(株)インフォマティクスが運営する、GIS・AI機械学習・数学を楽しく、より深く学ぶためのWebメディア

自然言語処理(NLP)とは?仕組み・活用例・課題をわかりやすく解説

こんにちは、インフォマティクスの空間情報クラブ編集部です。

近年、生成AIや音声アシスタント、チャットボットなど、自然言語を活用したサービスが急速に広がり、企業の業務効率化や顧客体験の向上に大きく貢献しています。これらの技術の中核を担っているのが「自然言語処理(NLP)」です。

本記事では、自然言語処理の基本的な仕組みやビジネスでの活用例、現在直面している課題、今後の展望までをわかりやすく解説します。自然言語処理を活用して業務改善を図りたい方や、AIとの関係性を理解したい方にとって実践的なヒントとなる内容です。

自然言語処理とは?その目的と重要性

近年、AI技術の進化により、私たちの生活やビジネスシーンにおいてチャットボットや音声アシスタント、機械翻訳など、自然言語を活用したサービスが急速に普及しています。こうした技術の中核にあるのが「自然言語処理(NLP: Natural Language Processing)」です。

自然言語処理とは、人間が日常的に使う言葉(自然言語)をコンピュータが理解・解析・処理できるようにするための技術領域です。人が話す言葉は、文脈や語感、曖昧さを含んだ複雑な情報を持っています。これを機械が理解し、適切に応答・処理できるようにすることが、NLPの目的です。

関連

【自然言語とは】

自然言語とは、普段私たちがコミュニケーションをとる際に使う言葉のことをいいます。自然言語に相対する言語として「形式言語」「人工言語」と呼ばれるものがあります。

  • 自然言語:人の話し言葉や書き言葉
    構文や意味合いのルールがゆるいので、利用者が文脈によって解釈のルールを変えられる。
  • 人工言語、形式言語:数式やプログラミング言語など人工的、形式的に定義された言語
    構文や意味が明確・厳密に定義されており、利用者はそのルールに従わなくてはならない場合が多い。

NLPと機械学習/AIとの関係は?

自然言語処理はAI(人工知能)技術の一領域であり、特に「言語データの理解と生成」にフォーカスしています。NLPの処理には、統計的な分析やルールベースの手法に加えて、機械学習やディープラーニングの活用が一般的になっています。

例えば、OpenAIが開発したChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)は、膨大なテキストデータを学習し、文脈を考慮した自然な文章を生成する能力を備えています。こうした技術革新により、従来は困難だった文脈理解や多義語処理の精度が格段に向上しています。

自然言語処理の仕組み|NLPが得意な処理 4ステップ

自然言語処理では、言葉の理解を以下の4ステップで段階的に進めていきます。

  1. 形態素解析
  2. 構文解析
  3. 意味解析
  4. 文脈解析

形態素解析とは?

形態素解析は、文章を意味のある最小単位である「形態素」に分解する工程です。例えば「私は白い猫と犬を飼う」という文を、以下のように分解します。

私(名詞)|は(助詞)|白い(形容詞)|猫(名詞)|と(助詞)|犬(名詞)|を(助詞)|飼う(動詞)

この工程により、単語ごとの役割や意味の把握が可能となり、次の構文解析ステップへの基盤が整います。

構文解析とは?

構文解析では、形態素解析で分解された単語群の関係性(係り受け)を判断し、文の構造を明らかにします。例えば「私は白い猫と犬を飼う」という文は、複数の解釈が成立します。

「私は(白い猫と犬)を飼う」
「私は(白い猫)と(犬)を飼う」
「私は(白い猫)と、(犬を飼う)」

このように、正確な意味を導くためには構文の関係性を精密に把握する必要があります。

意味解析とは?意味解析が難しい理由は?

意味解析では、構文構造をもとに文の「意味合い」を推測します。しかし自然言語には、多義語やあいまいな表現が多く、1つの文章に複数の意味が含まれることがよくあります。

例えば「かえる」という単語は、「生き物のカエル」か「帰る/変える/買える」といった動詞なのか、文脈によって異なります。こうした文意の適切な解釈は、人間にとっては直感的でも、コンピュータには非常に高度なタスクです。

文脈解析とは?文脈解析でChatGPTが進化した理由

文脈解析は、複数の文の流れや会話の前後関係を理解する工程です。従来のNLP技術では文脈理解が難しく、単文の処理に限界がありました。しかし、大規模言語モデル(LLM)の登場により、前後の文脈を保持しつつ、自然な返答や文章生成が可能となっています。

ChatGPTはその代表例で、質問の意図や会話の流れを加味して、的確な応答を生成する能力を持ち、従来型のチャットボットとは一線を画しています。

NLPはどんな製品やサービスで使われている?

