用語解説

BIMとは|意味・メリット・BIMの '元祖' を紹介

BIMとは

BIMとはBuilding Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)の略語です。

3次元建物モデルの各パーツに、部材や寸法、価格、品番、形状といった情報を属性として付与して管理することで、設計から施工、維持管理までの全工程の関連データを連携させ、一括管理できるワークフローのことをいいます。

メリット

BIMの3次元モデルは属性情報を持っているため、平面図、立面図、詳細図をはじめとする各種図面を属性を付与した形で取り出せるほか、図面、書類、モデルデータどうしが連動していることで整合性を維持できるなどのメリットがあります。

手戻りやミスの減少につながる効果があることや、国土交通省によるi-Constructionの推進により、BIMの取り組みを実施している、あるいは検討中というゼネコンが増えてきています。

高機能CAD

BIMを実現させるには、単に図面を作図するだけでなく、部材、構造や設備設計をはじめ、付随する属性情報をすべて連携させて管理できる高機能なCAD(Computer Aided Drafting system)が必要となります。

インフォマティクスのMicroGDS(マイクロ ジーディーエス)は、計画・実施設計からプレゼンテーション、積算・分析、設備管理までこなせる高機能汎用2次元・3次元CADです。作図だけでなく、BIMを実現できるシステムです。

そのMicroGDSのルーツを辿ると、OXSYS(オクシス)、BDS(ビーディーエス)、GDS(ジーディーエス)というシステムまで遡ります。

BIMのルーツ

Applied Research of Cambridge Limited

Applied Research of Cambridge Limited(略してARC社)は、1969年マーティンセンター(ケンブリッジ大学建築学部研究室)のエド・ホスキンス氏がスピンオフして設立した会社です。

1970年代初め、ARC社はオックスフォード地方保健局のプロジェクトで、他社に先駆けてBIMの概念を持ったCADを開発しました。

1970年後半、ARC社は病院設計に特化したCADの製品化を開始。

当初BDS(Building Design System)と呼ばれたCADシステムは、のちにGDS(General Drafting System)と呼ばれるシステムへ進化しました。

1980年代後半、ARC社はイギリスのAEC(建設土木エンジニアリング)分野でトップシェアを占めるまでになり、GDSは複数の大規模プロジェクトを扱うことができる非常にパワフルなシステムとしてユーザーにも大変好評でした。

のちにARC社は、GDSの活用範囲を建築土木分野から地理情報分野へと拡げていきました。

※インフォマティクスの長島ファウンダーとARC社との関わり、また、OXSYS、GDSについて詳しくはこちらの記事をご参照ください。

OXSYS(オクシス)

OXSYSは、1970年代にARC社が開発した、現在でいうところのBIMの概念を持つCADソフトで、オックスフォード地域保健当局向けの大規模プロジェクト案件で開発されたシステムです。

このプロジェクトは、クライアントであるオックスフォード地方保健局向けに、大規模な病院施設の設計・施工・データ管理の各工程で、3次元建物モデルと関連の属性データ、図面データを連携できるCADを開発するプロジェクトでした。

BDS(ビーディーエス)

BDS(Building Design System)は、OXSYSから病院設計専用のコンポーネントをなくしたもの、つまりOXSYSの汎用版CADです。

データベース機能を持った汎用CADとしては優れたシステムでしたが、残念ながら、コンポーネントの自動組み立てや3次元モデルへの詳細編集が行えない、直交ジオメトリに制限があるなどから、一般的な設計作業には使いづらいという難点がありました。

GDS(ジーディーエス)

BDSの制限事項をカバーして進化させたシステムがGDS(General Drafting System)です。

BDSは、直方体のコンポーネントを直交座標系で組み立てた、積み木細工のような建物しか設計できませんでした。病院や診療所の建物の設計であれば、これで十分でした。

しかし、当然ながら自由な形状の建物を設計したいという要求が生まれてきました。そこで、3次元設計用のCADであるBDSから離れ、2次元の図形を自由に表現できる2次元CADシステムを開発してみようという発想から、GDSが考え出されました。

当初2次元の図形を表現するシステムだったGDSは、それから少し経ったのち、2次元形状に高さ方向の値を付与して3次元モデルを構築する手法が加えられ、立体的なパース図面を描くことが可能になりました。

GDSは現況図をはじめ立面図、平面図、詳細リストなどさまざまなタイプの図面を扱うことができるうえ、地図や機械設計図、回路図などとの親和性もあるため、建設のみならず幅広い分野に利用可能なシステムでした。

GDSを利用したプロジェクト実績

当時GDSは図面設計から施工、施設管理までの全工程のデータを連携させて一元管理できるCADとして、以下をはじめ、さまざまな大規模プロジェクトに利用されました。

  • ロンドンヒースロー空港第4ターミナル建設プロジェクト(写真左)
  • マサチューセッツボストンBig Digプロジェクト(ボストン中心部高速道路網再生プロジェクト)(写真右)
  • テルストラケーブルプラントレコードシステム(オーストラリア・テレコム)

