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電子国土基本図の概要
国土地理院は3月26日、3次元電子国土基本図の試作データを公開した。
3次元電子国土基本図とは、国土地理院が現在整備を進めている新たな基本図であり、2028年度末までに、現在2次元で提供されている電子国土基本図を3次元化し、順次提供を行う予定である。
既存の電子国土基本図は国の基盤的な地理空間情報であり、以下の3つで構成される。
- 地図情報
- オルソ画像
- 地名情報
国土地理院は、2007年に施行された地理空間情報活用推進基本法や改正測量法を踏まえ、従来の紙の地形図に代わるデジタルデータの基本図への移行を目的として、2009年度から2014年度にかけて電子国土基本図を整備した。
電子国土基本図のうち「地図情報」は、ベクトル形式の地図データであり、電子地図上の位置の基準となる基盤地図情報を骨格として含んでいる。また、ウェブ地図サービス「地理院地図」としても公開され、幅広いユーザーに活用されている。
さらに、「地図情報」はベクトルデータ「数値地図(国土基本情報)」、画像データ「電子地形図25000」として提供されているほか、紙媒体の2万5千分1地形図も、電子国土基本図(地図情報)をもとに作成されている。
これまで2次元データとして整備されてきた電子国土基本図は、今回の3次元化の取り組みにより高さ情報が付与されることで、防災をはじめとしたさまざまな分野への活用が見込まれている。
3次元電子国土基本図の表示例
(画像出典 https://www.gsi.go.jp/kibanjoho/mapinfo3D.html)
3次元化で付与する高さ情報
電子国土基本図の3次元化において、新たに3次元化される要素は以下の3つであり、既存の2次元の地図情報に高さ情報を付与して作成される。
- 建物
- 道路(道路中心線)
- 鉄道(軌道中心線)
高さ情報のもととなるデータとして、主に以下のデータが利用される。
- 航空レーザー測量で得られた3次元点群データや標高データ
- 航空機で撮影された空中写真
- 国道や大規模施設の更新時に入手する設計図
3次元電子国土基本図で整備される建物情報は、2次元の家形(家屋形状)データに高さ情報を付与して作成される。付与される高さ情報は以下の3つである。
- 数値標高モデル(DEM/DTM)から得られる土地の高さ
- 建物の最高値
- 建物の中央値(測量した点群を高さ順に並べた際に中央に位置する値)
都市のデジタルツインで利用される3D都市モデルは、地物の詳細度を「LOD(Level of Detail)」で表現する。一方、3次元電子国土基本図における建物情報は、2次元の家形データに単純に高さを付与したLOD1相当のデータであり、立体地図として可視化した場合、屋根の高さが均一な箱型モデルとなる。
建物に高さ情報を付与
(画像出典 https://www.gsi.go.jp/kibanjoho/mapinfo3D.html)
一方、道路と鉄道については、DEMをもとに道路中心線や鉄道の軌道中心線に最も近い地点の高さを付与する。また、橋梁や高架については、航空レーザー測量や写真測量をもとに高さを算出する。
このようにすることで、道路や鉄道が立体的に交差する箇所などにおける立体関係を表現できるようになる。
道路・鉄道の通常部には数値標高モデルをもとに高さ情報を付与
(画像出典 https://www.gsi.go.jp/kibanjoho/mapinfo3D.html)
試作データとファイル仕様書(案)を公開
国土地理院が3月26日に公開した3次元電子国土基本図の試作データは、広島県尾道市付近の約100㎢の範囲をカバーしており、「建物」「道路(道路中心線)」「鉄道(軌道中心線)」の3種類に分けて、それぞれGML形式およびシェープファイル(SHP)形式で提供されている。
なお、同データはあくまでサンプルデータであり、測量には使用できない。
また、国土地理院は試作データファイルの公開に合わせて、3次元電子国土基本図のファイル仕様書(案)も公開している。
2024年6月開催の第53回国土地理院報告会の発表によると、2024年度の整備予定地域は、地震や豪雨の被害を受けた能登半島をはじめ、全国各地が対象となっている。
国土地理院は、今後2028年度末までにデータを順次整備・公開していく予定である。
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<参考>国土地理院ウェブサイト