国土交通省道路局は2022年7月12日、道路データプラットフォーム「xROAD(クロスロード)」の一環として、「全国道路施設点検データベース」の詳細版を有料公開した。※報道発表文はこちら
今回は同省が整備を進めるxROADの詳細と、xROADを支える情報基盤の中で道路施設情報の管理・提供を担う「全国道路施設点検データベース」について紹介する。
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目次
xROADの概要
xROADは国土交通省が構築中の新たなデータプラットフォームであり、デジタル道路地図などを基盤としてさまざまなデータを紐付けることが可能だ。
基盤となるデータは以下のようなものが挙げられる。
- MMS(モービルマッピングシステム)
- LP(航空レーザー測量)
- 道路基盤地図情報
- DRM-DB(全国デジタル道路地図データベース)
- 地理院地図
xROADでは、これらのデータを基盤として3Dプラットフォームを構築。
そのうえで、橋梁・構造物などの諸元データや点検結果、BIM/CIMデータ、そして交通量・工事規制情報などのリアルタイムデータをAPIで連携させる。
これにより、道路管理アプリケーションやヒヤリハットマップ、災害時に通行可能な道路を示すマップの作成など、さまざまな分野への活用を目指している。
さらに、プラットフォームのAPI公開や、一部データの民間開放によるオープンイノベーション促進も目的としている。
「xROAD」の概要 [1]
道路施設の点検データを公開
xROADの一環として整備中なのが「全国道路施設点検データベース」だ。
全国道路施設点検データベースは、道路施設に関するさまざまな情報を集約したデータベース群である。
これまで道路管理者ごとにまちまちに蓄積されてきた定期点検データを一ヶ所に集め、データ活用を促進する環境を構築するのが目的である。
このデータベースを利用することで、道路管理者は独自にデータベースを整備しなくてもデータの閲覧・ダウンロードが可能となるうえ、他の組織が管理する道路施設の点検結果を確認し、さまざまな施策検討の参考にすることもできる。
道路施設関連の研究機関や民間企業による技術開発の促進や、施設維持管理の効率化・高度化も期待できる。
全国道路施設点検データベースの構成
全国道路施設点検データベースは以下で構成されている。
- 基礎データベース
橋梁やトンネルなどの諸元や点検結果などの基礎的なデータが収録されているデータベース - 詳細データベース
より詳細なデータが含まれているデータベース群
基礎データベースは2022年5月に先行して無料公開されていた。2022年7月に新たに公開されたのは詳細データベースで、こちらは有料での提供となる。
対象施設は以下のとおりで、今後さらに増やしていく方針だ。
- 道路橋
- トンネル
- 舗装
- シェッド
- 大型カルバート
- 特定道路/土工構造物
- 横断歩道橋・門型標識等
- 小規模附属物
「全国道路施設点検データベース」の概要 [2]
無料で先行公開された基礎データベース
先行公開されている基礎データベースは、「全国道路施設点検データベース ~ 損傷マップ ~」のウェブサイトで閲覧できる。
地図上でさまざまな施設情報を表示可能なほか、健全性や措置状況による色分け表示や、絞り込み検索ができる。
基礎データベースの内容
- 位置(緯度・経度)
- 路線名
- 管理者名
- 完成年度
- 点検実施年度
- 判定区分
損傷マップの背景地図は地理院タイルで、淡色地図・標準地図・白地図・写真から選択できる。
高速自動車国道、都市高速道路、一般国道(直轄)、一般国道(補助国)、主要地方道(都道府県道・指定市道)など道路種別ごとに色分け表示できるので便利だ。
左メニューから、
- 施設区分(道路橋/シェッド/大型カルバート/横断歩道橋/門型標識等/舗装/特定道路土工構造物)
- 道路管理者区分(高速道路会社/都道府県、政令市、道路公社/市区町村)
- 、その他条件(健全性/措置状況)
などを選択し、上部の「表示」ボタンをクリック(タップ)するとマップに反映される。
「全国道路施設点検データベース~ 損傷マップ ~」[3]
詳細データベースの内容
2022年7月に公開された詳細データベースはウェブブラウザからの閲覧が可能なほか、APIも公開されている。
案内ページから登録すれば利用可能となるので、研究機関や民間企業はこれらのデータを取得し、分析や加工などさまざまな用途に活用できる。
詳細データベースでは、施設の諸元データや点検データ、補修結果の写真・テキストについて、属性や台帳・調書の表示を行える。
詳細データベースの主な内容は以下のとおり。
道路橋データベース
- 上下部構造形式/使用材料
- 径間数、支間長
- 適用示方書
- 部材ごとの損傷の有無、種類、程度
トンネルデータベース
- トンネルの施工法
- トンネル等級
- 土かぶり
- 変状/異常個所数(漏水、外力、劣化)
附属物データベース
- 横断歩道橋の昇降形式
- 標識/照明の支柱形式
- 変状のある部材
- 変状の種類
- 部材単位の評価結果
舗装データベース
- 舗装の種別/構成
- 健全性診断区分
- 点検結果(ひび割れ、IRI等)
- 措置の履歴
土工データベース
- 落石荷重(シェッド)
- 内空幅/高さ(カルバート)
- のり高/小段(土工構造物)
- 変状のある部材
- 変状の種類
なお、前述のとおり詳細データベースの利用は有料だが、道路管理者が自身のデータを利用する場合は無料となる。
「詳細データベース」の内容 [4]
「全国道路施設点検データベース」トップページ [5]
今後の取り組み
xROADは道路システムのDX(デジタルトランスフォーメーション)施策の一環である。
これにより道路損傷の早期発見・修復対応が可能となるほか、施工・維持管理作業の自動化・無人化への貢献も期待できる。
また、道路関連のビッグデータを収集・蓄積し活用することで、さまざまな形で社会に役立つ可能性も秘めている。
今後は交通量などのリアルタイムデータと組み合わせた3Dプラットフォームを構築する方針であり、都市データなど他のデータとの連携による多様な利用法が模索されている。
自動運転車など次世代交通システムの基盤として活用するだけでなく、民間企業によるマーケティングへの活用など、道路管理を超えた幅広い活用が期待される。
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※本記事で紹介したxROADに関する詳細は、国土交通省道路局様あてにお問い合わせください。
<参考文献>国土交通省ウェブサイト
報道発表 https://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_001569.html
<画像出典>国土交通省ウェブサイト
[1][2][4] https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001490634.pdf
[3] https://road-structures-map.mlit.go.jp/
[5] https://road-structures-db.mlit.go.jp/