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海洋状況を地図上で確認|海しる(海上保安庁)

周囲を海に囲まれている島国の日本において、海洋情報の把握は重要な課題と言える。

船舶の航行や漁業、マリンレジャー、防災など、さまざまな用途に応じてユーザーが利用できる情報源として注目されるのが、海上保安庁が運用する「海しる」(海洋状況表示システム)だ。

今回は多彩な海洋情報を地図上に可視化できる「海しる」について詳しく紹介しよう。

「海しる」の概要

「海しる」トップページ
(出典:https://www.msil.go.jp/)

「海しる」は海上安全や自然災害対策、海洋環境保全、海洋産業振興など、さまざまな分野での利活用を目的として多種多様な海洋情報を集約した情報サービスで、政府および政府関係機関が収集・提供している海洋情報を一元的に利用できる。

日本の周辺海域だけでなく、衛星情報を含む広域の情報も掲載しており、気象・海象のようなリアルタイムの情報も取得可能で、各種情報を地図上に重ねて表示できる。

背景地図は地理院地図のほか、海底地形図や白地図も選択可能。

地図上にさまざまな情報を重ねて表示できるほか、海洋情報をAPIとして提供する「海しるAPI」も用意しており、JSON形式またはPNG形式でデータを取得できる。

「海しるAPI」
(出典:https://portal.msil.go.jp/)

多彩な海洋情報を地図上で可視化

トップページにアクセスすると「テーマ別マップ」のメニューが表示され、利用目的に応じた情報を選択できる。

以下の8種類のテーマが用意されており、それぞれ表示される情報の組み合わせが異なる。

(1)海洋レジャー
・マリーナ
・潮干狩り場
・藻場
・船舶通航量
・海水浴場
・潮汐
・等深線
・漁業権区画
(2)物流・海運
・港湾
・海流
・航路
・海上警報/予報
・港湾写真
・等深線
・航行警報
(3)水産
・潮流推算
・海流
・海面水温
(4)津波防災
・津波シミュレーション
・津波防災情報図図殻
・港湾/漁港
(5)環境保全
・藻場
・航路
・等深線
・環境脆弱性指標(ESI)
・干潟
・漁業権区画
・船舶通航量
(6)油防除(CeisNet)
・防除資機材
・港湾写真
・火力発電所
・環境脆弱性指標(ESI)
・取水施設
・海岸写真
・UTMグリッド
(7)港湾管理
・航路
・船舶通航量
・海面水温
・漁業権区画
(8)海洋開発
・等深線
・航路
・国立公園
・洋上風力発電(実施・計画)
・海上構造物
・漁業権区画
・国定公園

上記のラインナップの中から見たいマップを選ぶと、その情報が地図上に重なって表示される。

たとえば「水産」を選んだ場合は「潮流推算」「海流」「海面水温」の3種類のレイヤが表示され、左側メニューで各レイヤの詳細情報を確認できるほか、透過率の変更もできる。

最初から利用目的に応じて表示させたいレイヤの組み合わせが用意されているのは、とても便利だ。

一方、トップページで「入口」をクリックすると、レイヤが何も表示されない背景地図のままの状態となり、ここから表示させたいレイヤをひとつずつ選んで自分好みのマップを作ることもできる。

特定のレイヤを表示させたくない場合は左メニューで表示/非表示を選択できるほか、ゴミ箱アイコンを押せばレイヤを削除できる。

「水産」で表示されるレイヤ
(出典:https://www.msil.go.jp/msil/htm/main.html)

豊富な情報を提供

表示可能なレイヤの種類はかなり豊富で分野も多岐にわたっている。たとえば一番上にある「海域名称」では、以下の情報が用意されている。

  • 島名
  • 海底地形名
  • Undersea Feature Names(海底地形名の英語表記)

このうち「海底地形名」を選ぶと、海水面下にある地形の名称が表示され、海底谷(海底斜面にある渓谷)や海丘(海底から1000メートル未満の高所部)、海脚(島や海山の周囲にある緩い斜面)など、通常の地図では表示されることのない、さまざまな地形が隠れていることがわかる。

「海象」や「気象」の項目では、水温や海流、潮流、天気図、風向・風速の情報をリアルタイムに取得できる。

これらの項目を選択すると、地図上に情報が表示されるとともに時間経過を操作できるスライダーも表示され、過去を遡ったり今後の予測情報を調べたりすることができる。

海底地形名
(出典:https://www.msil.go.jp/msil/htm/main.html)

スライダーで水温の変化を調べられる
(出典:https://www.msil.go.jp/msil/htm/main.html)

新しいデータが続々と追加

海しるのトップページを見ると、データの新規掲載情報が載っており、2019年4月の公開後、さまざまな情報が追加されていることがわかる。

たとえば2022年2月には以下のようなデータが追加されている。

  • 「気象」に「降水量(GSMaP)」
  • 「水温」に「海面水温(全球、SGLI)」「海面水温(日本周辺、SGLI)」「海面水温(ひまわり)」「海洋生物・生態系 」
  • 「クロロフィルa濃度」に「クロロフィルa濃度(SGLI、全球)」、「クロロフィルa濃度(SGLI、日本周辺)」、「クロロフィルa濃度(フルディスク、ひまわり)」、「クロロフィルa濃度(日本周辺、ひまわり)」

「安全」に「釣りの事故マップ」も追加された。日本全国の海において、どこでどのような事故が起こったのかがアイコンで表示されており、地図上に表示された発生地点をクリックすると詳細情報がわかる。

どこの海岸で事故が多いのかがひと目でわかるので、釣り人には大いに役に立つ情報だろう。

マリンレジャーから船の運航、防災、海洋ビジネスまでさまざまな用途に利用できる「海しる」を活用し、日本を取り巻く海の状況について理解を深めていただきたい。

降水量(GSMap)
(出典:https://www.msil.go.jp/msil/htm/main.html)

釣りの事故マップ
(出典:https://www.msil.go.jp/msil/htm/main.html)

※本記事で紹介したサービスに関する詳細は、各提供会社様あてにお問い合わせください。

  • この記事を書いた人
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片岡義明(かたおかよしあき)様

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」、「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。

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