ジオ三昧のススメ

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2018年8月1日


生活やビジネスに役立つ位置情報デバイス
第3回:カーナビゲーションシステム

地図表示機能や測位機能を搭載したさまざまなデバイスの概要や現状について紹介するこの連載、第3回となる今回は、カーナビゲーションシステム(以下、カーナビと呼称)について紹介する。

自動車用のナビゲーションシステムは、民生用GPS機器としては一般ユーザーにもっとも早く普及した製品ジャンルだといえる。世界初の一般向けカーナビは、1981年にホンダが「アコード・ビガー」という車に搭載したカーナビであると言われているが、この製品にはGPSは非搭載で、衛星測位で位置情報を得るのではなく、船舶などに使われていたジャイロセンサーの応用で位置を推定していた。

GPSを搭載した初のカーナビは、マツダと三菱電機が共同開発したもので、1990年に「ユーノス・コスモ」に搭載されたが、このカーナビは単体製品として販売されることはなかった。市販モデルを世界で初めて販売したのはパイオニアで、1990年にGPS搭載カーナビ「AVIC-1」を発売している。20180801_1

パイオニアの「AVIC-1」

カーナビは登場以来、とくに日本においては多くのドライバーに支持されて普及してきた。幅広い車種や用途に対応するため、組み込み型やディスプレイ・本体の一体型、PND(Portable Navigation Device)と呼ばれる小型製品などさまざまな種類があるが、近年はスマートフォン向けカーナビアプリを使う人も増えつつある。

初期のカーナビは測位精度の誤差のため、道ではない場所に自車位置が表示されるトラブルなども見られたが、現在はGNSS受信機に加えて、ジャイロセンサーや加速度センサーを組み合わせるとともに、地図上の道路の位置をもとに自車位置を補正する「マップマッチング」などの技術を用いることにより、自車位置の測位を高精度に行えるようになった。

最近はスマートフォンのカーナビアプリを使う人が増える一方で、車載カーナビの売上は伸び悩んでいるが、たとえば操作性については、タッチ操作が主体のスマートフォンよりも物理ボタンを備えたカーナビのほうが操作しやすいことも多く、車種によってはハンドルに操作ボタンが搭載されており、手元でコントロールできるので安全性も高い。右左折の指示や高速道路のICの情報などをHUD(ヘッドアップディスプレイ)やサブディスプレイなど見やすい場所に表示できる車種もあり、視認性についても有利だ。

また、車載カーナビは自車位置の測位に車速情報を加味できるのも利点のひとつである。スマートフォンの場合、トンネルの中や高層ビルに囲まれたエリアなど、衛星電波を受信しづらい環境では自車位置を見失ってしまうことがあるが、車載カーナビであれば車速情報をもとにした自律航法機能を搭載しているため、衛星電波の受信環境が悪い場合でも正確な位置を推定できる。20180801_2

パイオニアの車種専用サイバーナビ(日産セレナ向け)

スマートフォンの場合は車に乗るたびに端末を車内に取り付けなければならず、これも車載カーナビに比べて面倒な点だが、最近ではiPhone/iPadと連携できるCarPlay対応の車載デバイスや、Androidスマートフォン/タブレットと連携できるAndroid Auto対応の車載デバイスが登場している。

CarPlayやAndroid Autoを使用すれば、iOS/Android用のナビゲーションアプリを、車載カーナビのように大画面で使用できるほか、乗車前にスマートフォンのマップアプリで検索した目的地を引き継いでナビゲーションを行える。スマートフォン内に保存されている音楽ファイルや動画ファイルの再生も可能で、音楽ストリーミングサービスなどを楽しんだり、車載スピーカーやマイクを使って通話したりすることもできる。車載カーナビそのものにCarPlayやAndroid Autoの機能が搭載されている場合もあるが、カーナビ機能を搭載せず、CarPlayやAndroid Autoの機能に絞ったシンプルなデバイスも販売されている。

9月にリリースが予定されているiOSの次期バージョンでは、CarPlay上で他社製のナビゲーションアプリが使用可能になることも予定されている。これまではAppleの純正マップアプリしかナビゲーションに利用できなかったが、今回のアップデートによって、カーナビアプリとして人気のGoogleマップなども利用可能となり、渋滞情報を加味したルート検索も行える。

一方、車載カーナビの最近の話題としては、ETC2.0(DSRC)が挙げられる。従来のETCは高速道路や有料道路の料金の支払いにしか利用できなかったが、ETC2.0ではカーナビと連動し、ETC2.0車載器で受信した情報をカーナビで音声や画像に再生/表示できる。

受け取れる情報は、広範囲の渋滞情報をもとに賢いルート選択が可能となる「ダイナミックルートガイダンス」や、ハイウェイラジオ情報、渋滞末尾情報、落下物、SA/PA情報などさまざまだ。ただしETC2.0の情報については、スマートフォン連動型のETC2.0車載器を使うことで、スマートフォン上でも音声や画像に再生/表示できるため、必ずしも車載カーナビに限ったメリットというわけではない。

このほか、ロードアシストの連絡や整備の予約などを行える機能を搭載するなど、今やカーナビは道案内をするためだけでなく、さまざまなサービスを利用するための多機能端末として進化しつつある。たとえばパイオニア製「サイバーナビ」の最新機種「AVIC-CL902-M」では、ドライブレコーダー機能や注意喚起、盗難対策などを実現する運転支援システム「マルチドライブアシストユニット」を搭載している。20180801_3

パイオニアの市販カーナビ「AVIC-CL902-M」

画像提供:パイオニア株式会社

最近では、走行中の自動車からのデータをもとに生成される「プローブ情報」を自動車メーカーやカーナビメーカー各社が災害時に公開するなど、走行ビッグデータを活用する取り組みも始まっている。将来的にはカーナビと自動運転システムとの連携なども検討されており、今後どのように進化していくか注目される。


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執筆者ご紹介  片岡義明(かたおかよしあき)様
フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。