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大雨災害の危険度が地図上でわかる|キキクル(危険度分布)

大雨や台風による水害が相次いで発生している昨今、災害発生リスクをすばやくチェックできるウェブサイトとしておすすめなのが、気象庁が提供する「キキクル」だ。

従来「危険度分布」として提供していた同サービスは、2021年3月から「危機が来る」を元にした愛称「キキクル」に変更された。

今回は「キキクル」が提供する危険度分布とはどのような情報で、どのように使えばいいのかを見ていこう。

キキクルとは

「キキクル」は、大雨による災害の危険度の高まりを5段階の色分けで地図上に表示するサービスである。

大雨のときは降雨量ばかりが注目されがちだが、降った雨は以下のような災害の誘因となる。

  • 地中に浸み込んで土砂災害を引き起こす
  • 地表面に溜まって浸水害となる
  • 川に集まって増水して洪水災害が発生する

「キキクル」ではこのような雨水の挙動に注目して模式化し、それぞれの災害リスクの高まりについて3つの指数の予測値を算出。

  • 土壌雨量指数
  • 表面雨量指数
  • 流域雨量指数

これらの指数を用いて以下の3種類を提供する。

  • 土砂キキクル:土砂災害の危険度分布を地図上に可視化
  • 浸水キキクル:浸水害の危険度分布を可視化
  • 洪水キキクル:洪水警報の危険度分布を可視化

これら3つは「キキクル」の地図画面上部のアイコンで切り替えられる。

これら3種類は、いずれについても6時間前の状況に遡ってチェックでき、時間が経つにつれてどのように危険度が変化していったのかを動画で見ることもできる。

表示中の危険度分布を印刷することも可能だ。

キキクルの見方

土砂災害の発生リスクを可視化|土砂キキクル

「土砂キキクル」は、大雨による土砂災害発生の危険度の高まりを地図上で1km四方のメッシュごとに5段階に色分けして表示するもの。

常時10分ごとに更新し、大雨警報(土砂災害)や土砂災害警戒情報が発表されたときには、どこで土砂災害の危険度が高まっているかを把握できる。

上部のアイコンを選択すれば、土砂災害警戒区域に指定されているエリアを地図上に表示できる。

「極めて危険」(濃い紫色)はかなり危険な状況を表しており、命の危険がある土砂災害がすでに発生している可能性がある。

このため、避難にかかる時間を考慮して、「土壌雨量指数」の2時間先までの予測値を用いて「非常に危険」(うす紫色)、「警戒」(赤色)、「注意」(黄色)、「今後の情報等に留意」(無色)の危険度を表示している。

気象庁は、高齢者は遅くとも「警戒」が出現した時点で、一般の人は遅くとも「非常に危険」が出現した時点で、速やかに危険な場所からの避難を開始し、「極めて危険」(濃い紫色)に変わるまでに避難を完了する必要があると呼びかけている。

土砂キキクル

土砂災害警戒区域を表示

浸水害の発生リスクを表示|浸水キキクル

「浸水キキクル」では、1時間先までの雨量予測を用いた「表面雨量指数」の予測値が大雨警報(浸水害)の基準に到達したかどうかを、地図上に5段階で色分け表示する。(濃い紫・うす紫・赤・黄・無色)

大雨警報が発表されたときに、実際にどこで浸水害発生の危険度が高まっているのかをひと目で確認でき、避難行動につなげることができる。

黄色(注意報級)

低い場所で側溝や下水が溢れて道路が冠水し、住宅の地下室や道路のアンダーパスに水が流れ込む恐れがあることを示している。

赤色(警報級)

側溝や下水が溢れて道路がいつ冠水してもおかしくない状況。

低い場所にある家屋などでは安全確保行動をとれるように準備する必要がある。

うす紫色

重大な浸水害がいつ発生してもおかしくない危険な状況。

すでに浸水が発生している場合は、屋内の浸水が及ばない階に移動する必要がある。

濃い紫色(最も危険度が高い)

すでに重大な浸水害が発生している可能性が高く、極めて危険な状況を示している。

浸水キキクル

河川増水による洪水リスクを表示|洪水キキクル

「洪水キキクル」は、大雨による中小河川の洪水災害発生の危険度の高まりを5段階に色分けして地図上に示したもの。

危険度の判定には3時間先までの「流域雨量指数」の予測値を用いており、急激な増水による危険度の高まりを5段階の色分けで事前に確認できる。

大河川で洪水が起きる可能性があるときに発表される「指定河川洪水予報」を表示できるほか、洪水が起きた場合の浸水想定区域を表示させることもできる。

黄色(注意報級)

避難行動の確認が必要な警戒レベル2に相当

赤色(警報級)

まもなく重大な洪水災害が発生する可能性があり、一定の水位を超えていれば自治体から警戒レベル3の高齢者等避難が発令される状況。

うす紫色

重大な洪水災害が発生する可能性が高いことを示しており、河川の水位が一定の水位を超えていれば自治体から警戒レベル4避難指示が発令される状況。

濃い紫色

流域雨量指数の実況値が、過去の重大な洪水災害発生時に匹敵する値に到達したことを示している。

すでに重大な洪水災害が発生している可能性が高い状況。

洪水キキクル

洪水浸水想定区域を表示

キキクルの通知サービス

「キキクル」において危険度が「非常に危険」(うす紫色)へ高まったことを通知するサービスを、気象庁の協力のもと事業者5社が実施している。(「非常に危険」は、避難が必要とされる警戒レベル4に相当する。)

協力事業者は以下の5社で、ゲヒルンの「特務機関NERV」アプリやヤフーの「Yahoo! JAPAN」アプリなどで通知を受け取れる。

  • アールシーソリューション株式会社
  • ゲヒルン株式会社
  • 株式会社島津製作所
  • 日本気象株式会社
  • ヤフー株式会社(Yahoo! JAPAN)

ユーザーは、登録地域の危険度が上昇したときにメールやアプリで通知を受け取れるので便利だ。

通知を受信した際は、地図上のどの場所で危険度が高まっているのかを確認することをお忘れなく。

前述のように、「極めて危険」(濃い紫)になると避難が困難な状況となっている恐れがあるため、「非常に危険」(うす紫)が出現した時点で速やかに避難することが重要であると気象庁は説明している。

「土砂キキクル」、「浸水キキクル」、「洪水キキクル」のいずれも、わかりやすく5段階に色分け表示されるので、どの場所がどれくらい危険なのかがひと目でわかる。

大雨になったときはこのサイトを見て、自宅や会社周辺の危険度をチェックしてみよう。

■URL
キキクル
https://www.jma.go.jp/bosai/risk/

※本記事で紹介したサービスに関する詳細は、提供機関様あてにお問い合わせください。

<参考>気象庁ウェブサイト

  • この記事を書いた人
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片岡義明(かたおかよしあき)様

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」、「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。

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