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ベース・レジストリとは? デジタル庁が進めるデータ基盤の最新動向・メリット・課題を解説

インフォマティクスでは、庁内の共通データ基盤の整備、統合型/公開型GISの構築など、自治体業務DXを推進するソリューションを提供しています。
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ベース・レジストリとは

ベース・レジストリとは、公的機関で登録・公開される基本データを一元管理し、国民や企業が必要に応じて参照できるようにした社会インフラのことである。

正確性・最新性が確保され、社会活動や行政手続きのあらゆる場面で利用できる「社会の基盤データベース」と位置づけられている。

従来、人や土地、法人、住所、免許などの情報は省庁や自治体ごとにバラバラに管理されていた。これらを統合したベース・レジストリを構築することで、データ標準化・API連携が可能となり、行政DXやスマートシティ実現の基盤になると期待されている。

ベース・レジストリのメリット

日本では、個人は戸籍や住民基本台帳、法人は商業登記簿、不動産は不動産登記簿のように別々の台帳で管理されている。

これらのデータを集約し・連携させたベース・レジストリとして管理することで、以下のようなメリットが考えられる。

行政手続きの効率化

  • 個人:行政手続きで住所・氏名を毎回記入する必要がなくなる
  • 法人:所在地や名称を一度登録すれば複数の手続きに共通利用可能

行政コスト削減

  • エラー回避や確認作業の簡素化
  • 人的リソースや事務コストの削減

社会全体のメリット

  • 給付金支給など緊急時の迅速な対応
  • オープンデータを活用した新ビジネス創出
  • AIやデータ利活用による産業競争力の向上

コロナ禍での特別定額給付金の手続きでは、オンライン申請と郵送申請の併用やデータ結合の実務で負荷が生じ、給付の遅延等が指摘された。ベース・レジストリの整備はこういったトラブル軽減にもつながる。

ベース・レジストリの対象データ

デジタル庁は以下のデータ群を対象に整備・活用を進めている。これらを統合的に扱うことで、自治体DXやガバメントクラウドでの活用が期待される。

  • 戸籍
  • 住民基本台帳
  • 商業登記簿
  • 不動産登記簿
  • 道路台帳・農道台帳・林道台帳
  • 都市計画図
  • 事業所コード
  • 地方公共団体コード など

レジストリカタログと公開データ

デジタル庁は「レジストリカタログ」として、ベース・レジストリを基盤にしたオープンデータを公開している。

レジストリカタログは2022年10月にリニューアルサイトがプレオープン、2023年1月に正式オープンした。

主な公開データ例

  • 法人番号
  • 法律・法令
  • 事業者向け支援制度
  • アドレス(住所)
  • 公共施設情報
  • 企業の決算情報(有価証券報告書ベース)
  • 日本語文字情報基盤

レジストリカタログ
出典:デジタル庁(https://catalog.registries.digital.go.jp/rc/dataset/)

アドレス・ベース・レジストリとは

アドレス・ベース・レジストリとは、住所・所在地・地番など「アドレスのマスターデータとその運用システム」を統合的に管理する仕組みのことをいう。

表記ゆれの問題

住所には「住居表示」と「地番」という異なる仕組みがあり、これが住所をキーとしたデータ連携の難しさの主要因となっている。

表記ゆれ 1:文字表記の違い

ひらがな、カタカナ、漢字(新旧)の違いや送り仮名の有無により表記のゆれが発生する。

例)
市谷、市ヶ谷、市ケ谷
一宮、一ノ宮、一の宮
龍ケ崎、竜ケ崎

表記ゆれ 2:住所を表すルールの違い

「住居表示」と「地番」とで表記方法が異なる。

  • 住居表示
    建物に紐付く住所。地域によって表記の仕方が様々で、特殊なケースもある(市区町村が街区符号と住居番号を付与して管理)
    例)123番456号(123番が街区符号、456号が住居番号)
  • 地番
    土地に紐付く住所。土地一筆ごとに付与された番号で、主に不動産取引の際に使われる(法務省が管理)
    例)123番地456(456が地番)

住所・所在地の構造
出典:デジタル庁(https://www.digital.go.jp/)

町字マスターデータセット

デジタル庁は「町字マスターデータセット」を整備し、標準化・オープンデータ化も進めている。

2021年度、デジタル庁は行政が保有する既存の住所・所在地データを使って初期マスターデータを整備。さらに、初期マスターデータの運用管理に必要な機能も整備した。

初期マスターデータは同庁が整備した試験公開版データであり、レジストリカタログのサイトに自治体ごとにCSVデータを掲載し、オープンデータとして一般公開している。

現段階では試験公開版という位置付けだが、データに対する意見を集めながらシステム改善を行っている。

出典:デジタル庁(https://www.digital.go.jp/)

出典:デジタル庁(https://www.digital.go.jp/)

レジストリカタログで公開されている町字マスターデータセット
出典:デジタル庁(https://catalog.registries.digital.go.jp/rc/dataset/)

ベース・レジストリ整備の課題

現状、以下のような課題があるが、これらを克服することで行政業務の効率化だけでなく、AI開発やスマートシティ推進の基盤になると期待されている。

  • データ標準化:自治体や省庁間で統一ルールを設ける必要
  • データ品質向上:誤記や表記ゆれの修正
  • ルール整備:セキュリティや個人情報保護の確立
  • 運用コスト:ガバメントクラウド移行に伴う調整

今後のロードマップ

政府は「包括的データ戦略」(2021年6月閣議決定)に基づき、段階的な整備を進めていく予定である。

  • 2025年までに基盤となる主要データを整備
  • 2030年に向けて自治体・民間とのデータ連携を強化
  • スマートシティやガバメントクラウドでの本格活用を目指す

■URL

  • データ戦略タスクフォース 第一次とりまとめ
    https://www.soumu.go.jp/main_content/000725147.pdf
  • ベース・レジストリの指定
    https://www.digital.go.jp/policies/base_registry/
  • アドレス・ベース・レジストリ データ解説書
    https://x.gd/GDXc5
  • ベース・レジストリと制度的課題について|住所・所在地に係る番号制度(アドレス・ベース・レジストリ)について
    https://x.gd/EtVJn

<参考>デジタル庁ウェブサイト、内閣府ウェブサイト、総務省ウェブサイト、日本総研ウェブサイト

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