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誰もが安全・快適に移動できる街へ。国土交通省「ほこナビ」プロジェクトをご紹介

国土交通省は2025年5月23日、歩行空間ナビゲーションデータプラットフォーム(ほこナビDP)を開設するとともに、3次元地図整備システム(試行版)を公開。2025年10月24日には都営地下鉄大江戸線7駅の歩行空間ネットワークデータも公開した。

本記事では、国土交通省が推進するプロジェクト「ほこナビ」と、それを支えるデータプラットフォームについて紹介する。

歩行空間ナビ・プロジェクト(ほこナビ)の概要

歩行空間ナビ・プロジェクト(ほこナビ)とは、歩行空間を利用する人やロボットなどの多様なニーズに対応するデータのオープンデータ化を推進するプロジェクトである。

段差を回避した経路探索やナビゲーション、バリアフリー施設の情報提供といったサービスを実現し、誰もが自律的かつ安心して移動できる社会の構築を目指している。

同プロジェクトでは、以下のようなテーマごとにワーキンググループを設置し、議論・検討を進めている。

  • 移動円滑化データ
  • 3次元地図
  • 移動支援データのオープンデータ化と利活用促進 など

歩行空間ナビ・プロジェクト(ほこナビ)
<出典>https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/soukou/sogoseisaku_soukou_mn_000002.html

 

ほこナビ 全体イメージ
<出典>https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/soukou/gaiyou.pdf

ほこナビDPの概要

ほこナビDPとは、歩行空間に存在するバリア情報やバリアフリー施設に関する情報を活用するためのデータプラットフォームである。

行政・民間事業者・市民がデータの整備や更新に参加できる仕組みを整えることで、多様なデータのオープンデータ化と公開を目指している。

ほこナビDPのウェブサイトでは、歩行空間における移動支援サービスに関連するオープンデータとして「歩行空間ネットワークデータ」をダウンロードできるほか、歩行空間のバリア情報を表わすためのデータ整備仕様や、データ整備に活用できる各種ツールも提供している。

歩行空間ネットワークデータは、歩行空間の形状を点(ノード)と線(リンク)で表わし、リンク延長や経路の構造・種別、段差、幅員、勾配といった属性情報を付加してデータ化している。

ほこナビDPでは、2024年度に改定された「歩行空間ネットワークデータ整備仕様」に基づき、幅員・縦断勾配・段差に関する情報をランク区分に変換したデータをダウンロードできる。

2018年3月版のデータ整備仕様に準拠したデータ、あるいはそれ以前の歩行空間ネットワークデータや施設データを利用する場合は、「歩行者移動支援サービスに関するデータサイト(バリアフリー・ナビプロジェクト)」からダウンロードできる。

ほこナビDP|オープンデータ

ほこナビDPのトップページ上部メニューから「オープンデータ」を選択すると、オープンデータのページが表示される。ここには以下の2つのメニューが用意されている。

カタログサイト

歩行空間の移動支援サービスに関連するデータを取得できる。2025年11月24日現在、以下の28エリアの歩行空間ネットワークデータが登録されている。

  • 台東区上野駅周辺
  • 赤羽駅周辺
  • 渋谷区南部
  • 大阪府大東市・住道駅周辺
  • 東京都府中市
  • 東京都渋谷区・渋谷駅、千駄ヶ谷駅周辺/東京都新宿区・新宿駅周辺
  • 東京都新宿区・新国立競技場周辺
  • 東京都江東区・新木場駅周辺
  • 東京都江東区・国際展示場周辺
  • 東京都江東区・有明テニスの森公園周辺
  • 東京都江東区・東京テレポート駅周辺
  • 神奈川県川崎市溝口駅周辺地区
  • 東京都港区・お台場海浜公園周辺
  • 香川県高松市
  • 福井県鯖江市
  • 神奈川県川崎市新川崎・鹿島田駅周辺地区
  • 神奈川県川崎市新百合ヶ丘駅周辺地区
  • 神奈川県川崎市武蔵小杉駅周辺地区
  • 渋谷区千駄ヶ谷駅周辺
  • 港区大門駅周辺
  • 神奈川県川崎市川崎駅周辺地区
  • 池袋駅周辺
  • 東京駅周辺
  • 新横浜地区
  • 新宿駅周辺
  • 姫路市
  • 会津若松市
  • 皇居外苑、日本武道館を含む千代田区、中央区周辺

ほこナビDP
オープンデータページ
<出典>https://www.hokonavi.go.jp/

カタログサイト
<出典>https://ckan.hokonavi.go.jp/dataset/

準拠仕様

歩行空間ネットワークデータの整備仕様書を確認できる。2024年7月に改定された新仕様と、2018年3月に公表された旧仕様の両方が掲載されており、新旧比較表も併せて公開されている。

新仕様における主な改定ポイントは以下の通りである。

  • 現地調査やデータ入力に時間と労力がかかり、データ整備や更新が進みにくかった点を踏まえ、幅員・縦断勾配・段差といった主要なバリア情報のみを確認対象とするように改定
  • 幅員、縦断勾配、段差の閾値について、電動車椅子や自動配送ロボットなどにも利用できる仕様に改定
  • ランク区分を設定することで、将来的にモビリティの走行軌跡などを活用したデータ整備・更新が可能になるように改定

データ整備主体向けに3次元地図整備システムを提供

ほこナビDPでは、地方公共団体などのデータ整備主体を対象に、歩行空間ネットワークデータやバリアフリー施設データなどを整備、更新するためのシステム「3次元地図整備システム」も提供している。

同システムでは、3次元点群データを取り込んで統合し、オープンデータとして管理できる。様々な手法で取得した点群データに加え、取得日時・取得機器・位置精度などのメタデータも登録でき、人や動体などに由来するノイズの除去機能も備えている。

複数の点群データをビューア上で表示し、位置のずれを補正して統合する機能や、公開可能データの管理、他システムとの連携などの機能も利用できる。

現在、マニュアルやツール、ウェブシステムを試行的に公開しており、利用申請も受付中である。

3次元地図整備システム 全体イメージ
<出典>https://www.hokonavi.go.jp/wp-content/uploads/2025/05/01_3d_map_development_system_overview.pdf

オープンデータ公開のメリット

オープンデータとして公開されたバリア情報やバリアフリー施設情報は、車椅子・ベビーカー利用者や高齢者向けのナビゲーションサービスに活用できるほか、今後普及が見込まれる自動配送ロボットや電動車椅子の移動支援にも役立つ。

また、民間企業が出店予定地周辺の環境や地域特性を把握する際にも、バリア情報を考慮した検討の参考として活用できる。

ほこナビDPには現在28エリアの歩行空間ネットワークデータが掲載されているが、今後さらに多くのエリアのオープンデータ公開が期待される。

 

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<参考><参考>国土交通省ウェブサイト、歩行空間ナビ・データプラットフォーム「ほこナビDP」ウェブサイト

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