地図表示機能や測位機能を搭載したさまざまなデバイスの概要や現状について紹介するこの連載、第5回となる今回は“クラウドトラッキング”と呼ばれる技術を活用した「Bluetooth紛失防止タグ」について紹介する。
目次
紛失防止タグ
「GPSトラッカー」は、衛星測位によって得られた位置情報を、携帯電話回線などを使ってクラウドへ送信する機器だが、GPSは消費電力が大きく、サイズもかさばるため、財布などの小物に常時付けておくのは難しい。
そこで役に立つのが、Bluetooth Low Energy(BLE)による通信が可能な「紛失防止タグ」と呼ばれる製品だ。
スマートタグが置き忘れや失くし物の場所を検知
これらのタグは、iPhoneやAndroidスマートフォンとペアリングさせることにより、タグとスマートフォンが一定距離以上離れた場合にアラートを発することで、置き忘れや置き引きなどを防止できる。
タグを付けた財布などが紛失してしまった場合は、最後に落とした場所を地図上で確認できる。ペットや子どもにタグを付けておけば、はぐれてしまった場所の位置がわかる。
さらに、同じタグの専用アプリをインストールしたスマートフォンを携帯したユーザーが街中で紛失したタグに接近したときに、スマートフォンがそれを検知して、すれ違った地点の位置情報を紛失物の持ち主に知らせる機能もある。
このように、ほかのユーザーが持つスマートデバイスを活用して紛失物や盗難物を見つけ出す技術は“クラウドトラッキング”と呼ばれている。
紛失防止タグは、GPS受信機や携帯電話回線の通信機能を持たないシンプルなデバイスのため、財布などに収納できるくらい小型化・軽量化が可能だ。
消費電力も低いために頻繁に充電する必要もなく、常時携帯するデバイスとしては最適である。中には、ビーコン(発信機)としての機能だけではなく、専用アプリをインストールしたスマートフォンを呼び出して音を鳴らすことができる製品もある。
ただし、上記の通り、紛失物を探すときにはほかのユーザーのスマートフォンを利用するため、GPSトラッカーのように、衛星電波を受信できる場所にあれば確実に紛失物の位置がわかるというわけではない。
紛失防止タグの提供会社は、それぞれ別々の専用アプリを提供しており、そのアプリをインストールしたユーザーが紛失物の近くを通り過ぎない限りは位置情報は送信されないのだ。
人通りの少ない地域では紛失物の発見はあまり期待できないし、多くの人がいる地域であっても、自分が持っているタグの利用者が少なければ、やはり同じことである。
鉄道会社と連携したサービスも登場
このような欠点を補うために、独自の取り組みを行っている会社もある。紛失防止タグ「MAMORIO」を提供するMAMORIO株式会社は、鉄道会社と連携したサービスを2017年春からスタート。
鉄道各線の駅の遺失物センターに、MAMORIOのタグを感知するIoTゲートウェイ「MAMORIO Spot」を設置する「IoTお忘れ物自動通知サービス」を開始した。
これにより、MAMORIOのタグが付いた紛失物がMAMORIO Spotが設定してある遺失物センターに届いた場合は、IoTゲートウェイがタグを検知して落とし主のスマートフォンに通知する。
MAMORIO
最近では駅の遺失物センターだけでなく、サンリオピューロランドや横浜ベイシェラトンホテル&タワーズホテル、東京スカイツリー、パシフィコ横浜など、さまざまな施設にMAMORIO Spotを設置している。
また、同社は9月14日に、法人向け紛失防止サービス「MAMORIO OFFICE Console」も提供開始している。
同サービスでは、所有者が異なる複数のタグや、大量のタグを一元管理することが可能で、各個人が持つ所有物のステータスを一元管理できる「紛失防止モード」と、共有資産が最後にあった場所を確認できる「物品管理モード」のいずれかを利用できる。
これにより、社員が持つPCや入館証、マスターキーや、客先より預かっている資産などの紛失や置き忘れを防止できる。
MAMORIOのBLEタグは35.5×19×3.4mm、重量3gと軽量・コンパクトで、最近では、より小型の「MAMORIO S」や、見守り用の「Me-MAMORIO」、シール形の「MAMORIO FUDA」などタグのラインアップを増やしている。
電池交換ができないため、電池切れの場合は有償の本体交換プログラムが用意されているが、電池交換が可能なタグに比べて、財布の中に入れても気にならない小ささを実現している。
クラウドトラッキングは、まだ十分に世の中に普及してはいないため、紛失物が確実に見つかるわけではないが、GPSトラッカーと比べて安価で、いつでもどこでも持ち運べるというメリットは魅力的だ。
購入する際は、クラウドトラッキングの仕組みをよく理解した上で、自分にとって必要かどうかを判断してほしい。