こんにちは、インフォマティクスの空間情報クラブ編集部です。
空間情報クラブ編集部が地図や地理の分野で気になった書籍をご紹介するシリーズ、今回は歴史地理の書籍をピックアップしました。
目次
PICK UP - 今月の書籍
身のまわりの風景や景観から過去の人々の営みを読み解く『歴史は景観から読み解ける』
普段なにげなく目にする景色にも意外な事実が隠されていることがあります。
本書では、交差点から道、観光地、重要文化財的な景観にいたるまで、それらの裏に隠された歴史を「歴史地理学」の手法で解き明かしていきます。
この地域はどのように変化してきたのかなど、場所の歴史的変遷をたどる面白さを味わえる一冊です。(上杉和央(うえすぎ かずひろ) 著)
ウィズコロナ時代の都市観光・地域観光のあり方を考察する『都市・地域観光の新たな展開』
「観光先進国」を目指す日本のさまざまな取り組みを紹介しながら、「オーバーツーリズム」、観光空間と生活空間の重なりがもたらす「観光公害」などの課題を整理。
今後に向けて感染防止や「観光防災」などの危機管理を含む総合的な地域マネジメントの重要性も訴えています。(安福恵美子 著、天野景太 著)
パンデミックの原因究明に奔走した男性2人の物語『感染地図 歴史を変えた未知の病原体』
19世紀、ロンドンを襲ったコレラ禍のなか、感染源をつきとめるべく地道に調査実験を続けた医師ジョン・スノーと教区牧師ホワイトヘッドのお話です。
疫学の偉大さがわかる医学+歴史的ノンフィクションともいえる本書は、ミステリーのような謎解きの要素もあります。(スティーヴン・ジョンソン 著)
空間情報プラスのコラム「空間疫学とGIS(地理情報システム)の役割と課題」の中で「ジョン・スノーのコレラマップ」が紹介されています。本書「感染地図」はこのコレラマップ作成の裏側にある2人の闘いが描かれています。
深海底世界一周の旅へ誘う『見えない絶景 深海底巨大地形 』
深海底には、地球2周分の巨大山脈、エベレストを呑み込むほどの海溝、日本列島の数倍もの広さの台地などがひしめいています。
本書ではバーチャル潜水艇で海底を探索しながら、知られざる姿をわかりやすく解説。地球のもう1つの「顔」を知る旅へいざなってくれる一冊です。(藤岡 換太郎 著)
月刊「地理」10月号の見どころ
月刊「地理」担当編集者の方に10月号の特集とオススメ記事を紹介していただきました。
特集:コロナ時代の「夜」の地理学 ー 音楽と音の紡ぐ未来
2020年10月号(9/25発売)の特集はコロナ時代の「夜」の地理学です。
音楽や音は夜の時間や空間をどのように変容させるのかをテーマに
- 音楽と都市に注目した産学共同研究の成果(コロナ時代の夜間音楽経済)
- グローバル都市のウォーターフロントとナイトライフ街区形成に関する歴史的背景の比較検討
- メキシコの音楽祭(音や音楽が作り出す空間を考察)
- 沖縄の音楽と場所(沖縄の音楽文化の多様性と夜)
- コロナ時代における地理学の研究アプローチに関する知見
などをご紹介します。
Editor's Choice
寄稿:「不詳」の増加は統計地図をどう歪めるのか?
開始100年を迎える国勢調査の困難(埴淵知哉・山本涼子・中谷友樹・山内昌和)
5年に1度実施される国勢調査。今年100年目を迎える国勢調査ですが、回答率の低さや未記入・誤記入によって生じる「不詳」データの増加が懸念されています。
本稿では、不詳データの増加が統計上どういった歪みを引き起こすのかが具体的に解説されています。
連載:タブレットを活用した校外学習
中学校でフィールドワーク!─「地域調査の方法」を実践してみよう ─(茂田井一人)
中学の校外学習において「タブレット+GIS(地理情報システム)」を活用した例が紹介されています。
中学高校を問わず、校外地理授業のヒントとして参照いただける内容だと思います。
東京都中野区立北中野中学校 茂田井先生による連載です。
おわりに
2020年は国勢調査の年です。
前回からインターネット回答が導入された国勢調査。私も先日インターネット経由で回答しましたが、かなり詳細な個人情報を提供することになるため、不安や抵抗を感じる方も多いかもしれません。
NHK政治マガジンに国勢調査の意義や難しさなどについて書かれた記事が掲載されていますので、この機会にご覧になってみてはいかがでしょうか。
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/45504.html