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GX(グリーントランスフォーメーション)とは|注目の理由・事例・GXリーグを紹介

GX(グリーントランスフォーメーション)とは

GX(グリーントランスフォーメーション)とは、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量削減を実現するための取り組みを意味する。

気候変動の原因といわれているCO2(二酸化炭素)やメタン、N2O(一酸化二窒素亜酸化窒素とも呼ばれる)、フロンガスなどの温室効果ガスは、人々の生活や経済活動によって排出されており、排出量をゼロにすることはできない。

そこで、可能な限り温室効果ガスの排出量を削減し、削減しきれない分を森林などに吸収させることで均衡を図る(排出と吸収がプラスマイナスゼロになる状態を目指す)ことを “カーボンニュートラル” という。

カーボンニュートラルはGXにおける具体的な施策の一つである。

世界中でこのカーボンニュートラルを目指した取り組みが進められており、日本をはじめ欧米各国や中国など約120カ国以上もの国が2030年~2060年までの実現を目標としている。

GXでは、カーボンニュートラル実現による環境保護だけでなく、これを推進することで経済成長との両立を図ることも目指している。

近年では、財務情報だけでなく、環境や社会に配慮した事業を行う企業に投資する「ESG投資」の市場が世界的に拡大しており、その一環として岸田首相は2022年5月、脱炭素のための資金を調達するための “GX債(GX経済移行債)” の検討を表明している。

また、6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」においても、GXが重点投資分野の1つとして挙げられている。

出典:内閣官房「新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/index.html

GXが注目されている背景

GXへの注目が高まっている背景としては、地球温暖化による気候変動が急速に進行していることが挙げられる。

気象庁の発表によると、2022年の世界の平均気温は、基準値(1991~2020年の30年平均値)からの偏差が+0.24℃(速報値)となり、1891年の統計開始以降で6番目に高い値となった。特に1990年代半ば以降は高温となる年が多くなっているという。

このような気温の上昇傾向は今後も続くことが予想されており、これによる経済・社会への影響はより深刻になることが予想されるため、世界各国で脱炭素化が進んでいる。

こうした中、企業はGXに取り組むことで企業価値の向上やエネルギーのコスト削減などを図れるほか、環境保護に関する専門知識を持つ人材の確保にもつながる。

GXに取り組む姿勢をアピールすることで資金調達が容易になるほか、将来的には税制優遇などの措置も期待できる。

GXの取り組み内容や事例

再生可能エネルギー

GXの取り組みの代表的なものとしては、まず再生可能エネルギーの活用が挙げられる。

再生可能エネルギーとは、自然界に存在するエネルギーを活用するもので、化石燃料のように枯渇する恐れがなく、温室効果ガスの発生も少ないものを意味する。

代表的な再生可能エネルギーとしては、以下のようなものが挙げられる。

  • 太陽光
  • 風力
  • 推力
  • 地熱
  • バイオマス

ZEB(ゼブ)

建築業界においては、オフィスビルが消費する年間のエネルギー収支をゼロにすることを目指したZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)※1 の実現に向けて開発が進められている。

断熱技術や照明・空調の効率化を行った上で、太陽光発電やバイオマス発電など再生可能エネルギーを活用することで、エネルギー収支ゼロ達成を目指している。

EV化・FCV化

このほか、自動車などのEV(電気自動車)化・FCV(燃料電池自動車)化なども挙げられる。欧州や中国ではガソリン車を廃止しEVシフトが加速しつつあり、日本の自動車メーカーも対応を迫られている。

GXの取り組み事例

すでに国内外においてGXを実践している企業もあり、サプライチェーンの見直しによりカーボンニュートラルの実現を目標に掲げている企業があるほか、温室効果ガスの排出量よりも吸収量が多い “カーボンネガティブ” の実現を表明している企業もある。

・トヨタ自動車株式会社
2015年、トヨタ自動車株式会社は「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表。自動車が地球環境に与えるマイナス要因をゼロに近づけ、社会にプラスをもたらすことを目指して取り組みを進めている。

・日本電信電話株式会社(NTT)
2020年、NTTは「環境エネルギービジョン」を策定し、自社の再生可能エネルギー利用率を2030年までに30%以上に引き上げることを宣言。2021年には新たな環境エネルギービジョン「NTT Green Innovation toward 2040」を策定し、グループで2040年度までにカーボンニュートラルの実現を目指すとしている。

・Apple
2020年、Appleは2030年までにサプライチェーンの100%カーボンニュートラル達成を宣言。低炭素の再生材料を使用した製品デザインや再生可能エネルギーへの移行継続などに取り組んでいる。

・Google
Googleは2007年にカーボンニュートラルを達成。2030年までに24時間365日の炭素ゼロエミッションを宣言している。

※1 ZEBはNet Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略で、「ゼブ」と呼ばれる。快適な室内環境を実現しながら、建物で消費するエネルギーをゼロにすることを目指した建物のことをいう。

GXリーグ基本構想

経済産業省はGXの取り組みに積極的な企業が温室効果ガスの排出量削減に向けた投資を行いつつ、目標達成に向けた排出量の取引を行う枠組み「GXリーグ」を2023年度に本格稼働する予定としている。

GXリーグでは、2050年のカーボンニュートラルに向けた未来像や、カーボンニュートラル時代の市場創造やルールメイキングを議論する場を提供するとともに、自主的な排出量取り引きを行う場も提供するとしている。

2022年2月に経済産業省が公表したGXリーグ基本構想には440社の企業から賛同表明が集まっており、同省はこれらの賛同企業とともにGXリーグの稼働に向けた議論を進めていく方針だ。

GXリーグについては特設サイトも設けられているので、こちらも参照していただきたい。

出典:GXL FOR WORLD(GXリーグ設立準備公式WEBサイト)
https://gx-league.go.jp/

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<参考>内閣官房ウェブサイト、経済産業省ウェブサイト

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片岡義明(かたおかよしあき)様

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」、「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。

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