ARC社創設者による講演

2018年11月、ケンブリッジ大学マーチンセンター研究室主催のセミナーにて、ARC社創設者エド・ホスキンス氏とOXSYS開発者ポール・リッチェンス氏による「ARC社が手がけた黎明期のBIM」というテーマの講演がありました。

この講演では、約半世紀前の数々のプロジェクトを振り返りつつ、現代にも応用できる手法や技術を探っています。ぜひご覧ください。

  • 動画:https://www.sms.cam.ac.uk/media/2861617
    概要:Applied Research of Cambridgeは、1969年に Martin Centerから商業的に独立して設立されました。Ed Hoskinsはマネージング ディレクターとして同社を率い、後に会長として就任しました。1970 年代にARCはスタッフ約40名に成長し、主に病院の設計、建設、交通モデリングのためのコンサルティングとオーダーメイドのソフトウェア開発に携わりました。1985年までに、ARC は英国の主要なCADシステムサプライヤーになりました。ケンブリッジ応用研究社は、1970年代初頭にオックスフォード地域保健局のプロジェクトでビルディング インフォメーション モデリング(BIM)の先駆者となりました。この講義では、この初期のプロジェクトから何が学べるかを振り返ります。(University of Cambridgeウェブサイトより)

おわりに

BIMという用語ができ、その概念が確立してきたのは1980年後半~1990年といわれていますが、インフォマティクス 長島ファウンダーはその説に異論を唱えます。

BIMはCADの歴史と関わっており、いわばその本質であるわけです。建築デザインをコンピュータの力を使って進めようと考えたのがComputer Aided Design System(CAD)です。

しかしCADというと、どうしてもデザインという形状を描く面が強調されます。

しかし、形をコンピュータで表わすハードウェアがほとんど存在していなかった時代は、建築に関わる情報をコンピュータで扱うことが考えられ始めました。

BIMという名称が生まれる前のBIMの概念が、コンピュータで実行されてきたのです。

CADの歴史は、図形を描く歴史だと思っていらっしゃる方が多いかもしれませんが、形状を描く前に、建築設計に関わる情報をコンピュータで扱っていたのが1969年に設立されたARC社です。

ですから、ここで実用的な病院建築設計のために生み出されたOXSYSには図形情報を扱う機能が備わっていますが、その中には、図形以外の情報(建築設計に関わる色々な建築仕様の情報)が扱われていたのです。

ある意味、BIMの原型はCADが現れる以前に存在していたということなのです。(もちろん、BIMという名前の概念でまとめられてはいませんでしたが。)

コンピュータで情報を扱う

そして、CADシステムが現れ、BIMの概念を具現化したのがOXSYS(1975年には既に稼働)です。

その後、汎用的なCADシステムが現れましたが、多くのCADシステムは図形の形状を表現することに終始していました。

そんな中、ARC社が開発したGDSはOXSYSの流れから生まれたシステムで、部品の概念が備わっており、その仕様情報を扱う、いわゆるBIMの機能を備えていました。

当時のCADシステムは図形表現に終始し、データ構造にはレイヤーを採用して、建築仕様のデータを納める仕組みがありませんでした。

グラフィソフト社のArchiCADは、ARC社のBDS(OXSYSの汎用版システム)、GDSを参考にしてハンガリーで開発されたといわれています。

要するに、CADシステムの普及期(1980年代、1990年代)には建物の形状や図面ばかりが注目され、建築仕様をCADで扱うという活動は長い間無視されてきたのです。

もちろん、CADシステムと積算システムや構造解析システムとの連携を試みたこともありましたが、一般的なBIMという概念にまではまとまりませんでした。

近年BIMが注目されているのは、建築設計において、コンピュータであらゆる情報を一元的に扱うと便利であることが、ようやく再認識されてきたということなのではないでしょうか。

現場作業のDX化をお考えなら

インフォマティクスでは現場作業のDX化をサポートする「GyroEye(ジャイロアイ)」、遠隔臨場/変状調査ソリューション「XRoss野帳(クロスヤチョウ)」などのAR/MRシステムをご提供しています。
詳しい資料をダウンロードする >>

MR技術を活用したシステム構築に関するご相談(無料)も承っています。お気軽にお問い合わせください。

<参考>
・国土交通省ウェブサイト https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/kenchikuBIMsuishinkaigi.html
・『図解入門よくわかる最新BIMの基本と仕組み』(秀和システム/家入龍太著)

  • この記事を書いた人
  • 最新記事
アバター画像

空間情報クラブ編集部

空間情報クラブはインフォマティクスが運営するWebメディアです。GISソフト「SIS」の便利機能を紹介するSIS活用講座や用語解説をはじめ、地図、AI機械学習、XR、数学をテーマにしたコラムを多数掲載。楽しみながらより深く学んでいただけるお役立ち情報を発信しています。

あわせて読みたい

-用語解説