GISソフトウェア「SIS 9.1」の新機能を紹介するシリーズのPart11。今回は、カーナビでおなじみの「ルート検索」機能についてご紹介します。
ルート検索
ルート検索はSISに以前からある解析機能の一つで、2地点間の最短経路とその距離を算出する機能です。
ルート検索では「コスト」という考え方を使って解析します。コストに「距離」を設定すれば最短距離を、「時間」を設定すれば最短時間のルートを導き出すことができ、最適な移動ルートの提案や検証に活用できます。
SISのルート検索
SISのルート検索は、与えられた条件(距離・時間など)から最短ルートを導き出す「ダイクストラ法」をベースにしています(図1)。

図1:経路分析で一般的なアルゴリズム「ダイクストラ法」の模式図と処理手順
- 初期化:スタートSの距離を0、他を∞とする
- 確定:未確定ノードの中から「最も距離が短いノード」を確定する(最初はSが確定)
- 更新:確定したノードの隣接ノードの距離を更新する
S確定時:A=1、B=4
A確定時:Bは4→3に更新(S→A→Bの方が短いため)
B確定時:Gは∞→4に更新(S→A→B→Gの方が短いため) - 終了:全ノード確定で終了。Gへの最短距離は4(経路:S→A→B→G)
SIS 9.1ではオープンソースの経路探索エンジン「Valhalla」が追加され、OpenStreetMapのデータを使用した高速なルート検索が可能です。
SIS 9.1のルート検索機能の変更点
SIS 9.1の「ルート検索」ダイアログに「ルートの制限」と「出力設定」が追加されました。
「ルートの制限」では、ルート検索で使用するネットワークデータに「フィルタ」を指定できます。たとえば「不通過領域」では、通過させたくないエリアをライブラリの空間フィルタから指定できます(図2-1)。

図2-1:ルートの制限の設定欄
また、「出力設定」では、ルート検索結果の保存先を指定できます(図2-2)。

図2-2:検索結果を出力するオーバーレイの設定欄
これらの機能が追加されたことで、事前にフィルタを設定したり、検索結果の保存先を用意したりする手間が不要になりました。
また、ルート検索で配列を使ったフォーミュラを指定できるようになりました。
上り下りで車両が出せる速度が異なる道路に、上りの速度「Forwards#」と下りの速度「Backwards#」を属性として設定し以下のフォーミュラを使うことで、上下方向の速度を考慮した最短時間ルート検索ができます(図3)。
[_length#/Forwards#,_length#/Backwards#]

図3:配列フォーミュラによる上り・下りの速度が異なるルート検索
複数ルートの一括検索
SIS 9.1では、「マトリクス検索」が追加されました。
複数の始点・終点を指定して、すべての組み合わせのルートを一括で検索できます。また、始点や終点にフィルタを指定して、条件に合うルートを絞り込むこともできます。これにより、1件ずつ手動で検索する必要がなくなるため、作業効率が大幅に向上します。
なお、マトリクス検索では多数のルートが同時に作成されます。個々のルートを識別するため、始点や終点のオーバーレイのスキーマカラムの値を、ルートのユーザ属性として割り当てることができます(図4-1と図4-2)。

図4-1(上):始点と終点の設定欄
図4-2(下):マトリクス検索後にユーザ属性として付与された始点・終点情報
また、マトリクス検索には、ルート検索にはない以下の設定項目が用意されています(図4-3)。

図4-3:マトリクス検索独自の設定欄
- ルートジオメトリ
検索後に作成されるアイテムの形状を、「ジオメトリ(道路の形状)」または「直線」から選択できます。 - 最大検索半径
始点・終点が道路などのネットワークデータ上にない場合に、最寄りのネットワークデータまでの接続を許容する最大距離を設定できます。 - 検索に使用する最大値
始点と終点の間で検索する範囲(距離や時間など)の上限を設定できます。
分析例|高輪ゲートウェイ駅周辺の徒歩通勤圏分析
徒歩圏を1,000mと想定し、高輪ゲートウェイ駅周辺の徒歩通勤圏を分析します。
まず、駅周辺に100m四方の正方形メッシュを作成し、各メッシュの中心点を居住地の代表点(終点)とします。
次に、駅から各代表点までのルートをマトリクス検索で一括して求め、算出された距離に応じてメッシュを色分けします(図5)。

図5:駅から1,000m圏内の100mメッシュを距離で色分け
従来のルート検索では、駅と各代表点の間のルートを繰り返し検索する必要がありますが、マトリクス検索を使えば1回の操作で分析できるため、とても効率的です。
複数地点からの等距離ルート・等時線の一括作成
「等距離ルート」や「等時線(同じ時間で到達できる範囲)」の作成が、複数地点から一括で実行できるようになりました。SISの標準機能だけで、フランチャイズの出店計画など、多店舗の商圏分析を効率的に行えます(図6)。

図6:同時に複数地点から等距離検索
おわりに
ルート検索機能は、道路や交通分野にとどまらず、防災計画やインフラ設計など多様な分野で活用されています。あらゆるネットワークの分析と課題解決に、SISの高度なルート検索機能をぜひお役立てください。
SIS Desktopシリーズについて、詳しくは製品サイトをご覧ください。
https://www.informatix.co.jp/sis/sis
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<地図データ出典> OpenStreetMap data © OpenStreetMap Contributors
※この記事は、GIS NEXT第96号に掲載された記事を編集したものです。