こんにちは、インフォマティクスの空間情報クラブ編集部です。
ネクストパブリッシング発刊の地理・GISの専門情報誌「GIS NEXT 第71号」に、弊社代表・齊藤のインタビューが掲載されましたのでご紹介します。
GIS NEXT 第71号では「新たな感染症といかに向き合うか ── GISと空間疫学の課題」を特集企画として、感染源・感染経路を究明し、感染症への効果的な対策を可能にする空間疫学研究の最新動向が紹介されています。
目次
変化の激しい時代の中で、しっかりと存在感を示す製品・サービスを
「未来を創る 空間情報イノベーションカンパニー」をキャッチフレーズにGISソリューションを提供。
1981年の設立からおよそ40年、GISベンダーの雄として、この分野で独自の地位を築いてきた株式会社インフォマティクス。
昨2019年7月、大胆な若返り人事により同社代表取締役社長に就任した齊藤大地氏は、現在41歳。自身のGISへの思い、同社の今後の戦略などについてお話を伺った。[取材・構成/川畑英毅 撮影・大隅孝之]
まずは社長御自身の簡単なご経歴と、空間情報とのかかわりについて伺いたいと思います。
齊藤社長:私は茨城県土浦市の出身。高校は文系だったのですが、その頃から「地理を学びたい」という思いがあり、名古屋大学の文学部地理学教室に進み、大学院まで学びました。
もともと地理という学問自体範囲が学際的なせいもあるのでしょうが、国立大学の場合、地理学の専攻所属は東日本では理学部(理系)、西日本では文学部(文系)と分かれています。いわば「文系として地理を学べる国立大学の東端」が名古屋大学だったというわけです。
とにかく地理学を学びたい一心で進学先を選んだのです。名前も「大地」ですしね。そこでGISとも出会い、卒業後は専門を活かせるようにと考えて、当社に就職しました。
入社後の1年間は名古屋営業所でSEとして勤務し、当社GISのイロハやシステム開発における要件定義、設計の手法など、「モノづくりの基本」について学ぶことができました。
2年目以降は営業部門に移りましたが、SEの経験が大きく役立ちました。営業としては、主に公共分野の担当として長く携わってきました。
途中、本社への異動もありましたが、在籍16年のうち、15年が営業畑ということになります。
2012年にマネージャ、2017年に執行役員の任を預かり、そして2019年7月1日、代表取締役社長に就任しました。
「技術を追求」「自主性を尊ぶ」社風をよりよく引き継ぐ
マネージャーに就任されたのも当時最年少だったと伺いましたが、それにしても40歳(当時)での社長就任は大胆な人事という印象です。
齊藤社長:いや、私としても青天の霹靂でした。三原正一・前社長(現・取締役会長)から「次はお前だ」と言われた時には、反射的に「勘弁してください」と言ったくらいです(笑)。
ただ、インフォマティクスの持つ雰囲気はとても好きで、この風土・文化が続いていってほしいとは思っていて、であるなら、そう思える自分が担ってもいいんじゃないかと。そんなふうに思い直して、社長就任の話を受けることにしたのです。
これまでの二代の社長と違うところと言えば、彼らは建築/CADの出身ですが、私は地理の出身ですから、学生時代の先輩後輩など、よりGISに近しい人たちとのつながりもあります。
そうしたところでも、新しい強みのようなものを出していければ良いなと考えています。
御自身が大事に思っているインフォマティクスの文化含め、齊藤社長から見て「インフォマティクスとは、いかなる会社なのか」という点について伺えますか。
齊藤社長:インフォマティクスという社名自体が、「情報を科学する」という意味を持つ言葉です。その名の通り、まず第一は、「技術に依拠する会社である」ということですね。
創業者の長島雅則(現:取締役ファウンダー)が自身でCADを開発するところからスタートして、それからずっと技術を追求する姿勢を、会社としても貫いてきました。
ひと口にGIS業界といってもさまざまですが、特に大手では航測事業をベースに発展してきた会社が多いなかで、当社はコンピュータ技術に特化してきた、というのが大きな特色だろうと思います。
もう一つは、自由で風通しのいい社風でしょうか。上下関係でガチガチに縛られるような組織ではなく、比較的言いたいことは言えるし、やりたいこともやれる。そんな心地よさがあります。
上意下達というよりは、現場の人たちの自主性が重んじられるところが、この会社のよい部分だと思っています。
私が社長に就任して、新たに始めたことのひとつに「コーヒーブレイク・ミーティング」があります。
同じ年齢層の社員を5~6人集め、彼らとお菓子をつまんでコーヒーを飲みつつ2時間ほどおしゃべりするのですが、そうすると「実は僕はこういうふうにしたほうがいいと思っているんですが」などと、結構いろいろな意見が出てくる。
私にとっては、社員が普段どんなことを考えているのか、特に若手や中途入社の社員の意見を知る貴重な機会として役立ちます。
社員にとっても、同世代の社員がどんな問題意識を持って仕事に取り組んでいるのかを知ることができ、刺激になっているようです。
現在はおおよそ2週に一度くらいのペースで開催していますが、社員を一巡するまでは続けようと思っています。
「GISが身近になった時代」に即した新たなソリューションを
そのような会社の経営を引き継いで、どんな点は継承し、どこは変えていかなければならないと考えているのか。ご自身の役割についてどう捉えていらっしゃいますか。
齊藤社長:当然ながら、先述の技術追求の姿勢、自由と自主性を重んじる社風は受け継いでいきたいと思っています。
大事なのは、「インフォマティクスの旗を降ろさない」ことだと自分では思っています。
これは決して「守りの姿勢に入る」ということではありません。幸い、今は経営基盤がしっかりしているので、短期的なスパンで落ち込むことは考えづらいのですが、それでも将来がどうなっていくかはわからない。
実際に、時代が変わってきている感じはあります。例えば5Gの登場など通信環境は大きく改善されますし、システム利用環境についてもタブレットやスマートフォンが主流になるなど、大きな潮流の変化があります。
