(株)インフォマティクスが運営する、GIS・AI機械学習・数学を楽しく、より深く学ぶためのWebメディア

GISの住所検索機能とは? データ選定や実装のポイントをわかりやすく解説

こんにちは、インフォマティクスの空間情報クラブ編集部です。

「GISで住所検索をしたいけれど、地番や住居表示の違いがわからない...」
「住所データってどうやって準備すればいいの?」
こんな疑問をお持ちではありませんか?

本記事では、GISにおける住所検索の仕組みから住所データの種類や選び方、実装時の注意点までわかりやすく解説します。

GISの住所検索機能とは

住所検索とは、文字で入力された住所情報をもとに、該当場所の地図上の位置を特定・表示する機能です。

日常使っているWeb地図やカーナビでもおなじみの機能ですが、GIS(地理情報システム)では以下のような場面で活用されます。

  • 自治体や官公庁での災害対策マップの作成
  • 不動産物件の位置情報確認
  • 道路・上下水道・電柱などのインフラ管理
  • 顧客分布分析や営業活動のエリア分析

GISに住所検索機能が備わっていることで、ユーザーが場所を探す手間が大幅に軽減され、正確な位置情報の取得が可能になります。

GISでは以下の手順で住所を絞り込んでいくことができます。

  1. 都道府県名から「神奈川県」を選択
  2. 神奈川県内のリストから「川崎市」を選択
  3. 絞り込まれた町名・大字などから「幸区」「大宮町」と順に選択
  4. 番地を指定

住所検索例

住所の構造と住居表示・地番の違い

日本の住所は階層構造になっており、一般的には以下の順で構成されています。

都道府県 > 市区町村 > 大字(町名) > 丁目 > 番地 > 号

ただし、この構成はすべての地域で統一されているわけではありません。住所検索を正しく行うためには、「住居表示」と「地番」という2つの住所体系の違いを理解することが重要です。

住居表示とは?

  • 一般的に使われる「郵便住所」で、住民票や郵便物に記載される住所
  • 街区(ブロック)や建物の入り口に基づいて割り振られている
  • 都市部を中心に整備されている

地番とは?

  • 土地の登記簿に記載される「法的な住所」
  • 実際の土地の境界に基づいて割り振られている
  • 郊外や農村部では地番のみで構成される地域も多い

GISで住所検索を実装する際には、どちらの住所体系に対応するかによって必要なデータや検索ロジックが変わるため、注意が必要です。

住居表示がない地域の検索方法は?

地番表示の地域では、番地の数値だけで住所が構成されるケースがあります。
たとえば、「大字○○ 1234番地」のように、大字名+地番で表現される形です。

このような場合、街区や号の情報がなく、住居表示地域と同じ階層構造が使えません。
GIS側では、地番情報をもとに位置を特定するために、以下のようなデータが必要になります。

  • 地番図(筆ポリゴン)
  • 地番と座標を結びつけるデータベース
  • 補完情報(住宅地図など)

住居表示例

GISで住所検索を実現するには?

GISに住所検索機能を組み込むには、主に以下のステップが必要です。

必要なデータの準備

住所検索では、検索対象となる「住所データベース」と、該当地点を地図上に表示するための「座標情報」が必要です。代表的なデータソースには以下のようなものがあります。

データソース 種類 特徴
G空間情報センター 公開住所データ 無料、基本情報中心
国土地理院 基盤地図情報 公的、精度は中程度
民間地図会社 商用住所データ 高精度、有料

座標精度の選び方

  • 家屋レベルの精度が必要 ⇒高精度な民間データを利用
  • 街区レベルで十分 ⇒無料データでも対応可能

用途に応じて、精度とコストのバランスを取ることが重要です。

住所検索機能の実装フロー

住所検索機能を実装するフローは大まかに以下となります。

  1. 住所階層ごとのマスターデータを準備
  2. ユーザーインターフェースで階層選択式にする
  3. 入力住所をジオコーディングして座標に変換
  4. 地図上にピン表示 or ズーム移動

日本の住所は表記ゆれ(例:一丁目 vs 1丁目)があるため、検索時にはそれらを統一・補正する処理(正規化)が重要になります。

なお、デジタル庁が整備を進めている「アドレス・ベース・レジストリ」も、今後の住所検索やシステム連携の基盤として注目されています。

海外の住所方式との違い

日本の「街区方式」に対して、欧米では「道路方式」が主流です。

街区方式(日本) 道路方式(欧米)
街区や番地で住所を表現 道路名+番地で表現
座標データが必要 線情報と番地で推定可
複雑な階層 シンプルで自動処理しやすい

欧米方式はGISとの相性がよく、番地の位置も道路線上から算出できます。
日本の住所検索では、多階層構造・地番問題・非標準表記など、より高度なデータ処理が求められるのが現状です。

街区方式

道路方式

まとめ

住所検索は「住所の正しい理解」と「適切なデータ選び」がカギ

GISでの住所検索は、ただ文字を入力して場所を探すだけの機能ではありません。住所の仕組みや表記の違い、地番の取り扱いや使用データの精度によって検索結果の正確さやユーザーの使いやすさが大きく変わります。

GISを活用したシステム構築を検討中の方は、ぜひ一度GISのプロにご相談ください。

インフォマティクスからのお知らせ

インフォマティクスのGISソリューション

インフォマティクスでは、さまざまな業種に向けたGISソリューションを多数提供しています。街区方式にも地番方式にも対応したデータ構造、使いやすいインターフェース、既存システムとの連携など、お客様の実務に即した柔軟な設計が可能です。

▶開発実績一覧はこちら
▶業務別GISソリューションはこちら

GISやAI機械学習、XR技術を活用した業務DX化に関するご相談も承っています。お気軽にお問い合わせください。

相談する(無料)


あわせて読みたい