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幾何補正とは? GISでの補正手順やオルソ補正との違いを解説

こんにちは、インフォマティクスの空間情報クラブ編集部です。

本記事では、紙地図や空中写真など位置情報を持たない地図データをGISで正しく利用するための技術「幾何補正」についてわかりやすくご紹介します。

幾何補正とは

幾何補正とは、位置情報を持たない地図や画像(紙地図、空中写真など)を、実際の座標と一致するように補正する処理です。

画像に含まれる歪みやズレを取り除き、GISで利用できる正確な地図データへ変換することで、電子地図と正確に重ね合わせることが可能になります。

例えば、以下のような場面で活用できるようになります。

  • 古地図を電子地図と重ねて都市の変遷を比較
  • 災害前後の航空写真を位置合わせして被害を分析
  • ドローン撮影画像をGIS上で位置指定して資源調査に活用

オルソ補正との違い

オルソ補正は、カメラの角度や地形の起伏による歪みを正射投影(オルソ投影)を使って補正する処理です。幾何補正の一種ですが、地表の高低差を考慮する点が特徴です。

補正後の画像は「オルソ画像」「オルソ写真」と呼ばれ、都市計画や災害分析などに利用されます。

補正の種類 対象 補正内容
幾何補正 紙地図・空中写真 ズレ・歪みの修正(座標に合わせる)
オルソ補正 空中写真 地形の起伏やカメラの角度を補正

幾何補正の具体例

わかりやすいように、紙地図を例に考えてみましょう。
現在ではGISが普及し電子地図が利用されていますが、それ以前は地図といえば紙地図がほとんどでした。

しかし、コンピュータの発展とともに地図がGISで扱われる機会が増え、紙地図に代わり電子地図が普及してきました。とはいえ、紙地図をデジタル化してGISで利用したいというケースはまだまだ多くあります。

このような場合、まず紙地図をスキャニングなどにより電子データに変換し、コンピュータに読み込めるようにします。しかし、紙地図をスキャニングしただけでは単なる画像データであり、位置情報を持ちません。

さらに、スキャンデータには紙地図の折れや歪みが含まれていることもあります。そういったデータを正しい位置に読み込むため、「画像上のこの位置が地図上のどの場所に対応するか」をGISに指示する必要があります。

この時、幾何補正という手法を使って修正します。

幾何補正は、位置情報を持たない空中写真の画像データを電子地図の位置に対応させる場合にも利用します。

位置情報を持たない空中写真データ

幾何補正の手順

位置情報を持たない空中写真を、位置情報を持つ電子地図を使って正しい位置に補正する手順を紹介します。

前処理|位置を指示して補正

位置情報を持たない空中写真(左)、位置情報を持つ電子地図(右)

  1. まず地図上の目印となる「地物」(道路の交差点や建物の角など)をいくつか選びます。補正に使う地物はわかりやすく目立つものがよいでしょう。
  2. 空中写真と電子地図の両方に共通して存在する地物を指定し、それぞれの位置を対応づけることで補正を行います。下図では、赤、青、緑の×マークがそれぞれ同じ位置であることを指示しています。

このようにして、画像のズレを修正し、正確な位置情報を持つデータへと変換されます。

補正結果

補正した結果、位置情報を持たない空中写真に位置情報を持たせることができました。

上記の方法のほか、空中写真や紙地図上に座標値が直接書き込まれている場合は、座標値を基準に補正する方法もあります。

おわりに

GISの普及以前に作成された紙地図や、位置情報を持たない航空写真データは多数あります。幾何補正を行うことで、過去に作成された紙地図や位置情報を持たない空中写真も、現在のGISデータと正確に重ね合わせて分析できます。

歴史的な地図資料や災害記録の活用など、幾何補正は地理空間情報の価値を広げる重要なステップとなります。

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<地図データ出典>昭文社 MAPPLE10000、国土地理院の正射画像(オルソ空中写真)
<参考>
国土地理院ウェブサイト
宙畑ウェブサイト

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