こんにちは、インフォマティクスの空間情報クラブ編集部です。
本記事では「座標系とは何か」や、座標系の中でもよく使われる「平面直角座標系」についてわかりやすく解説します。測量やGISに関わる方にとって必須の知識ですので、ぜひ参考にしてください。
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座標系とは
座標系とは、地球上のある地点の位置を、座標値(緯度・経度、またはXYなど)を用いて表すためのルール(基準)です。
一般的に利用される座標系には、大きく以下の2つがあります。
- 緯度経度座標系(球形座標系)=地理座標系
- XY座標系(数学座標系)=投影座標系
緯度経度座標系(球形座標系)
赤道からの角度である「緯度」と基準となる子午線からの角度である「経度」によって位置を示す座標系です。地理座標系とも言われます。
広範囲の地域を扱う小縮尺の地図に向いています。
XY座標系(数学座標系)
地球を平面に投影した図面上で、原点からの距離(X座標・Y座標)によって位置を示す座標系です。代表的な例として、「平面直角座標系(19系)」や「UTM座標系」などがあります。投影座標系とも言われます。
例えば、実際の場所を座標系でどう表現するかを「インフォマティクス本社」を例に見てみましょう。
住所 |
神奈川県川崎市幸区大宮町1310 ミューザ川崎セントラルタワー |
緯度経度(日本測地系2000) |
35.531225°,139.694610° |
XY座標(平面直角座標系IX系) |
-12580.147613285451m,-51998.69848658327m |
平面直角座標系とは
地球は球体に近い曲面ですが、狭い範囲の測量ではその湾曲の影響(誤差)が小さいため、平面として位置を計算したほうが効率的です。
平面直角座標系とは、平面として計算を行えるように定められた座標系です。比較的狭い範囲を扱う場合に適しています。
平面直角座標系は、日本を19ゾーンに分割して横メルカトル図法で投影しており、各ゾーンには座標原点が設定されています。原点を通る子午線がX軸(北方向)、それと直交する方向がY軸(東方向)として定義されています。
各座標系(系番号:1~19)の原点の値は、それぞれX=Y=0メートルとなります。各系番号の座標系原点の緯度経度や適用区域など具体的な定義は国土交通省告示で決められています。
より詳しい定義については、国土交通省が公開している「平面直角座標系(平成十四年国土交通省告示第九号)」をご覧ください。各系の座標系原点の緯度経度や適用区域が掲載されています。
平面直角座標系の系番号と対象地域
平面直角座標系の各系の原点の位置、対象地域は以下のとおりです。例えば、東京の地図を扱う場合は「平面直角座標系9系」を使用します。
系番号 |
適用範囲 |
1 |
長崎県・鹿児島県(北方北緯32 度南方、北緯27 度西方、東経128 度18 分東方、東経130 度の区域内) |
2 |
福岡県・佐賀県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県(1 系の区域を除く) |
3 |
山口県・島根県・広島県 |
4 |
香川県・愛媛県・徳島県・高知県 |
5 |
兵庫県・鳥取県・岡山県 |
6 |
京都府・大阪府・福井県・滋賀県・三重県・奈良県・和歌山県 |
7 |
石川県・富山県・岐阜県・愛知県 |
8 |
新潟県・長野県・山梨県・静岡県 |
9 |
東京都(14 系、18 系、19 系の区域を除く)・福島県・栃木県・埼玉県・千葉県・群馬県・神奈川県 |
10 |
青森県・秋田県・山形県・岩手県・宮城県 |
11 |
小樽市・函館市・伊達市・胆振支庁管内のうち有珠郡・檜山支庁管内・後志支庁管内・渡島支庁管内 |
12 |
札幌市・旭川市・稚内市・留萌市・美唄市・夕張市・岩見沢市・苫小牧市・室蘭市・士別市・名寄市・芦別市・赤平市・三笠市・滝川市・砂川市・江別市・千歳市・歌志内市・深川市・紋別市・富良野市・登別市・恵庭市・北広島市・石狩市・石狩支庁管内・網走支庁管内のうち紋別郡・上川支庁管内・宗谷支庁管内・日高支庁管内・胆振支庁管内(有珠郡及び虻田郡を除く)・空知支庁管内・留萌支庁管内 |
13 |
