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カーナビ|車載ナビ、スマホナビのメリット・デメリット

地図表示機能や測位機能を搭載したデバイスの概要や現状について紹介するこの連載、今回はカーナビ(カーナビゲーションシステム)について紹介する。

カーナビの歴史

自動車用のナビゲーションシステムは、民生用GPS機器としては一般ユーザーにもっとも早く普及した製品ジャンルだといえる。

世界初の一般向けカーナビは、1981年にホンダが「アコード・ビガー」という車に搭載したカーナビであると言われている。

しかしこの製品にはGPSは非搭載で、衛星測位で位置情報を取得するのではなく、ジャイロセンサーの応用で位置を推定していた。

初のGPS搭載カーナビは、マツダと三菱電機が共同開発したもので、1990年に「ユーノス・コスモ」に搭載されたが、このカーナビは単体製品として販売されることはなかった。

市販モデルを世界で初めて販売したのはパイオニアで、1990年にGPS搭載カーナビ「AVIC-1」を発売している。

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パイオニアの「AVIC-1」

画像提供:パイオニア株式会社

車載ナビ、スマホナビのメリット・デメリット

カーナビは登場以来、とくに日本においては多くのドライバーに支持されて普及してきた。

幅広い車種や用途に対応するため、組み込み型やディスプレイ・本体の一体型、PND(Portable Navigation Device)と呼ばれる小型製品ほかさまざまな種類があるが、近年はスマートフォン向けカーナビアプリを使う人も増えつつある。

初期のカーナビは測位精度の誤差のため、道ではない場所に自車位置が表示されるトラブルも見られた。

現在はGNSS受信機にジャイロセンサーや加速度センサーを組み合わせるとともに、地図上の道路の位置をもとに自車位置を補正する「マップマッチング」技術を用いることで、自車位置の測位が高精度になった。

最近はスマートフォンのカーナビアプリを使う人が増える一方で、車載カーナビの売上は伸び悩んでいる。

しかし、タッチ操作が主体のスマートフォンよりも物理ボタンを備えたカーナビのほうが操作しやすいことも多く、車種によってはハンドルに操作ボタンが搭載されており、手元でコントロールできるので安全性も高い。

右左折の指示や高速道路のICの情報をHUD(ヘッドアップディスプレイ)やサブディスプレイなど見やすい場所に表示できる車種もあり、視認性についても有利だ。

また、車載カーナビは自車位置の測位に車速情報を加味できるのも利点の一つである。

スマートフォンの場合、衛星電波を受信しづらい環境(トンネルの中や高層ビルに囲まれたエリア)では自車位置を見失うことがある。

一方、車載カーナビであれば車速情報をもとにした自律航法機能を搭載しているため、衛星電波の受信環境が悪い場合でも正確な位置を推定できる。

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パイオニアの車種専用サイバーナビ(日産セレナ向け)

画像提供:パイオニア株式会社

スマートフォンの場合は車に乗るたびに端末を車内に取り付けなければならず、これも車載カーナビに比べて面倒な点だが、最近ではiPhone/iPadと連携できるCarPlay対応の車載デバイスや、Androidスマートフォン/タブレットと連携できるAndroid Auto対応の車載デバイスが登場している。

CarPlayやAndroid Autoを使用すれば、iOS/Android用のナビゲーションアプリを、車載カーナビのように大画面で使用できるほか、乗車前にスマートフォンのマップアプリで検索した目的地を引き継いでナビゲーションを行える。

スマートフォン内に保存されている音楽ファイルや動画ファイルも再生でき、音楽配信サービスを楽しんだり、車載スピーカーやマイクで通話したりできる。

車載カーナビそのものにCarPlayやAndroid Autoの機能が搭載されている場合もあるが、カーナビ機能を搭載せず、CarPlayやAndroid Autoの機能に絞ったシンプルなデバイスも販売されている。

2018年9月にリリースが予定されているiOSの次期バージョンでは、CarPlay上で他社製のナビゲーションアプリが使えるようになるという。

これまではApple純正マップアプリしかナビゲーションに利用できなかったが、今回のアップデートで、カーナビアプリとして人気のGoogleマップも利用可能になり、渋滞情報を加味したルート検索もできる。

一方、車載カーナビの最近の話題としては、ETC2.0(DSRC)が挙げられる。従来のETCは高速道路や有料道路の料金の支払いにしか利用できなかったが、ETC2.0ではカーナビと連動し、ETC2.0車載器で受信した情報をカーナビで音声や画像に再生/表示できる。

受け取れる情報は、広範囲の渋滞情報をもとに賢いルート選択ができる「ダイナミックルートガイダンス」や、ハイウェイラジオ情報、渋滞末尾情報、落下物、SA/PA情報などさまざまだ。

ただしETC2.0の情報は、スマートフォン連動型のETC2.0車載器を使えば、スマートフォン上でも音声や画像に再生/表示できるため、必ずしも車載カーナビに限ったメリットというわけではない。

このほか、ロードアシストの連絡や整備予約を行える機能を搭載するなど、今やカーナビは道案内だけでなく、各種サービスを利用するための多機能端末として進化しつつある。

たとえば、パイオニア製「サイバーナビ」の最新機種「AVIC-CL902-M」は、ドライブレコーダー機能や注意喚起、盗難対策を実現する運転支援システム「マルチドライブアシストユニット」を搭載している。

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パイオニアの市販カーナビ「AVIC-CL902-M」

画像提供:パイオニア株式会社

走行ビッグデータを活用

最近では、走行中の自動車からのデータをもとに生成される「プローブ情報」を自動車メーカーやカーナビメーカー各社が災害時に公開するなど、走行ビッグデータを活用する取り組みも始まっている。

将来的にはカーナビと自動運転システムとの連携も検討されており、今後の進化が注目される。

※本記事に掲載の製品モデルは現在廃盤となっている場合がございます。予めご了承ください。

  • この記事を書いた人
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片岡義明(かたおかよしあき)様

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」、「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。

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