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地球と数学|メルカトル図法を探る その2 - グーデルマン関数

舟形多円錐図法の曲線

前回紹介した舟形多円錐図法は、地球儀の曲面をみかんの皮をむくように分割して平面に写し取る図法です。今回は、その舟形の曲線はどんな曲線なのかを探ってみましょう。

ここで行う緯度・経度・弧長の計算は、メルカトル図法の計算にも役立ちます。

半径rの地球儀(真球)を、n個の舟形に分割するとします。緯度θ[rad]における全周は、n個の舟形の幅に対応します。赤道(緯度0[rad])全周2πrは、n個の舟形のちょうど真ん中を通る赤線に対応します。(下図を参照)

緯度θ[rad]における全周(青線)は、半径がr cosθより2πr cosθです。これがn個の舟形の青線部分に対応するので、1個の舟形の青線の長さは、そのn分の1となります。すなわち、2πr cosθ/nです。

次に、地球儀において赤道から緯度θ[rad]までの弧長(ピンク色)は、半径×θ=rθです。この弧長が、舟形の赤線から青線までの長さに対応します。

θがπ/2[rad](すなわち北極点)では、地球儀の全周は0、赤道上から北極点までの弧長はr×π/2です。これをn個の舟形に移すと、青線部分の長さが0(すなわち点)となり、舟形の縦の長さの半分がr×π/2となります。

では、1個の舟形における縦横の長さから、曲線の正体を解き明かしてみます。

舟形を横向きに置き直し、中心を原点、縦方向をy、横方向をxとします。すると、舟形の曲線上の点(x, y)について、x=rθ、y=2πr cosθ/n÷2=πr cosθ/n。θ=x/rなので、y=πr cos(x/r)/n=πr/n×cos(x/r)となります。

見やすくするためにr=1とすると、y=π/n×cos xとなります。つまり、舟形の曲線はサイン(コサイン)カーブだということがわかります。

舟形多円錐から球の表面積を求める

舟形の曲線がサイン(コサイン)カーブということを利用して、逆に球の表面積を計算することができます。

球の表面積は、n個の舟形の面積です。舟形の曲線がコサインカーブであるため、それを積分すれば面積を求められます。

横向きにした舟形の4分の1は、xが0からπr/2までの範囲でcosを積分すれば求められます。それを4倍して舟形1個分の面積を求め、さらにn個の舟形の面積を求めるためにn倍すれば4πr²が得られます。

これはまさしく、球の表面積の公式S=4πr²に他なりません。

正距円筒図法|東西方向への大きな引き伸ばし

正距円筒図法は、一見するとメルカトル図法とよく似ています。しかし両者を比べてみると、その違いがはっきりします。決定的な違いは、緯度の目盛りにあります。

正距円筒図法では、緯線・経線ともに目盛り間隔が一定です。

一方、メルカトル図法では、経線の目盛り間隔は一定ですが、緯度が高くなるほど緯線の間隔は広がっていきます。この違いについて謎解きをしていきます。

ここで舟形多円錐図法での計算が役立ちます。

緯度θ[rad]では、地球儀の半径はr cosθであり、全周は2πr cosθです。緯度θ=0[rad]の場合、赤道全周は2πrです。

この緯度θにおける全周が、正距円筒図法では横の長さ2πrに変換されます。

つまり、赤道全周は両方の図法で一致しますが、赤道から離れるにつれて、地球儀の2πr cosθが2πrに拡大されるのです。

緯度が高くなるほど、東西方向に強く引き伸ばされる――これが正距円筒図法の特徴です。

正距円筒図法からメルカトル図法へ

したがって、正距円筒図法では南北方向への拡大率は1のままですが、東西方向への拡大率は1/cosθとなります。

これに対し、南北・東西の拡大率を等しくしたものがメルカトル図法です。

正距円筒図法での南北方向への拡大率1を1/cosθとすれば、南北・東西方向の拡大率は1/cosθとなり、一致します。そこで、赤道(すなわち緯度0[rad])から緯度φ[rad]までの、メルカトル図法上の長さを求める必要が生じます。

もし拡大率が一定であれば、単純な掛け算で済みます。しかし実際には、緯度θによって拡大率も変化するため、積分法の出番となります。それが、1/cosθのθを0[rad]からφ[rad]までの定積分です。

φの関数であるこの定積分は、グーデルマン関数gd φ の逆関数gd-1 φとして知られています。

次回は、メルカトル図法の鍵となる計算──グーデルマン関数の逆関数gd-1 φ──に迫っていきます。

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こんにちは、空間情報クラブ編集部です。

今回のコラムでは、舟形多円錐図法やメルカトル図法を通して、地球という球体をどのように平面に変換するのか、その数学的背景を数式を交えながら解説しました。

地図投影法は単なる作図技術ではありません。距離・面積・角度・形状といった地理情報のどの性質を正しく保ち、どの部分にゆがみを許容するのか――その設計思想によって成り立っています。この考え方は、実務で空間情報を扱うGIS(地理情報システム)においても前提となります。

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桜井進(さくらいすすむ)様

1968年山形県生まれ。 サイエンスナビゲーター®。株式会社sakurAi Science Factory 代表取締役CEO。 (略歴) 東京工業大学理学部数学科卒、同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。 東京理科大学大学院非常勤講師。 理数教育研究所Rimse「算数・数学の自由研究」中央審査委員。 高校数学教科書「数学活用」(啓林館)著者。 公益財団法人 中央教育研究所 理事。 国土地理院研究評価委員会委員。 2000年にサイエンスナビゲーターを名乗り、数学の驚きと感動を伝える講演活動をスタート。東京工業大学世界文明センターフェローを経て現在に至る。 子どもから大人までを対象とした講演会は年間70回以上。 全国で反響を呼び、テレビ・新聞・雑誌など様々なメディアに出演。 著書に『感動する!数学』『わくわく数の世界の大冒険』『面白くて眠れなくなる数学』など50冊以上。 サイエンスナビゲーターは株式会社sakurAi Science Factoryの登録商標です。

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