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デジタルマーケットプレイス(DMP)|行政IT調達を変えるプラットフォーム

DMP開設の背景

2024年10月31日、デジタル庁は「デジタルマーケットプレイス(DMP)」の正式版カタログサイトを公開した。

DMPは、ソフトウェアのクラウドサービス化が進んでいる中、行政機関によるクラウドソフトウェア(SaaS:Software as a Service)の調達を迅速化し、多様なベンダーの参入により調達先を多様化することを目的としたウェブサイトだ。

デジタル庁は、行政機関・自治体によるユーザー中心のサービス提供や新規テクノロジー導入のための環境整備を目指している。

そのためには、公共調達プロセスの見直しや、調達市場における情報の非対称性を解消し、行政機関・自治体がソフトウェアやサービスを迅速に調達して多様なサービス提供事業者が参入できる仕組みを構築することが重要になる。

そこでDMPの導入を検討し、行政機関やITベンダー、有識者によるオープン・タスクフォースを2022年に実施。その議論を踏まえた提言をデジタル庁情報システム調達改革検討会(デジタル庁主催)に報告し、2023年3月に最終報告書をまとめた。

上記の経緯を経て、2023年度は実証としてDMPテスト版カタログサイトを構築。これまで約250の事業者から300以上のSaaSや導入・運用支援サービスが登録され、このたび正式版カタログサイトを公開するに至った。

通常の情報システム調達(左)とDMPでのSaaS調達(右)の違い
(出典:https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_01common/231207/common02_04.pdf)

DMPの仕組みとメリット

従来の情報システム調達では、行政機関が示す仕様に対して、調達のたびに複数の事業者が提案と価格を提示して事業者が落札する「総合評価方式」が採用されている。

一方、DMPの場合は、デジタル庁とあらかじめ基本契約を締結した事業者はクラウドソフトウェアや導入・運用支援サービスをカタログサイトに登録することでDMPでの調達に参加でき、行政機関はカタログサイトから最適なサービスを選択して個別契約を行う形となる。

行政機関の職員は、調達内容に応じて検索・絞り込みを行うことで登録サービスから目的に合ったものをすばやく見つけることができる。さらにSaaS調達により、ソフトウェア利用開始の迅速化も図れる。

事業者にとっては、多くの行政機関に自社サービスを見つけてもらいやすくなり、公共調達市場に参入しやすくなるメリットがある。

DMPの調達プロセス
(出典:https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_01common/231207/common02_04.pdf)

想定する調達対象

  • クラウドソフトウェア(SaaS)
  • 導入・運用などの支援サービス

想定する行政ユーザー

  • 業務改革を推進する職員
  • バックオフィス業務などのデジタル化を進める職員
  • DX推進組織に所属するプロフェッショナル職員 など

登録手続き

事業者が登録する際には以下が必要となる。

  • デジタル庁との基本契約締結(年度ごとに必要)
  • 全省庁統一資格の取得
  • 法人・個人事業主向け共通認証システム「GビスIDプライム」のアカウント取得

登録する情報は大きく以下の3項目となる。直販と代理店販売では登録フローが異なる。

  • 事業者情報
  • ソフトウェア情報
  • サービス情報

登録手順、登録項目の詳細や公開範囲などは「事業者向けご利用ガイド」の「登録項目ガイドブック.pdf 」に記載されている。

検索機能は2025年1月以降に提供開始

2024年10月31日のリリース時点でDMPが提供しているのは、事業者が登録するための機能で、検索機能や選定関連の機能は2025年1月以降にリリース予定だ。

今後、以下の行政機関向け機能が提供される予定である。

  • フリー検索 ※一般利用者でもログイン不要で利用可能
  • 調達モード検索
  • 検索結果比較
  • 帳票ダウンロード

行政機関とITベンダー双方の課題を解決

デジタル庁によると、現状、行政機関は特定のITベンダーに依存しているケースが多く、より良いサービス導入の機会損失が発生しているという。

たとえば、調達手続きだけで3ケ月以上かかることがあるうえ、受託開発が多いため迅速なシステム導入も難しい状況となっている。

一方、ITベンダー側は行政機関のサービスニーズが不透明で営業コストが高く、手続も煩雑なため、調達プロセスに不慣れな中小・スタートアップ企業は不利になるという課題がある。

DMPを活用すればこのような課題が解消され、行政機関は目的に合ったものをオンラインで検索して簡単にサービスを見つけられるようになる。迅速な調達によってアジャイルなソフトウェア導入も可能となる。

ITベンダー側も低い営業コストで行政機関にリーチでき、調達プロセスが簡素化することで中小さまざまな企業の参入が可能になり市場が多様化する。

なお、DMPは国や地方自治体の職員やSaaS事業者だけでなく、今後一般ユーザーもフリー検索が利用できるようになる予定なので、SaaS導入を検討している企業担当者の参考サイトとしても期待される。

まとめ

従来の調達プロセスの課題

  • 調達期間が長い。
  • 調達手続きが煩雑で専門知識を要する。
  • 書類作成や審査など官民双方の負担が大きい。
  • 新規事業者の参入が難しい。

行政機関側のメリット

  • 調達期間が短縮される。
  • 目的に合ったサービスを簡単・スピーディに見つけられる。
  • SaaSなので導入コストを抑えることができ、利用開始までの期間も短縮される。

事業者側のメリット

  • オンラインで情報提供する形のため、個別の営業訪問、説明会開催や提案書作成の負担が軽減される。
  • 自社のサービスが幅広い行政機関に認知されやすくなる。
  • 調達プロセスの簡素化で、中小企業やスタートアップも参入しやすくなる。

 

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 <参考>デジタル庁ウェブサイト、デジタルマーケットプレイス(DMP)正式版カタログサイト

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片岡義明(かたおかよしあき)様

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」、「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。

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