~北海道 函館編 1970-1973~
中学卒業後、函館で寮生活スタート
15歳の春、北見市役所勤務の父親と2人で初めて函館まで旅をしました。北見と函館は、特急電車で9時間半かかる遠い町でした。その翌日から学生寮に入り、親元を離れた生活がスタートしました。
ちなみに、伊能忠敬が日本全図を作成するための測量の起点として選ばれた函館山には「伊能忠敬 北海道最初の測量地」と記された記念碑があります。
さて、寮から学校に通う日々。
入寮当初、大部屋に並ぶ机と寝室の二段ベッドの数に圧倒されました。スポーツ部の連中が返ってこないうちに、毎日一番風呂に入り、食事を済ませて学習室で過ごしていました。
気晴らしに、よく休憩室で逆立ちをしたものです。ほぼ学校と寮を往復するだけの毎日でした。
時々は、湯川の海岸まで散歩に出かけ、石川啄木の碑を見ながら私もいくつかの歌を詠んだ思い出があります。
東海の 小島の磯の白浜に われ泣きぬれて 蟹とたわむる(石川啄木『一握の砂』)
夜は、部屋からイカ釣り漁船の灯りを見ながら、短歌のような歌を小さなノートに書きためていましたが、何を思っていたのでしょうか。
その習慣をずっと続けていたら、高校の1年後輩の今野敏さんのような超有名な小説家になっていたのでしょうか。
『寮生 一九七一年、函館』(今野敏著/2015年10月 集英社)の中に登場する「美原」は、どうも私がモデルらしい。私は中学時分から坊主頭にしており、その風貌の記載もあります(笑)。
高校生時代、最も自分が変わったのは、親元を離れて暮らしたことで独立心や自立心を持てたこと。
加えて、現代国語の授業で精読したいくつかの小説に大きな影響を受けました。作者の意図、文章の意味を理解する力を身に付け、小説家の持つ力やその背景に強い感銘を受けました。
『こころ』(夏目漱石)
『野火』(大岡正平)
『金閣寺』(三島由紀夫)
『檸檬』(梶井基次郎)
『夜明け前』(島崎藤村)
『ペスト』(カミュ)
それまで本を読む習慣などなく読書感想文の宿題に苦労していた少年が、すっかり文学青年に変わりました。教育の大切さ、教師の偉大さを実感しました。
高校時代は将来進むべき目標を明確に持っていませんでしたが、北見から函館に来たので、本州へ渡りたいという気持ちはありました。
そうして未知の世界を目指し、東京に住む叔父を頼って上京し、見事受験に失敗しました!(posted by Shoichi Mihara)