我々も新たな製品やサービスを模索しなければいけない時期に来ているのは間違いありません。
「インフォマティクスの旗を降ろさない」というのは、時代に合わせて、しっかりと存在感を示していく、ということでもあるのですね。
齊藤社長:当社は設立から十数年間は、「建築・土木CAD」のライセンス販売と設計図面作成支援を中心に事業展開を行っていました。これが当社の第一期です。
第二期は空間情報に特化したソフトウェア会社として、「PC版空間情報システム」のライセンス販売とアプリケーション開発サービスを展開。
そして2010年以降は第三期として、デスクトップ型だけでなくクラウド環境やモバイル環境にも対応し、広範囲なアプリケーションの開発・提供を行う「総合的な空間情報ソリューションカンパニー」としての活動を広げています。
こうしたビジネス展開のなかで、特に当社は人々の「安全・安心」を担う公共分野に強みを持ってきたわけですが、ここはさらに深く耕していきたいと考えています。
従来の事業からの繋がりという点では、創業以来、多少の浮き沈みはあったものの、一貫してCADを続けてきたことが、今、1/1の実寸で図面を投影できる「GyroEye(ジャイロアイ)」という新商品の展開に繋がっています。将来的には、GISと何らかの形でリンクできれば、さらに面白いのではと思っています。
そしてもうひとつは、新たなサービスの立ち上げです。かつてGoogle Mapsが登場したとき、日本のGIS業界では、「黒船の襲来」と危機感を覚え、騒ぐ声が多く聞かれました。しかし実際には、むしろ日本の社会のなかでのGISリテラシーを定着させ、またGISニーズを掘り起こし、プラスに働いた面が大きかったのではと思います。
今や一般の人たちにとっても、スマートフォンで自分の位置を確認し、関連して必要な情報を検索することが当たり前になりましたよね。ユーザーの裾野が広がったという点でも非常に良かった。
一方で、Google Mapsは「素早く地図を見せる」「検索する」ことに特化しているので、「それ以上のことをしたい」と感じた場合には、我々GISベンダーの出番ということになります。
そうしたニーズに対応しうるサービスを立ち上げていければいいな、と思っているのです。
従来は活用できていなかったデータが新たな展開を生む
GISが日常のなかに入ってきたことで、ユーザー側の意識も変わってきましたね。
齊藤社長:そうです。今までGISというと、背景地図の上に自分のコンテンツを載せて、ある種定型的な機能を使って分析していくものでした。
実際、私が営業を始めた頃は、お客様がお持ちの情報を地図上に取り込み、表現して見せるだけで感心してもらえた。
今日ではもうそういったことは当たり前になっていて、GISを使って具体的に、何をどれくらい改善してくれるのか、という期待感は強く感じるようになっています。
先のGoogle Mapsの話にも関わりますが、今までは地図にあまり興味がなかったり、関連性が薄いと思ってきた会社や部署でも、地図を使ってどうにかならないかと普通に考え、また実際に声を掛けていただくことも増えてきています。
IT の世界では、ビッグデータの活用、ネット上に流れるさまざまな漠然とした情報のサルベージなども進んでいますね。
齊藤社長:そうしたデータがらみの部分が、3つ目の展開です。
情報の取得・流通の技術の発展により、情報自体はいろいろなところに溢れています。
従来であれば地図になるとは思ってもいないデータソースから地図化してみるとか、既存のデータをさらに深掘りしてみるとか、あるいはそもそも漠然とした情報の流れの中からデータ化そのものを試みるとか——。さまざまな新しい取り組みが考えられると思います。
AIや機械化学習といったテーマには、我々も現在取り組んでいますし、具体的には、平文のデータから位置情報を読み取り、GIS化する試みを始めています。
現時点ではまだアドレスマッチングに近いレベルのものですが、行く行くは面白い物に成り得るのではと思っています。
GIS業界のなかでも、航測系の会社さんの場合は、航空機を飛ばしてデータを取得し地図化するのが強みです。
それは当然我々には持ちえないところですが、逆に我が社は特定のデータに縛られず、システム側からの自由なアプローチが可能です。これを強みとして、今後さらに伸ばしていきたいと考えているのです。
一方で、これはGISに限った話ではありませんが、今日、一つの会社だけで物事が完結するということはなくなってきていますよね。データ取得デバイスに関しても、IoTや5Gの発展によって大きく利便性が増しています。
そうした専門を持つ会社と連携することで、今まではあまりGISと親和性が高くないと思われていたものが取得できたり、表現できたりといった可能性も、大きく広がってきたと思います。
また、実際に新たなサービスを展開することで、思いがけないユーザー様が思いがけない使い方をされる。そんな化学反応にも期待しています。
今後がますます楽しみですね。どうもありがとうございました。
社長プロフィール
さいとう だいち
1979年生まれ。茨城県土浦市出身。
2002年名古屋大学卒、2004年名古屋大学大学院修了、 2004年株式会社インフォマティクス入社。2019年7月1日、代表取締役社長に就任。
関連リンク
株式会社インフォマティクス
新型コロナウイルス感染症 国内状況サイト
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、インフォマティクスでは自社製GISを利用して関連情報を地図上に可視化した専用サイトを、4月1日から公開している。 https://www.informatix.co.jp/covid-19/index.html(注:2023/6/14をもってサイト公開を終了)
本記事はネクストパブリッシングの許可を得て、2020年4月28日発刊 GIS NEXT 第71号「トレンドインタビュー」の内容を全文掲載したものです。