
三角形には特別な点が多数存在します。基本的なものに前回の重心以外に外心、内心、垂心、そして傍心(ぼうしん)があります。まとめて三角形の五心と呼ばれます。一つずつ定義・特徴をみてみましょう。最後に、重心・外心・垂心が一直線上にあることを証明してみます。
目次
重心:中線の交点
三角形の頂点と対辺の中点を通る直線を中線と呼びます。3つの中線の交点が重心です。線分の両端から同じ半径の円を描き2円の交点を結ぶ直線──線分の垂直二等分線──を引きます。線分と垂直二等分線の交点が線分の中点となります。

重心によって中線は2:1に内分されます。なぜ2:1なのかは前回の解説をご覧ください。
外心:垂直二等分線の交点
三角形の外接円の中心が外心です。三角形の3辺は円の弦になります。円の中心は弦の垂直二等分線上にあるので3辺の垂直二等分線の交点が外心となります。重心と同様に垂直二等分線を作図することで外心が作図できます。
正弦定理
三角形の外接円の半径をRとすると、3頂角A、B、Cおよび3辺a、b、cの間に成り立つ関係式が正弦定理です。sin(正弦)が使われるので正弦定理と呼ばれます。

内心:角の二等分線の交点
三角形の内接円の中心が内心です。三角形の頂角の二等分線上に内心があります。角の二等分線の作図は次の通りです。頂点から円を描き三角形の2辺との交点をとります。それぞれの交点を中心に同じ半径の円を描きます。2円の交点を通る直線が角の二等分線です。
三角形の内接円の半径と三角形の面積と3辺a、b、cの間に成り立つ関係式があります。三角形を内心により3分割することから導かれます。


垂心:垂線の交点
三角形の頂点から対辺に引いた垂線は1点で交わります。それが垂心です。角の二等分線の作図と同じように3つの円を描きます。頂点を中心に描いた円と対辺との交点をとります。それぞれの交点から円を描き、2つの円の交点を結んだ線が垂線となります。
三角形の頂点と垂心の距離は、三角形の外接円の半径Rと頂点の余弦(cos)で表されます。
AH=Rsin A
この公式は最後のオイラー線で登場します。

傍心:外角の二等分線の交点
三角形の傍接円の中心が傍心(ぼうしん)です。3辺それぞれに傍接する円が描けるので傍心は3つ存在します。傍接円は三角形の3辺を延長した3辺すべてに接しています。
傍心の作図は次の通りです。三角形の3辺を延長します。2つの頂角の外角の二等分線の交点が傍心です。角の二等分線の作図法により3頂角の外角の二等分線を3本引きます。この3本の角の二等分線がつくる3交点が傍心です。

オイラー線
垂心と重心と外心は同一直線上にあります。垂心と外心を2:1に内分する点が重心です。垂心と外心を結ぶ線分はオイラー線と呼ばれています。
次がその証明です。垂心と外心を結ぶ線分とAMの交点Xが重心Gであることを証明します。中心角と円周角の関係、垂心の性質AH=Rsin A、そして三角形の合同から導かれます。垂心の性質AH=Rsin Aの証明には外心で取り上げた正弦定理が登場します。
この証明は初等幾何によるものです。この他に、ベクトルを用いる証明、座標を用いる証明があります。

次回は図の作成に用いたWebアプリケーションGeoGebraの使い方を紹介します。
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