自然言語処理は、私たちの身の回りのさまざまな製品やサービスに組み込まれており、業務効率化やユーザー体験の向上に貢献しています。以下は代表的な活用例です。

翻訳サービス

Google翻訳やDeepLのような機械翻訳サービスでは、文の構造や意味を解析し、多言語への自動翻訳が行われています。短文やシンプルな構文であれば、すでに人間に近いレベルでの翻訳が可能になってきています。

音声アシスタント/チャットボット

AppleのSiri、Amazon Alexa、Googleアシスタントなどの音声サービスは、ユーザーの発話を音声認識し、NLPによって意図を解析して応答します。最近では、企業のカスタマーサポート業務におけるチャットボット導入も進んでいます。

入力支援(かな漢字変換)

日本語入力システム(MS-IME、Google日本語入力など)は、ユーザーが打ち込む文字列を文脈に応じて変換・予測する機能を備えています。例えば、「はし」を入力した際に「橋」「箸」「端」などから最適な候補を選ぶ機能も、NLPによる解析が活用されています。

テキストマイニング

SNSやアンケートなど、非構造データであるテキストからキーワードや感情を抽出し、傾向分析を行う手法です。マーケティング、顧客満足度分析、ブランドモニタリングなどに広く応用されています。

NLPの課題は何?どう改善されている?

自然言語処理の最大の課題は、「言葉の曖昧さ」や「文脈の複雑さ」を正確に理解することです。

曖昧さ・多義語の解消

人間の言語は、1つの単語が複数の意味を持つことが一般的です。コンピュータは、前後の文脈や関連語を分析することで意味の特定を試みますが、まだ完全とは言えません。

この課題に対しては、文脈の広がりを持たせた言語モデル(TransformerBERTなど)の導入が進められており、意味の曖昧さを統計的に補完するアプローチが成果をあげています。

文脈理解の困難さ

文章全体の流れや、話し手の意図、背景知識などを考慮した文脈理解は、依然として難易度の高い課題です。特に、長文や会話の中での意味の変化、含意の理解などは、従来のルールベース手法では対応しきれませんでした。

近年では、ChatGPTなどのように、大規模な事前学習と高度な文脈保持能力を備えたAIによって、これまで困難とされていたタスクにも柔軟に対応できるようになってきています。

NLPが向かう未来とは?

自然言語処理の進化は、今後さらに加速していくと考えられています。特に注目すべきは、大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)の発展です。

これまでのNLPは、ルールや特徴量の設計に大きく依存していましたが、LLMは膨大なテキストデータを自己学習し、文脈を保持した文章生成や意図推定が可能となっています。

これにより、NLPの活用範囲は対話AIや翻訳だけに留まらず、文書要約、法務文書の解析、プログラム生成、検索エンジンの高度化など、さまざまな業界・業務へと広がりつつあります。

また、NLPは単なる「言葉の処理」だけでなく、知識の構造化や意思決定支援の分野にも応用が期待されています。生成AIとの融合により、人とAIがより自然に協働する社会の実現が近づいていると言えるでしょう。

インフォマティクスからのお知らせ


【インフォマティクスのデータ変換技術】
インフォマティクスは、AI機械学習を使って住所やランドマーク、郵便番号など場所の情報を含んだテキストデータから位置情報付きの地図データを生成できる変換・分析技術を提供しています。

データ変換・分析技術について詳しくはこちら


AI機械学習を使ったシステムに関するご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。

相談する

<参考>
『自然言語処理の基本と技術』(翔泳社/小町守(監修)、奥野陽(著)、グラム・ニュービッグ(著)、萩原正人(著))

書籍紹介

ゼロから作るDeep Learning 2―自然言語処理編

コンピュータ専門書のベストセラー『ゼロから作るDeep Learning』の続編。自然言語処理や時系列データ処理にフォーカスし、ディープラーニングを使ってさまざまな問題に挑みます。

word2vecやRNN(リカレントニューラルネットワーク)、LSTMやGRU、seq2seqやAttentionなど最先端技術を実装レベルでマスターすることを目的とした書。平易で分かりやすい言葉で説明されています。

この本を詳しくみる

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

2019年ビジネス書大賞を受賞したベストセラー。昨今のAIへの過大評価や、過剰に危機感をあおる風潮に対して、AIの得意な分野、不得意な分野は何かが論理的にわかりやすく解説されています。

「いまの学生は暗記や計算を得意としているが、基本的な読解力に欠けている。暗記や計算はAIの得意分野であり、このままだと彼らの仕事はAIに代替されてしまう。」と警鐘を鳴らし、意味を理解する、読解力を向上させる教育の重要性を説いています。

 

この本を詳しくみる

あわせて読みたい