律があること…。

最初に触れたのが、上記の「国土を縦断し、横断し、又は循環して…」という道路法第五条の一般国道の要件を定めたくだりである。

「国土を縦断し…」なるほどこれは国道1号(起点:東京都中央区、終点:大阪市)のことか!
「(国土を)横断し…」なるほどこれは国道46号(起点:盛岡市、終点:秋田市)のことか!
「(国土)循環して…」なるほどこれは国道16号(起点:横浜市、終点:横浜市)のことか!
「国際戦略港湾と…」なるほどこれは国道174号(起点:神戸港、終点:神戸市中央区)のことか!
「重要な飛行場と…」なるほどこれは国道131号(起点:羽田空港、終点:東京都大田区大森東二丁目)のことか!

それまで漫然と眺めていた道路地図の着色路線の1本1本が、全く別の見え方をしたことを覚えている。

要件各号は国道指定に必要かつ十分

上記の国道指定の要件各号というのは、国道指定のための十分条件でもあり、必要条件でもあるようだ。

すなわち、ある道路が国道になるためには、上記要件を満たさなければならないと同時に、逆に上記要件を満たす道路については、あまねく国道に指定しなければ「ならない」という含意がある。

国道58号(起点:鹿児島市、終点:那覇市)は、鹿児島市の鹿児島港に数百メートル存在した後、種子島、奄美大島を経て、沖縄本島を縦断して那覇市に至る路線であるが、58号が指定されたのは沖縄返還の年(1972年)であった。

都道府県庁所在地が増えたことで、新たな路線が指定されたのである。

たまには原点に戻って

とかく日々の地図更新に追われていると、道路情報についても膨大な量の走行画像の確認や各道路管理者からの個別情報整理に忙殺されがちである。

そんな時、ふと「国土を縦断し、横断し、又は循環して…」と唱えながらその路線を起点から終点まで思い浮かべ、図上で辿ってみると「全体の中での部分」という視界を回復できると思う。

【参考】
(注1)道路法はこちらのサイトを参照
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=327AC1000000180_20180930_430AC0000000006&openerCode=1#283
(注2)国道16号は起点が横浜市であり、首都圏を循環して、東京湾口を渡り、再び横浜市が終点となる路線である。

 

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飯塚新真(いいづかにいま)様

東京生まれ。1986年、昭文社入社。編集部都市地図課、大阪支社勤務を経て、地図編集部情報課長、SiMAPシステム部長、地図編集部長を歴任。現在、ソリューション営業本部長。

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