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平面幾何|放物線【パラボラアンテナの仕組み】

物を放り投げたときに描く曲線が放物線

身近なところで見られる曲線の一つに放物線があります。例えば、地上でボールを投げたときに描く軌道は放物線になります。噴水や花火にも放物線が見られます。これは、地上では物体に対して鉛直方向に重力が働いているためです。

初速度vで、地面に対して角度θでボールを上に投げた場合を考えてみます。

地面に平行な方向をx軸、鉛直方向をy軸、ボールを投げた地点を原点Oとします。時刻tにおけるボールの位置をP(x, y)とすると、xとyはそれぞれtを使った式で表せます。

このとき、tを消去するとxとyの関係式は

y=ax²+bx(aとbは定数)

となります。つまり、ボールの軌道である放物線の正体は2次関数であることがわかります。

この世に放物線は1つだけ!?

放物線には様々な性質が隠されています。これからそれを探っていきます。まず、放物線は1つしかないという性質。

たとえば、2次関数のグラフの形は放物線です。2次関数の係数を変えてグラフを描くと、一見違う形に見えます。

ところが、これらはすべて同じ形であることが確かめられます。ここでいう同じ形とは、縦横の長さの比が等しく、大きさだけが異なる図形同士(=相似)のことです。拡大縮小すれば、ぴったり重なる形のことを指します。つまり、どんな放物線も拡大縮小すれば、最終的にはすべてy=x²に重なるのです。

2次曲線としての放物線の定義

平面上で「ある1本の直線(準線)」と「その直線上にない1つの点(焦点)」からの距離が等しい点の集まり。これが放物線の定義です。

この定義をもとに計算すれば(ここでは省略します)、放物線が2次関数で表されることが導かれます。このように2次関数で表される曲線を、一般に「2次曲線」と呼びます。放物線のほかにも、楕円や双曲線が2次曲線に含まれます。

2次曲線y²=4pxの準線はx=-p、焦点がF(p,0)です。上記の定義にある「準線と焦点からの距離が等しい」とは、次の図のHP=PFのことです。放物線上のPがどこにあっても、この関係が成り立つことを指します。

これをアニメーションにしたのが次です。

放物線の性質|入射角=反射角

放物線には、もう一つ興味深い性質があります。

放物線の軸に平行に入ってきた光線(電波)が、放物線上の接線で反射すると、反射した光線(電波)は必ず焦点に同時に届くという性質です。さらに、放物線の軸および接点と焦点を結ぶ直線がそれぞれ接線となす角度が等しくなります。これは、曲線(曲面)における反射の法則(入射角=反射角)を表しています。

放物線を回転させてできる回転放物面は、身の回りのさまざまなところで応用されています。

懐中電灯

懐中電灯の反射板は放物面です。電灯が焦点の位置にあることで、反射板で反射した光は散乱せずに投射できます。

パラボラアンテナのパラボラ(parabola)とは放物線の意味です。パラボラアンテナは回転放物面です。放物線の軸に平行に入射した電波が回転放物面で反射すると焦点の位置に集まるので、ここに受信機を置くことで電波を効率よく受信できます。

ソーラークッカー

ソーラークッカーでは、太陽光線を回転放物面で反射させて焦点の位置にヤカンをおけば水を湧かすことができます。

遠隔会話装置

2つの回転放物面の軸を合わせて反対向きに置けば、遠隔会話ができます。小さな声で話しても、遠く離れたところでハッキリ聞き取れることに驚かされます。科学博物館に設置されているので、ぜひ体験してみてください。

「入射角=反射角」を計算して確かめてみる

2次関数である2次曲線では、本当に「入射角=反射角」が成り立つのか手計算で確かめてみます。放物線をp=2としてx²=4×2×y=8yとします。接点(2, 0.5)における接線で角度を計算するには、まず微分から傾きを求めます。

y=1/8x²を微分してy'=1/4x²
x=2のときy'=1/4×2=1/2

傾き=tanθからθ=arctan傾きにより角度θを求めます。Pythonであればdegrees(atan(1/2)により26.565°が得られます。すると、接線と軸(青線)のなす角は

90°-26.565°=63.434°

です。次に接点(2, 0.5)と焦点(0,2)を通る直線の傾きは、(0.5-2)/(2-0)=-3/4です。degrees(atan(-3/4)により36.869°が得られます。すると、この直線と接線となす角は

36.869°+26.565°=63.434°

となり、2角が等しいことが確かめられます。

このことをもっと多くの点で確かめるために、次のアニメーションを作りました。接点が変化しても2角が等しいことが一目瞭然です。

アニメーションの作成手順

  1. GeoGebraでアニメーションを作る
    パラメーターをスライダーにアサインして、スライダー値を自動で変化させることでアニメーションになります。
  2. GeoGebraのアニメーションをPCの画面キャプチャでmov保存
  3. UNIXコマンドFFmpegでmovをアニメーションgifに変換

こんなところにも放物線が

水を入れた洗濯槽を回転させると水面がへこむのを見たことがあると思います。それが回転放物面です。次のように計算することができます。最後に2次関数y=ax²が見事に現れてきます。

最初のボールと最後の洗濯槽の水、どちらも重力の影響で描く形が放物線になるということです。もっと探してみれば、ほかにも放物線が見つかりそうです。

 

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