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消防DX|消防業務におけるデジタル化の取り組み事例や課題を解説

デジタル技術によるビジネスや社会の変革を意味するDX(デジタル・トランスフォーメーション)。

前回はこのDXを地方公共団体において実現する「自治体DX」について紹介した。今回は消防分野におけるデジタル活用の取り組み、「消防DX」について解説する。

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背景

消防分野におけるDXは、2022年6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において「自治体DX」の推進が方針として示されたことを受けた取り組みで、同時期に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針 2022」では「DXの推進などによる消防防災力の拡充・強化」が掲げられている。

消防DXの推進の背景としては、少子高齢化による地方公共団体の人手不足から、以下が課題となっていることが挙げられる。

  • 職員の負担軽減を目的とした業務の効率化
  • 最新のICTに対応したコスト削減や市民サービス向上

「デジタル社会の実現に向けた重点計画」
<出典>https://www.digital.go.jp/policies/priority-policy-program/

消防DXの取り組み例

消防分野での具体的なDX取り組み例としては、以下のような施策が挙げられる。

マイナンバーカードを活用した救急業務の迅速化・円滑化

現状の救急活動では、傷病者情報は主に本人や家族など関係者からの聴き取りで行われているが、病歴や受診した医療機関名を覚えていないケースが多い。診察券やお薬手帳といった情報源も複数存在しているため、検索に時間を要する場合もある。

これに対し、救急現場において傷病者のマイナンバーカードから医療機関名、既往歴、薬剤などの情報を正確かつ迅速に把握することで、本人や家族の負担を軽減するとともに、医療機関と連携してより迅速・円滑な救急活動が実現するかを検証する実証実験が行われている。

(実証実験採択自治体:熊本市消防局、姫路市消防局、前橋市消防局、都城市消防局、彦根市消防本部、加賀市消防本部)

各種書類の申請のオンライン化導入促進

新型コロナウイルス感染拡大防止や電子政府実現、業務効率化などの観点から、消防(火災予防)分野の各種手続における電子申請の導入を促進するため、消防庁では令和3年3月から導入検討会が開催された。

検討会では、マイナポータル・ぴったりサービスを使って電子申請を行う場合の業務フローや標準様式を検討するとともに、消防本部において実証実験が実施され、令和4年には電子申請などの標準モデルの構築が行われた。

消防システムの高度化

119番通報を受けてからの消防指令業務を支援する「消防指令システム」と、消防署所や消防水利の情報をGIS(地理情報システム)などで管理する「消防業務システム」において高度化を図る取り組みが進んでいる。

現状、消防本部ごとに独自システムを導入しているため調達・維持コストが高止まりしていることに加え、外部システムやサービスとの接続が困難になっているという課題がある。

消防指令システム

消防指令システムは2024年度から2026年度にかけてシステム更新(リプレイス)がピークを迎える予定であり、最新のICT環境への対応を迫られている。

消防庁では通信指令業務の標準的な業務フローを整理し、音声電話以外の緊急通報手段やサービスを消防指令システムに接続するための検討を行っている。

これにより、119番通報では音声だけでなく写真や動画、位置情報の活用が可能となるとともに、他の消防本部から通報が転送された場合に位置情報の共有や外部システム(サービス)との接続が容易になる効果が期待できる。

消防業務システム

消防業務システムについても仕様の標準化やクラウド化に向けた分析・整理を開始しており、大規模災害時において国や地方公共団体が被災情報を円滑に収集・共有できる体制の構築を目指している。

課題と展望

以上のように様々な消防DXの取り組みが進められているが、今後はこれまで紙で管理していた情報をいかにデジタル化していくかが課題となる。

例えば、消防水利(消火栓、防火水槽など)に関する位置情報をデジタル地図上で可視化する場合には、膨大な地点を調査して登録する必要があり、多大な時間と手間がかかってしまう。

また、梯子やジャッキ、ロープ、酸素マスクなど多種多様な消防資機材の管理についても、一覧をデジタル化して携帯機器でモバイル端末で在庫管理を行えるようにする必要がある。

消防は人命に関わる分野であるだけに、職員の負担軽減と業務効率化、そして安全性向上につながるDXの取り組みは極めて重要といえる。

そのためにも行政、民間企業、市民がテクノロジーを活用し、平時・発災時に関わらずさまざまな情報を共有でき、通報・申請や消防水利・資機材の管理などを円滑に行えるシステムの構築が求められている。

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<参考>総務省ウェブサイト、消防庁ウェブサイト、デジタル庁ウェブサイト

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片岡義明(かたおかよしあき)様

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」、「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。

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