北見市・帯広市・釧路市・網走市・根室市・根室支庁管内・釧路支庁管内・網走支庁管内(紋別郡を除く)・ |
14 |
東京都のうち、北緯28 度から南であり、かつ東経140 度30 分から東であり東経143 度から西である区域 |
15 |
沖縄県のうち、東経126 度から東であり、かつ東経130 度から西である区域 |
16 |
沖縄県のうち、東経126 度から西である区域 |
17 |
沖縄県のうち、東経130 度から東である区域 |
18 |
東京都のうち、北緯28 度から南であり、かつ東経140 度30 分から西である区域 |
19 |
東京都のうち、北緯28 度から南であり、かつ東経143 度から東である区域 |
平面直角座標系の地図データをGISで扱う
GISで地図データを扱う場合、その地図データがどの座標系で作成されたデータであるかを正しく認識する必要があります。
地図データが作成された座標系と異なる座標系で読み込むと、ズレが生じるのでご注意ください。
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SISに平面直角座標系の地図データを読み込む
平面直角座標系で作成された数値地図2500のデータをSISで読み込むと、地図データの内容を元にその座標系が判断され、自動的に正しい座標系で読み込まれます。
下図では、神奈川県のデータを読み込んでいるので「平面直角座標系(2000)09第Ⅸ系」が自動的に設定されます。
SISでは異なる座標系の地図と重ね合わせても、正しい位置で表示することができます。
補足1:座標参照系(CRS)とは|座標系との違い
座標系と似た用語に座標参照系(CRS)があります。
CRSは地球上の位置を表す方法を定義したもので、座標系に測地系や投影法、単位、原点などを加えて「その座標が地球上のどこを指しているか」を決めます。地球上の場所を示すための総合的な仕組みと言えます。
CRSの構成要素は以下の通りです。
- 楕円体・測地系:地球の形と基準位置を定義。WGS84や日本測地系など
- 投影法(XY座標系の場合):地球曲面を平面に変換するアルゴリズム
- 単位・原点:角度(°)または長さ(m)、UTMなら中央経線など
GIS(地理情報システム)で異なるCRSを重ね合わせると座標がズレてしまいます。正確な解析や計測(距離・面積・バッファなど)のためには、必ず同一CRSに変換(再投影)する必要があります。
日本国内では、UTMゾーンや日本測地系など地域に最適なCRSを使うことで精度が高まります。一方、GPS/GNSSで広く使われる WGS84(EPSG:4326) は、世界的な標準地理CRSです。
座標系、平面直角座標系との関係は以下のように表すことができます。
座標参照系(CRS) > 座標系 > 平面直角座標系
補足2:大縮尺・小縮尺の違い
地図や座標系の説明でよく使われる「大縮尺」「小縮尺」という言葉は、直感と逆に感じられることがあります。以下の表でその違いを簡単に整理してみましょう。
項目 | 大縮尺 | 小縮尺 |
縮尺の数値 | 例)1/500、1/2500 | 例)1/50000、1/250000 |
表現範囲 | 狭い範囲(建物、街区レベル) | 広い範囲(都市全体、県、国など) |
地図上の詳細度 | 高い(細かい情報が描かれる) | 低い(地形の概要や位置関係が主) |
用途 | 測量、都市計画、現地調査など | 国土の概要図、防災計画、交通図など |
座標系との関係性 | XY座標系(平面直角座標系など)に適合 | 緯度経度座標系に適合 |
大縮尺、小縮尺の「大・小」は、数値上の分母の大きさを指します。「1/500」は「1/50000」よりも大縮尺(=詳細)ということになります。
おわりに
本記事では、「座標系」とその中でも国内で広く使われている「平面直角座標系」を解説するとともに、GISで座標系を正しく扱う重要性にも触れました。測量や地図作成、業務でGISを扱う方は、基本知識としてぜひ押さえておきましょう。
<地図データ出典>国土地理院発行の数値地図2500(空間データ基盤)を使用したものです。
<参考>国土地理院ウェブサイト
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