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マニアックな地図グッズの世界|地図柄雑貨いろいろ

地図柄バッグへの憧れ

バブル期、多くの人がグッチやプラダ、ヴィトンといったブランドもののバッグを持って街を闊歩していた時代に、個人的にひときわおしゃれに見えたのが世界地図をモチーフにした旅行鞄だった。

聞けばハンティングワールドというブランドで、旅行鞄だけでなくセカンドバッグから財布まであるという。憧れはあったものの、自分にはあまりにも高価で手が届かなかった。

最近ではプリマクラッセというイタリアのブランドが地図柄で人気を集めている。地図がデザインのモチーフとして利用される例はファッションに限らず、ラッピングや文具など案外幅広い。

元来、地図は機能美を追求してきたプロダクトといえる。現実世界を記号化するにあたり、最もわかりやすく効率的なデザインが探求され、地域の特性や文化に最適化する形で図式化されてきた。

もちろん多くは結果として美しいデザインになっているが、そこはあくまでも機能美の延長と考えている。

前述のファッションに利用されるような地図柄のデザイン性は、こうした地図本来のものとは目的も趣も異なる。基本的にその地図の内容を読み取るわけではないし、精度を求めるものでもない。

あくまでもモチーフが「地図」であることに意味がある。

プリマクラッセの地図柄バッグ
(Alviero Martiniウェブサイトより)

注目を集めた地図扇子

こうした地図のデザイン素材としての利用は、主としてファッション業界やステーショナリー業界によるものがほとんどだった。

しかし、近年は地図業界自ら地図のデザイン性を生かしたさまざまなグッズを開発して世に送り出すようになった。いわば地図のプロが地図の概念を再構築しているともいえる。

なかでも特に話題になったのが、日本地図センターが考え出した「地図扇子」だ。

廃図になった地形図をそのまま廃棄するのではなく、デザインとして生かして再利用しようという試みで、扇子の図柄として利用したものだ。

2017年に第一弾が発売されると、あっという間に売り切れる人気商品となった。2018年にも新作が販売され、夏の地図グッズ定番商品になりつつある。

日本地図センターの地図扇子
(筆者所有の私物を筆者が撮影:図葉は「正丸峠」)

民間の地図会社で最も早くから地図のデザイン性に注目していたのが、東京カートグラフィックだ。

同社は2008年に正距方位図法の世界地図をプリントしたクリアファイルの企画、販売を始めている。今でこそ地図を使ったクリアファイルはノベルティグッズでお馴染みだが、そのはしりとなったのが同社の商品だった。

その後同社はノートや下敷き、紙袋、風呂敷などさまざまな地図をデザインした商品を送り出している。なかでも特筆すべきは、地質図の模様をテキスタイルデザインに生かした「Geological Textile」シリーズだろう。

地質図という、いわば地球が作り出した模様をトートバッグやハンカチの柄にするアイデアは評判になり、2015年にリオ・デ・ジャネイロで開催された国際地図学会議の地図展で入賞の栄誉も与えられた。

地図グッズのはしりとなった東京カートグラフィックの商品。
とりわけ地質図をモチーフにした「Geological Textile」シリーズは評価が高かった。

デザイン素材としての地図の可能性

地図調製の会社ながら、駿河台に地図の店舗も構える内外地図。

同社もまた、地図好きのための地図雑貨ブランド「igania」(イガニア)を立ち上げて、さまざまな地図デザイン商品を開発している。

イガニアはどちらかといえばマニアック指向で、「一等三角点標石ふせん」や日本3大河川の流域をデザインしたふせん、罫線が送電線などの地図記号になっているメモ帳など、面白さを全面に出しているのが特長。

地図記号をキャラクターとしてデザインするなど、遊び心満載なグッズが楽しい。

内外地図の「igania」は遊び心満載の地図雑貨シリーズ

地図業界の巨人ともいうべきゼンリンもまた、地図ステーショナリーを開発している。

「mati mati」と名付けられた同社のステーショナリーは、「街と私をつなぐ 街々ストーリー」というコンセプトで、女性を意識した洗練されたデザインが特長となっている。

クリアファイルやマスキングテープ、ふせんなど、実用性とデザイン性を兼ね備えた商品構成で、後発ながらも地図グッズ市場で抜群の存在感を発揮している。

ゼンリンの「mati mati」シリーズ。色使いもおしゃれだ。

ここで紹介した以外にも、地図グッズを開発している地図会社はいくつかある。最近は地図記号などをキャラクター化したラインスタンプなども複数公開されており、「地図」が本来の目的とは異なるデザイン素材としての役割を持ちつつあることを感じさせる。

いうまでもないが、紹介したような利用法は地図本来の本道ではないし、地図自体のデザイン美はあくまでも機能美が本質である。

地図は使ってナンボであり、見やすく使いやすいように図式やインターフェースを設計するのが地図デザインの王道だろう。

もちろんその延長線上で、いつまでも見ていたくなるような美しい地図をつくり上げるのもまた、カートグラファーの腕の見せどころなのである。

スイスの地形図サイト。山岳部の美しい表現はいつまでも見ていたくなる。

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