「新しい地方経済・生活環境創生本部」が設置
デジタル技術の活用により地域の個性を活かしながら課題解決や魅力向上を実現し、地方活性化を促す取り組み「デジタル田園都市国家構想」。
国が掲げる重要施策の1つであるこの構想は、2022年12月、中長期的な施策の方向やKPI(重要業績評価指標)を示した「デジタル田園都市国家構想総合戦略」が閣議決定され、これに基づいて地方創生・活性化に取り組んできた。
同構想の具体化を図るとともに、デジタル実装を通じた地方活性化推進のため「デジタル田園都市国家構想実現会議」が開催されてきたが、2024年11月の「新しい地方経済・生活環境創生本部(新地方創生本部)」新設に伴い、旧「デジタル田園都市国家構想実現会議事務局」の所管業務は新事務局に引き継がれることになった。
これにより交付金についても、従来の「デジタル田園都市国家構想交付金」から移行される形で新たな交付金制度「新しい地方経済・生活環境創生交付金(新地方創生交付金)」が設けられる。 ※令和6年度補正予算(案)の概要はこちら
今回はこの新交付金制度について解説する。
「デジタル田園都市国家構想」公式サイト
(出典:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/index.html)
これまでの「デジタル田園都市国家構想交付金」
概要
デジタル田園都市国家構想では、地方公共団体の意欲的な取り組みを支援するための「デジタル田園都市国家構想交付金」が令和4年度補正予算において創設され、以下の4種類の支援を行ってきた。
デジタル実装タイプ
地方行政や公的サービスの高度化・効率化を進めるためのデジタル実装を支援する。
例)
- 地域アプリの導入
- 遠隔医療の推進
- 「書かない窓口」の実現
地方創生拠点整備タイプ
地方創生に資する拠点施設の整備を支援する。
例)
- 道の駅に隣接した観光拠点
- 子育て支援施設
- スタートアップ支援拠点
地方創生推進タイプ
地方創生に資する取り組みを支援する。
例)
- 東京圏からのUIJターン促進
- 地方の担い手不足対策
- 所管省庁が異なる2種類以上の施設の一体的整備(例:道・汚水処理施設・港)
- 観光や農林水産業の振興
地域産業構造転換インフラ整備推進タイプ
産業構造転換の加速化に資する大規模な生産拠点(例:半導体生産拠点)の整備の際に必要となる関連インフラの整備を機動的・追加的に支援する。(令和5年度補正予算において創設)
成果
2024年11月29日に事務局が発表した「第1回新しい地方経済・生活環境創生会議 これまでの地方創生の成果と課題」によると、デジタル実装に取り組む地方公共団体は1,757団体で、これは全1788団体の98.3%を占めるという。(2024年3月現在)
デジタル人材育成については、2022年度は約33万人、2023年度は約51万人を育成し、2024年度は年度目標約48万人に対して上半期のみで約44万人(目標の約92%)を育成した。2026年度までに約230万人の育成を目標としている。
「新しい地方経済・生活環境創生交付金」の概要
地域DXをリードする自治体と民間企業によって設立された「日本DX地域創生応援団」(旧「デジタル田園都市国家構想応援団」)の発表によると、今回設置された新地方創生本部では、地方のニーズに応じた政策を推進し、地域活性化を図ることを目的としているという。
交付金制度についても、地域の特性やニーズに応じたプロジェクトに活用できるように使途の自由度を高めた新型交付金の創設が進められている。
例えば過疎地では人口減少対策や移住促進の施策が必要とされている一方、観光地では観光資源の活用やインフラ整備が求められている。
こういった異なるニーズに対応できるよう、使途の自由度を高く設定することで、地方公共団体の創意工夫を促し、地域振興やインフラ整備、観光振興などさまざまな使途に使えるようにする。
「新しい地方経済・生活環境創生交付金」では、以下の4種類が設置される予定である。
第2世代交付金
地方公共団体が自由度の高い事業を行えるようにするための交付金。地方公共団体の自主性・創意工夫に基づく地域独自の取り組みを支援する。
例)
- 最先端技術教育の拠点整備
- 農産物直売所・多世代交流施設の一体的な整備
デジタル実装型
デジタル技術を活用して地域の課題を解決し、魅力を高める取り組みを支援する。
従来の取り組みに加えて、新たなデジタル技術(例:NFTやDAO、AI、マイナンバーカード、データ連携基盤)を使った社会課題解決への取り組みを支援する。
地域防災緊急整備型
避難所の生活環境の抜本的な改善(例:トイレ、キッチン、ベッド、風呂の提供)や、災害にも対応できる魅力的な地域づくりを目指す地方公共団体の先進的な取り組みを緊急的に支援する。
地域産業構造転換インフラ整備推進型
これまでと同様に、国家プロジェクトの産業拠点整備の際に必要となる関連インフラの整備に対して支援を行う。
期待される成果
今回の交付金制度の変更は、地方公共団体が自主的に地域独自の取り組みを行うことを支援するもので、これにより、地方で安心して暮らせる生活環境と、新たな付加価値を生み出す地方経済が実現されることが期待される。
特に注目すべきは、新しい「デジタル実装型」の交付金が、ブロックチェーンやAIなどの先進的なデジタル技術の活用を進めている点である。これにより、地方公共団体は新たなサービスを提供でき、地域の課題解決や魅力向上に繋がる可能性がある。
例えば、山形県西川町や山口県美祢市ではデジタルNFT発行により誘客、地域交流、収益増を実現した成功事例が生まれている。今後こうした事例がさらに広がることが期待される。
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<参考>内閣官房ウェブサイト、デジタル庁ウェブサイト、内閣官房・地方創生総合サイト、日本DX地域創生応援団ウェブサイト