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南極の地理空間情報を考える

これまでのコラムでは高精度測位を前提としてさまざまな事例を取り上げてきたが、今回は地図そのものの話を書いてみたい。

極点付近はなおざり

私たちが目にする世界地図の多くは、メルカトル図法をはじめとして、地球を横から見た視点のものが多い。

この方法は多くの人々が暮らす大陸が一覧できるわけだが、南極と北極は極点に近づけば近づくほど、なおざりにされがちだ。

北極は大陸がないのであまり気にならないかも知れないが、南極は立派な大陸でありながら世界地図上では分断されてしまう運命にある。

メルカトル図法に至っては、そもそも南極点が描かれることもない。これはあまりにも理不尽ではないか。

全方位が北という不都合な地図

もっとも、南極大陸だけを描いた地図ならある。学校の地図帳で南極点を中心に描いた南極の地図を目にした人は多いだろう。

ここで疑問なのが、多くの場合地図は北を上として描かれるわけだが、南極点を中心とした考えた場合、すべての方向が「北」になってしまう点だ。

つまり地図を見てとっさに東西南北が判断できないわけだ。では地図はどのような向きで描かれるのだろうか?

国土地理院の南極大陸図と見ると、南米側に突き出た南極半島が左側に位置する図取りとなっている。

これは本初子午線(経度0度0分0秒の基準子午線)を上としたものである。「南極大陸」で画像検索をかけると、圧倒的にこの配置が多い。

英語やフランス語、ドイツ語、ロシア語で検索しても、同様の結果になることから、本初子午線を上とした図取りは世界的なスタンダードといえるかもしれない。

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南極大陸図
(出典:国土地理院ウェブサイト)

地図帳における扱い

ではそれ以外ではどんな図取りがあるのだろうか。

南極大陸の地図自体、あまり身近なものではないが、学校で使う世界地図帳には必ず記載されているはずだ。

とりあえず手元にある地図帳を数点確認してみた。あくまでも著者の手元にあるものなので、最新版でないことはご容赦いただきたい。

帝国書院「新詳高等地図」

まずは帝国書院の「新詳高等地図」。

手元にあったのは平成28年版だが、南極半島が下になる図取りになっている。本初子午線が左、東経90度が上という配置だ。

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帝国書院の「新詳高等地図」
(平成28年版・筆者所有の現物撮影)

二宮書店「現代地図帳」

高校時代に使っていた地図帳も手元にあった。二宮書店の「現代地図帳」昭和53年版である。なんと40年以上も前のものだ。

こちらも帝国書院と同じく、本初子午線が左、東経90度が上という配置だった。

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二宮書店の「現代地図帳」
(昭和53年版・筆者所有の現物撮影)

昭文社「グローバルアクセス 世界地図帳」

学校の地図帳ではないが、昭文社発行の「グローバルアクセス 世界地図帳」(1997年版)も手元にあったので確認してみた。

なんとこれも同じく本初子午線が左、東経90度が上という配置だった。

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昭文社の「グローバルアクセス 世界地図帳」
(1997年版・筆者所有の現物撮影)

「本初子午線を上とした図取りは世界的なスタンダード」と書いておきながら、手元にある地図帳すべて東経90度が上となる図取りなのは驚きだった。

機会があれば関係者に理由を聞いてみたい。

南極のさまざまな地理空間情報

南極を対象としてGISを使うという機会は、よほどの専門家でなければないだろう。

しかし国土地理院では、南極地域観測隊に毎次職員を派遣しており、さまざまな観測を行い、地理空間情報として整備している。

その成果は「南極の地理空間情報データライブラリ」として公開されており、GISでも利用できる。

中でも昭和基地周辺の地形図は、1/2500という大縮尺も含め、ベクトルデータも公開されている。

昭和基地周辺だけ見ると、まったくもって南極という感じがしないのは不思議だ。図式的に違和感がないからだろうか。

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昭和基地周辺の地形図
(出典:国土地理院ウェブサイト)

また、2009年国立極地研究所が「GISポータルサイト」を立ち上げている。こちらはあまり更新されていない様子だが、データが増えていけば使えそうなサイトではある。

その他、USGS(アメリカ地質調査所)でも地質調査図やフライトラインマップなど、南極の地理空間情報を入手できる。

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遠藤宏之(えんどうひろゆき)様

地理空間情報ライター(地図・地理・測量・GIS・位置情報・防災)、測量士、GIS NEXT副編集長 著書:『三陸たびガイド』『地名は災害を警告する』『首都大地震揺れやすさマップ』(解説面)『みんなが知りたい地図の疑問50』(共著)他

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