空間・位置・地理情報を気軽に扱える機器として、現在もっとも普及しているスマートフォンは、用途に応じて色々なアプリをインストールして、地図やカーナビゲーション、GPSロガーとして多彩な使い方ができるのが利点だ。
しかし測位機能を搭載した位置情報デバイスはスマートフォンだけではなく、ほかにも多様な機器がある。
本連載では、地図表示機能や測位機能を搭載したさまざまなデバイスの概要や現状について種類ごとに紹介していきたい。
今回はハンディGPSナビと言われる携帯GPS端末を紹介する。
目次
ハンディGPSナビとは
ハンディGPSナビとは、ディスプレイに表示されたデジタル地図上に現在地を表示できる携帯端末のことである。
移動軌跡を記録する機能や、好みの地点を登録する機能を搭載している。
カーナビのように、歩行者向けに市街地や登山道のルート案内機能を搭載した製品もある。
ハンディGPSナビの種類
ハンディGPSナビには、以下のようにさまざまな種類がある。
- 小型ディスプレイに操作ボタンを搭載しているもの
- 大きなGPSアンテナを搭載しているもの
- スマートフォンのようにタッチ操作のもの
街中での歩行者向けのナビ端末としてはスマートフォンが普及しているため、主に登山などアウトドアで使用されることが多く“トレッキングナビ”とも呼ばれるが、汎用性が高く、自転車やバイクへの車載端末として使っているユーザーもいる。
高精度になり実用性がアップ
ハンディGPSナビのような、カーナビ以外の単体GPS機器が本格的に普及し始めたのは、2000年5月、米国がGPS衛星のデータに故意に誤差を加える「SA(Selective Availability)」を解除してからである。
それまでのGPSは、SAによって誤差がおよそ100m前後に抑えられていた。解除後は誤差数十mと大幅に精度が向上し、DGPS(Differential GPS)の補助がなくても高精度な測位が可能になった。
ハンディGPSナビは一般道路ではなく山道で使用されるため、マップマッチング(地図上の道路の位置に合わせて自己位置を補正する機能)を利用するカーナビゲーションに比べて、より高精度を求められる。
そのため登山で使用されるハンディGPSは、SA解除により実用性が大いに高まった。
ガーミン社ハンデイGPSナビ|主要機種
ハンディGPSナビだけでなく、GPSランニングウォッチやGPSサイクルコンピューターなどの単体GPS機器のメーカーとしては、GARMIN社の存在が大きい。
現在、同社のハンディGPSナビには以下のシリーズがある。
- 小型・軽量の「eTrex」シリーズ
- カメラを搭載した「Oregon」シリーズ
- 大型アンテナを搭載した「GPSMAP」シリーズ など
eTrex 20xJ
画像提供:ガーミンジャパン株式会社
Oregon 750TJ
画像提供:ガーミンジャパン株式会社
GPSMAP 64sc J
画像提供:ガーミンジャパン株式会社
いずれにも共通しているのは、バッテリーに汎用の単三形電池を使用できること。
スマートフォンは専用の充電式リチウムイオンバッテリーを使用しており、バッテリー交換ができないものが多い。
単三乾電池なら、電池切れになっても山小屋で入手できるため、長期の山行にも安心だ。高耐寒性の1.5Vリチウム乾電池を使用すれば冬山登山にも対応できる。
スマートフォンはGPS機能を使うとバッテリー消耗が激しくなるため、山行中はスマートフォンの電源を切ってトレッキングナビを使う人もいる。
スマートフォンに比べて耐衝撃性や防水・防塵性が高いのも利点である。
筆者は過去に何度かGARMIN製ハンディGPSナビを地面に落下させたことがあるが、激しく路面に叩きつけられたにもかかわらず故障しなかった。
過酷な環境で使うことを想定しているため作りは頑丈で耐寒性能も高い。さらに、冬山登山で手袋装着のまま使うことを想定している点も大きい。
スマートフォンの場合、タッチディスプレイに対応した手袋でないと操作できないが、ハンディGPSナビはタッチ式ではなくボタンやレバーで操作するものが多い。
GARMIN製はタッチ式でも手袋のまま操作できる。
過酷なアウトドア環境でもタフで頼れるが
このように単体のGPS機器であるハンディGPSナビは、アウトドア環境においてスマートフォンを上回る性能と使い勝手の良さがある。
最近では、スマートフォンと連携できる製品もあり、ハンディGPSナビで記録したデータをアプリ上で確認したり、現在地をリアルタイムでウェブ公開したりすることもできる。
ハンディGPSナビには、衛星測位によって現在地を地図上で確認できるという、紙の地形図にはない便利な機能がある。
紙の地形図を使いこなすには、等高線を見ながら景色を確認して現在地を推定するなど、地図から情報を読み取る読図技術が不可欠である。
これにはある程度のトレーニングが必要だが、ハンディGPSナビを使えば、読図技術を持たない人でも簡単に現在地を把握できる。
ただし、たとえ頑丈で電池持ちのいいハンディGPSナビといえども、デジタル機器である以上、電池切れや故障が起きる可能性はある。
道迷いや遭難する恐れがある場面でハンディGPSナビを使う際には、いざというときのために紙の地図とコンパスも必携することをお忘れなく。
※本記事に掲載の製品モデルは現在廃盤となっている場合がございます。予めご了承ください。