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メルカトル図法をわかりやすく解説|Webメルカトルとの違いも紹介

こんにちは、インフォマティクスの空間情報クラブ編集部です。

地図の形がなぜ歪んで見えるのか、不思議に思ったことはありませんか?
本記事では、世界地図によく使われる「メルカトル図法」の特徴をわかりやすく解説します。さらに、Googleマップなどで使われる「Webメルカトル」との違いについても詳しくご紹介します。

メルカトル図法とは

メルカトル図法は、世界地図や航海用地図で広く使用される地図投影法の1つです。この投影法は、地球の表面を平面に投影するために使われており、特に海図や航路図でよく見られます。

メルカトル図法の歴史と発明者

メルカトル図法は、1569年にフランドル(現在のベルギー)出身の地理学者ゲラルドゥス・メルカトルによって発表されました。彼がデュースブルク(現ドイツ)で発表した地図に初めてこの投影法が採用され、その後、広く利用されるようになりました。

この投影法は「正角円筒図法」とも呼ばれ、特に航海や航路の計画に役立つ地図として重宝されてきました。特徴的なのは、地球を楕円体から円筒に投影し、緯度・経度を直線的に描くことです。

メルカトル図法の特徴と限界

メルカトル図法では、地球を楕円体ではなく引き伸ばして表現するため、高緯度地域(北極や南極付近)が実際よりも大きく表示されてしまいます。たとえば、グリーンランドやカナダなどは地図上で非常に大きく描かれるため、実際の面積とのギャップが生じます。

下の図に示されているように、メルカトル図法の地図では緯度・経度の線が均等に配置されているものの、北や南に行くほど縦方向に引き伸ばされているのが分かります。

メルカトル図法の特徴

メルカトル図法には以下のような特徴があります。

  • 図法
    円筒図法。丸い地球に円筒をかぶせて地図を投影しています。
  • 経線
    経線はそれぞれ等間隔、平行に表現されます。
  • 緯線
    緯線は互いに平行に表現されますが、緯度が赤道から離れるにしたがって間隔は大きく表現されます。
  • 用途
    地図上の2点を結んだ線が等角航路となるため、主に航海で使用されます。(等角航路とは、経線に対して一定の角度を保って進行する経路。最短距離より遠回りになりますが、目的地に到着するための進行方向が分かりやすい特徴があります。)

メルカトル図法のメリット・デメリット

メリット

  • 方向を一定に保てる
    メルカトル図法では、経緯線が直角に交差しているため、2点間を結ぶ直線が一定の角度で進行します。これにより、航海中に風や潮流の影響を受けても方向を一定に保ちやすい利点があります。
  • 等角航路が描ける
    2点間を結んだ直線が常に一定の角度で進むため、目的地までの航路を簡単に設定できます。この「等角航路」は、目的地に到達しやすいという利点があります。
  • 位置を気にせず航海できる
    昔は航海中に現在位置を正確に把握することが難しかったため、等角航路が簡単に引けるメルカトル図法は、位置確認しなくても目的地に向かって進むことができて便利でした。

デメリット

  • 形状や面積が歪む
    メルカトル図法では、極地方に近づくにつれて地図上の面積や形状が歪みます。例えば、北極に近いグリーンランドが実際よりも大きく描かれ、オーストラリアよりも大きく見えることがあります。
  • 極地方の拡大
    北極や南極に近づくと、緯線の長さや経線が大きくなり、地図上では極地方が広がって表示されます。これにより、地球全体の正確な比例が失われます。
  • 最短距離(大圏航路)ではない
    メルカトル図法では、2点間の最短距離を示す大圏航路が描けません。大圏航路は燃料消費や移動時間の面で有利ですが、移動中に航行方向を調整し続ける必要があり、ナビゲーションシステムがない時代には実用的ではありませんでした。

Webメルカトルとは

メルカトル図法の1つであるWebメルカトルは、特定の範囲内で地図を投影する方法です。

Webメルカトルでは、緯度約85度以上の北極や南極周辺の地域は表現できません。これは、地球全体を正方形に表現するために、85度以北・以南の地域を除外しているためです。

Webメルカトルの特徴

Webメルカトルは、もともとGoogleによって開発された投影法で、Googleマップで利用されています。

この投影法では、地球全体を正方形に表現し、それを2等分した場合も正方形のままであるという特徴があります。地図の範囲ごとにその正方形を分割し、それぞれを同じサイズの画像として事前に作成しておきます。

地図を表示したいクライアントは、ブラウザ内でこれらの分割された画像をダウンロードして並べることで、地図をすばやく表示できます。

Webメルカトルは、最初にGoogleによって策定され、その後、Bing Mapsや地理院地図など、さまざまなWebマップサービスでも採用されました。現在では、Webマップの標準的な投影法として広く使用されています。

また、Webメルカトルはラスター形式だけでなく、ベクター形式での地図表示にも対応しています。

GoogleメルカトルEPSGコードと「900913」の由来

Webメルカトルは、かつて「Googleメルカトル」とも呼ばれていました。現在、この投影法のEPSGコード(投影法を識別するためのコード)は「3857」ですが、以前は「900913」でした。このコードは、googleの名前をもじったものだと言われています。

おわりに

Webメルカトルは世界を同じ投影で表示するための投影法で、主にWebマッピングシステムで使われている投影法ですが、一般的なベクターGISでもWebメルカトルを利用することができます。

地図をどのような投影法で表現すればよいか迷ったときは、Webメルカトルで表現すると、世界中を1つの投影法で表現できるため、間違いも起こりづらくてよいかも知れません。

GoogleおよびGoogleマップはGoogle Incの商標または登録商標です。Bingは米国 Microsoft Corporationの米国及びその他の国における登録商標または商標です。
<参考>国土地理院ウェブサイト

 

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